2018年8月30日木曜日

デミオの商品改良(2018年8月)

2018年8月30日にデミオの商品改良が発表されました。ガソリンエンジン車は日本独自仕様をやめて国外向けの標準的な仕様になっています。

1.エンジン

《ガソリンエンジン》
最大の目玉はガソリンエンジンの排気量が1.3Lから1.5Lになったことです。公開された諸元データは以下の通りです。
  • 最大出力110ps/6000回転
  • 最大トルク141Nm/4000回転
  • 圧縮比12
デミオ用1.5Lエンジンは圧縮比12の廉価版と圧縮比13(RON91)または14(RON95)の上位版とがあり、日本向けは廉価版のようです。しかしほぼ同じ条件の北米向けヤリスセダンでの数字に比べて出力トルクともに微増しており、欧州の環境規制適合のための改良版であることが見て取れます(主に煤対策)。カタログでもCX-3用の2Lエンジンと同様に「マルチホールインジェクター」との記述があります。

尚、アクセラ用の1.5Lエンジンは圧縮比13(RON91)または14(RON95)の上位版に相当し、4-2-1排気管がついた出力115psのものですので、同じ1.5Lエンジンでも若干の差があります。

15MBも引き続きカタログには載っており、こちらは従来通り1.5Lエンジンの上位版に専用チューニングを施したものですので、通常の1.5Lガソリンエンジン車とは仕様が異なります。数字を見ると今までと同じですし、燃費表示もJC08モードのままですので、もしかしたらアクセラ1.5Lと同様に改良前の型ではないかと推測します。どのみち数が出ませんので新たな型式認定を取りに行くまでもないという判断なのでしょうか。

車両重量はガソリンエンジンで10kg増となっている一方でディーゼルエンジンでは変更がないため、おそらく遮音材を盛ったわけではなくガソリンエンジン重量の差によるものでしょう。排気量が増えて10kgしか差が無いとなると、4-2-1排気管は採用されていないものと見て取れます。4-2-1排気管がついていればカタログにもその旨の記載があるはずで、現にCX-3ではそうなっていますが、デミオのカタログにはその記載がありません。4-2-1排気管がある方が圧縮比を高くできる分だけ燃費が良くなりそうに見えますが、もともとが下位グレードを含む1.3Lエンジンの代替ですし、重量とコストを抑えることを優先させたのでしょう。

G-ベクタリングコントロールが搭載されてサスペンションセッティングが変更されてからはガソリンエンジン車でも乗り心地が良くなり高速走行しやすくなりましたので、あとはエンジンのパワーに余裕があればと思っていたところですので、1.5Lエンジンの搭載はありがたいです。

値段もほぼ据え置きですので、下位の15Cは軽自動車と変わらない値段で良く走り安全な車を買えることになります。軽自動車よりも車内が狭いですが、なぜ軽自動車の車内が広いのか少し考えてみれば、何を犠牲にして車内を広くしているかがわかるでしょう。唯一気がかりなのはレンタカーで1.5Lのクラスになりはしないかということです。1.5Lのデミオに乗るつもりで1.5Lのクラスの代金を払うのは別に構いませんが、後席に人を乗せるつもりでCセグメント車を借りようとしてBセグメントのデミオが来たら困ります。

《ディーゼルエンジン》
一方、ディーゼルエンジンは1.5Lのままで数字も変化なし。アクセラ1.5Lと同様にフルモデルチェンジまではこのままのようです。環境規制への適合が求められる欧州向けではディーゼルエンジン車の販売を休止しており、CX-3と異なり1.8Lディーゼルエンジンが搭載されているわけでもありません。そもそもデミオのエンジンルームは1.5Lディーゼルエンジンがギリギリ入るサイズですので、少しでも大きかったら今のデミオのエンジンルームには入りません。

