2018年5月29日火曜日

欧州向けエンジンのEuro 6d TEMP対応

2018年5月23日付のMazda Motor Europeのプレスリリースにて、2018年7月以降生産の欧州向けマツダ車が全車Euro 6d TEMP対応になったとの発表がありました。2017年7月以降の新形式および2019年7月以降に登録されるすべての新車はEuro 6d TEMP対応が義務付けられています。

【要旨】
《対象》
  • 2017年7月生産分からの全車
  • ただし2019年にフルモデルチェンジが予定されているMazda 3は対象外
  • ガソリンエンジンは1.5L, 2L, 2.5L(欧州向けに販売されていない1.3Lと2.5Lターボは対象外)
  • ディーゼルエンジンは1.8Lと2.2L(1.5Lは今回の対象外)
《ガソリンエンジン》
  • 直噴エンジンながら煤フィルターをつけずに規制に適合
(新しい規制では煤の量の上限値が10分の1に減少。煤の出やすい直噴エンジンでは対策が必要。ディーゼルエンジンのDPFと同様に煤フィルターで対応する会社もあり)

《ディーゼルエンジン》
  • 2.2LエンジンはSCR装着で対応
  • 1.8LエンジンはNOx吸蔵還元触媒で対応(SCR不要)
  • 1.8Lエンジンは1.5Lエンジンの置き換え
【感想】
《ガソリンエンジン》
  • 2.5Lエンジンや2Lエンジンの改良内容はCX-5やアテンザの商品改良時の発表の通り。
  • 商品改良未発表の1.5Lエンジンでも同様の技術を用いた改良がなされるものと思われます。2.5Lエンジンや2Lエンジンでは改良によって、出力やトルクの数字が微増していますが、Mazda 2の1.5Lエンジンの諸元データの数字を見る限り、最大出力の増加が見受けられません。
  • 今回のプレスリリースは環境規制への適合についてのものですので、1.5Lエンジンで気筒休止が実装されるかどうかについては言及なし。
《ディーゼルエンジン》
  • 後処理装置なしでEURO 6に適合したのがマツダのディーゼルエンジンの売りでしたが、さすがにEURO 6d TEMPだと後処理装置なしでは難しいようです。
  • 日本向けのCX-3やアテンザの商品改良の発表では、NOx吸蔵還元触媒やSCRには言及されていませんでした。
  • 後処理装置はコスト引き上げ要因ですので、後処理装置が不要な市場向けには後処理装置なしで販売する可能性もあります。
  • 欧州向けMazda 2に1.8Lディーゼルエンジンが搭載されるのか、あるいは当面ディーゼルエンジン車が販売されないのかは不明(2018年5月29日現在Mazda 2のラインナップに1.5Lディーゼルエンジン無し)。
  • 欧州向けCX-3のディーゼルエンジンは既に1.8L。NOx吸蔵還元触媒付ということになります。
  • 欧州向けMazda 3ではまだ1.5Lディーゼルエンジンの販売あり。
  • 1.5Lエンジンに1.8Lエンジン開発時の技術をバックポートして最大トルクを220Nmに抑制すれば欧州向けを含めてMazda 2向けに復活できるのではないかと期待するものの、今回のプレスリリースでは言及がないため今後どうなるかは不明。
  • 欧州以外の市場向けに1.5Lディーゼルエンジンを搭載したMazda 2を引き続き販売するかどうかも不明。
《Mazda 3》
  • Euro 6d TEMPの規制によりフルモデルチェンジ車の販売は2019年7月までに開始しなければならないというタイムリミットが課されています。
  • おそらく最初は日本向けに販売され、その後段階的に他の市場向けにも販売されるでしょうから、逆算すると2019年初頭には日本向けのフルモデルチェンジ車が販売されることになるでしょう。
  • あるいは、日本国外の市場の中で、欧州向けは比較的早くフルモデルチェンジするのではないでしょうか。
  • Euro 6d TEMPは火花着火エンジンと圧縮着火エンジンとでNOx規制の上限値が異なるのですが(ディーゼルエンジンを想定した圧縮着火エンジンの方がNOx規制が緩い)、Skyactiv-Xはどちらに分類されるのでしょう。圧縮着火の方がNOxが出やすいことを考慮するという趣旨からすれば圧縮着火エンジンに分類されるのが妥当に見えますが。
【Euro 6d対応】
  • 2020年1月以降の新形式および2021年以降に登録される新車はEuro 6d対応が求められます。
  • Euro 6d TEMPではRDEでのNOx排出量の規制値が台上試験でのNOx排出量の2.1倍まで許容されますが、Euro 6dではRDEでのNOx排出量の規制値が台上試験での規制値の1.5倍まで縮小します。
  • ここまで厳しくなってくると、Euro 6dに対応するエンジンを作れれば、環境規制の厳しい米国向けにも販売できるのではないでしょうか。
  • これから市場に投入されるSkyactiv-XとSkyactive-D第2世代はEuro 6d対応が求められます。