デミオでしたら270Nmまで必要ありませんし、MT車なら変速機のトルク容量に合わせて220Nmに抑えられていますので、1.8Lディーゼルエンジンを採用しなければならない動機はまだありません。デミオに1.8Lディーゼルエンジンを積む気がないならなおのこと、1.8Lエンジンの技術をバックポートした1.5Lエンジンをフルモデルチェンジ時に出してほしいものです。今の1.5Lエンジンでもあまりディーゼルエンジンらしくありませんが、さらに軽くなればよりいっそうガソリンエンジンの運転感覚に近づくのではないでしょうか。

2.変速機

ガソリンエンジン車のMTが6速になっています。最終減速比は15MBと同じです。ATは従来と同様で最終減速比も1.3Lのものと同じです。その代わりトルクが太くなったのに合わせてATのセッティングを変えているようです(あまりキックダウンせずに済むようになることで実燃費の向上に寄与している由)。

調べてみたら、欧州版は75PSと90PSのエンジンでは5MTとの組み合わせ、115PSのエンジンのみ6MTとの組み合わせでした。5MTの場合5速100km/hで2510回転ですので、150km/hで4000回転弱。UKならまだしもアウトバーンの真ん中車線で4000回転前後なのは疲れそうです。それなら6MTならどうかと思って15MBから数字を拾ってみると、6速100km/hで2410回転となり、高速域での回転数は少し下がるようです。日本仕様では税制に合わせてエンジン出力を絞る必要が無いため、110PSで6MTとなっているようです。

3.ホイール

15S Touring L Packageのみ16インチホイールを履いており、これは他の国外向けと同様です。ただ、16インチホイールを履くとタイヤサイズが185/60R16という特殊なサイズになり、ホイールのリム幅も5.5Jというこれまたマイナーなサイズになります(16インチホイールのリム幅は6.0から6.5くらいが標準です)。さらに、新車装着タイヤとしてトーヨーのProxes R39がもれなくついてきます。走りはともかくロードノイズが大きく燃費も良くありません。16インチの純正ホイールは重いので、高速域での安定性はともかく、出足は鈍くなります。

高速走行時に15インチホイールで操縦安定性に不満が無ければ15インチにした方がタイヤとホイールの選択肢が広くなるように思えます。16インチだとタイヤの選択肢がLe Mans VやBluEarth-Aくらいしかありませんが、15インチだと185/65R15という標準的なサイズのため、Regnoも選べます。また、15インチホイールの方が出足が軽いので街乗りには向いています。

ただし、15S Touring L Packageにすると16インチホイールしか選択肢が無いため、15インチホイールを選びたければ15S Touringにグレードを落とす必要があります。

4.燃費

今回からガソリンエンジン車はWLTCモードのみの表示となっています(除15MB)。同じモノサシで比較できないため、カタログ燃費がどう変化したかは不明ですが、エコカー減税グリーン税制ともに非適用という時点でカタログ燃費は悪化したことが見て取れます。あとは実燃費ですが、これは実際の走行データが無いとわかりません。今回は気筒休止は見送られたようですが、今回のエンジン改良の目的は欧州での環境規制への適合(煤対策)ですし、時間の制約もありますので、間に合わなかったなら仕方ありません。

ディーゼルエンジンに変更がないため、ディーゼルエンジン車の燃費表示はJC08モードのままで、数字に変更がありません。おそらく次のフルモデルチェンジまではこのままでしょうか。

5.装備

残念ながらCX-3と異なり電動パーキングブレーキがつかず、したがって全車速対応型アダプティブクルコンもありませんが、値段の差を考えればやむを得ないかと。

6.窓ガラス

従来は上位グレードの車体後部でダークリンテッドガラスが採用されていましたが、このたびさらに進めて上位グレードではフロントガラスでスーパーUVカットガラスが、フロントドアではスーパーUVカットガラスに加えてIRカットガラスが採用されています。IRカットは夏の車内温度上昇抑制にかなり効果がありますので、夏場の運転がいくぶん楽になりそうです。

7.シート

アテンザやCX-3と同様に高減衰ウレタン採用とあります(出典はここ)。CX-3と異なりサスペンションやタイヤには手を付けていないようですので、あまり積極的にアピールしていません。