2018年5月18日金曜日

CX-3の商品改良

2018年5月17日にCX-3の商品改良が発表されました。2018年3月にニューヨークモーターショーで発表されたのと同じものですが、詳細が発表されました。改良の要点はプレスリリースに記載の通りですが、特に以下が気になりました。
  • SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTUREの部分採用
  • 1.8Lディーゼルエンジン
  • 全車速追従機能付MRCCと電動パーキングブレーキ
  • JC08モード燃費表示の廃止
  • 2Lガソリンエンジンの改良
  • 価格
1.サスペンション

このタイミングでSKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTUREの部分採用とは意外ですが、アクセラと異なりCX-3は既にリアサスペンションはトーションビームですのでタイヤとサスペンションには手を入れられたようです。SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTUREは試作車が絶賛されていたようですが、今回はボディーはそのままですので、どの程度効果が出るのか楽しみです。

2.1.8Lディーゼルエンジン

改良型2.2Lエンジンと同様に急速多段燃焼を可能にする改良型ピエゾインジェクターが採用されたのは事前に出ていたスペックの数字からは意外でした。2.2Lエンジンの場合、性能が1割ほど向上している一方で、1.8Lエンジンは排気量が2割拡大しているにも関わらず性能向上は1割です。日経xTECHの記事によると、従来の1.5Lエンジンではトルク220Nm以上でEGRが使えなくなることで急速にNOxが増大していたとのことです。これでもWLTCまでは対応できていましたが、RDE (real driving emmissions)には対応できないことが1.8Lエンジン開発の動機とのこと。1.8Lエンジンでは270NmまでEGRを使えることでRDEに対応した由。

重量は1.5Lエンジンよりも30kg増えています。うち、静粛性向上のための重量増が10kgですので、1.8Lエンジンでの重量増は正味20kgです。1.5Lエンジンと2.2Lエンジンの重量差は80kgですので、2.2Lエンジンよりも60kg軽いことになります。1.5Lエンジンの置き換え用として、軽量化と燃費には相当注力したようです。

この1.8Lエンジンはアクセラにも採用されて1.5Lエンジンを置き換えるでしょうが、2.2Lエンジンを置き換えるには至らないでしょう。もともとアクセラは2.2Lでは大きすぎて1.5Lでは小さすぎますので、従来の1.5Lエンジンと改良後の2.2Lエンジンの中間くらいのスペックで150psで出れば2.2Lエンジンが不要になりそうですが(日本国外仕様のアクセラ用2.2Lディーゼルエンジンは150ps)、今回の1.8Lエンジンの性能ではそれは難しそうです。かといって、CX-5やアテンザ用のディーゼルエンジンは将来はFR用の縦置きになりそうですので、そうなるとそのままではFFのアクセラに積むことができません。どうなるのでしょう。

デミオの1.5Lディーゼルエンジンを置き換えられるかというと、ただでさえフロントが重いのにさらに20kg重くなると操安設計が大変です。デミオでは過給圧がそこまで高くないので(AT車で250Nm、MT車で220Nm)、むしろAT車でもMT車同様に最大トルクを220Nmに抑制することで1.5Lのまま環境規制に適合することを考えた方が良さそうです。1.8Lエンジンと同様の改良を1.5Lエンジンにも施すことでエンジンの軽量化や性能向上が見込めるかもしれません。20kgくらい軽量化されるとその分ノーズが軽くなって曲がりやすくなります。トルクが不足する分は回転数で補うことにして、ATのセッティングを変更して最大トルク220Nmでも支障しないように低めのギアで引っ張ればCX-3とは異なる軽快な走りが実現できるかもしれません。デミオディーゼルはコンパクトカーらしからぬ重厚な乗り味が魅力ですが、CX-3がある以上、キャラクターを分けた方がよいのではないでしょうか。

3.全車速追従機能付MRCCと電動パーキングブレーキ

これがあると渋滞のときに楽ですし、電動パーキングブレーキの採用でスペースに余裕ができますので、デミオにも採用されればそれに越したことはありませんが、価格差およびかけられるコストの差を考慮すると難しいかもしれません。全車速追従機能有のCX-3と全車速追従機能無のデミオを比較すると、多少高くても全車速追従機能有のCX-3が魅力的に見えます。特にCX-3の2Lガソリンエンジン車はデミオの1.5Lディーゼルエンジン車と同じ予算で買えますので。

4.JC08モード燃費表示の廃止

JC08モード燃費は実燃費が2割引きくらいですので別段当てにしているわけではありませんが、モノサシが変わってしまうと同じ条件で比較できなくなりますので、1.8Lディーゼルエンジンの燃費性能が1.5Lエンジンに比べてどう変化したかがわかりにくいです。もしかしたら敢えてわかりにくくしているのかもしれませんが。WLTCモード燃費自体は実際に運転したときの実燃費の数字に近いので、本来ならばこちらを基準に比較した方がよいと思います。

5.2Lガソリンエンジンの改良

CX-5用と同様の改良が加えられています。その結果、出力とトルクが微増しています。それでいて燃費の数字が少し悪化していますが、遮音材を増やして重量が10kg増えた影響でしょうか。2LエンジンはCX-3には余裕がありますので、気筒休止が採用されれば燃費が良くなるかと期待しましたが、今回は気筒休止の採用はならず。

ガソリンエンジンの改良はEURO6に適合するためのもので、特にkm当たりのPM排出量を10分の1にすることが求められています。同様の規制は1.5Lガソリンエンジンにも適用されますので、1.5Lエンジンにも同様の改良が施されるのではないでしょうか。

6.価格

ガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車ともに本体価格3万円ほどの上昇です。ディーゼルエンジンが1.8Lになったり、静粛性が向上したり全車速追従機能が付いたり、従来はメーカーセットオプションが標準装備されたりしていますので、価格差以上に改善しているように見えます。もっとも、CX-3はサイズを除けばCX-5と競合し、価格が近いにも関わらず車格相応の差がありますので、CX-3ならではの魅力をどこに持たせるかが鍵でしょう。

2018年5月15日火曜日

平成32年度燃費基準値とデミオガソリンエンジン車の燃費性能

エコカー減税の基準となる平成32年度燃費基準値の資料を参照しました。これによると、デミオのガソリンエンジン車は燃費基準値がJC08モード燃費で23.7km/L、燃費基準値+10%が25.8km/Lです。それに対してJC08モード燃費が24.8km/Lですので、+10%には達せず、最低限のエコカー減税になっています。

平成32年度燃費基準は余裕をもってクリアできていますので、もし23.7km/Lをクリアすることだけが目的なら、1.3Lエンジンでなく1.5Lエンジンでも燃費スペシャルなチューニングをすれば達成できなくもないのではないかと思えてきます。アクセラの1.5Lエンジン車のJC08燃費が20.4km/Lですので、アクセラより2割軽いデミオでしたら1.5Lエンジンでも24.9km/Lを狙えてもおかしくありません。あとは大排気量低負荷で使う場合の熱効率の悪さをどう補うかですが、気筒休止を1.5Lエンジンにも導入できれば低負荷時の排気量が0.75Lにまで減少しますので、燃料噴射を抑制しやすくなります。

CX-3の2Lガソリンエンジン車のJC08モード燃費は17.0km/Lですので、平成32年度燃費基準未達となり、エコカー減税の土俵に乗りません。だからこそWLTCモード燃費表示を全面に出さざるを得ないのでしょう。アクセラの1.5Lガソリンエンジン車は平成32年度燃費基準をギリギリでクリアしていますので、アクセラよりも50kg軽いCX-3に1.5Lガソリンエンジンを積めば平成32年度燃費基準をクリアできたことでしょう(+10%は微妙ですが)。おそらくエコカー減税の土俵から降りて走りやすさを重視したためかもしれません。そもそも排気量が2Lである時点で1.5Lエンジンよりもベースとなる自動車取得税が高いですし、エコカー減税を気にするくらいコストに厳しかったら高価なCX-3を購入することはないでしょう。もし2Lガソリンエンジンに気筒休止を導入できれば多少は燃費が良くなるでしょうが、17.0km/Lからの燃費向上だとエコカー減税は厳しそうです。

ハイブリッドでない自然吸気ガソリンエンジン車がエコカー減税適用ラインに乗るのはなかなか大変です。エコカー減税はトップランナー方式ですので年々ハードルが上がっていきますが、これ以上ハードルが上がったらもはや自然吸気ガソリンエンジンでは無理なのではないかと思えてきます。Skyactiv-Xならきちんと作り込めば燃費性能が向上しそうですが、Skyactiv-Gも併用されることになっており、Skyactiv-Gの改良が今後どうなるのか気になるところです。

2018年5月13日日曜日

もし日本仕様のデミオに1.5Lガソリンエンジンを搭載するとしたら

デミオの海外仕様の大半は1.5Lガソリンエンジンを積んでいますが、日本仕様は1.3Lガソリンエンジンです。日本仕様のガソリンエンジンが1.3Lであるのにはいくつかの理由が考えられます。

  1. 燃費
  2. コスト
  3. 競合車種
  4. 値付け
1.燃費

日本人は燃費に敏感で、さほど乗らなければ燃料コストに大きな差が出ないにも関わらずアピールポイントになります。ハイブリッド車は燃費が良い代わりに価格が高く、本来ならかなりの距離を乗らないと元が取れないにも関わらず、プリウスやアクアのようなハイブリッド車はとても売れています。

また、エコカー減税を獲得するためにも燃費性能が必要です。しかし、ディーゼルエンジン車が免税なのに対してガソリンエンジン車は厳しくて、現状の1.3Lエンジンの場合、FFのAT車でやっと平成32年度燃費基準達成でかろうじて最低限のエコカー減税が適用されているのを除けば、4WDで平成27年度燃費基準+10%、MTでは平成27年度燃費基準+5%ですので、既にエコカー減税から脱落しています。15MBは燃費度外視のスポーツグレードですのでそもそもエコカー減税の土俵に乗っていません。

しかもエコカー減税は縮小傾向にあって、このままだとガソリンエンジン車はすべてエコカー減税から脱落しかねません。1.3Lエンジン車がすべてエコカー減税から脱落してしまったら敢えて燃費のために1.3Lエンジンを載せる必然性はなくなります。あるいは、気筒休止で燃費を改善する積極策もありますが、パワーに余裕のない1.3Lエンジンで気筒休止を実装してもさほど効果を期待できませんので、もしやるとしたら1.5Lエンジンで気筒休止を実装する方が燃費競争で有利かもしれません。

さらに、従来のJC08モード燃費から、より実燃費に近い基準へと変化しており、特に高速走行時や高負荷時の燃費性能が重視されるようになっていますので、新しい基準に適合するエンジンが求められます。JC08モード燃費では1.5Lエンジンの方が不利でしょうが、WLTCモード燃費表示に切り替える際にもし1.5Lエンジンの方が実燃費で有利なら、数字が良くなる可能性があります。欧州でも燃費性能の競争がありますが、こちらは欧州複合モード燃費ですのでモノサシが異なりますし、1km当たりのCO2排出量というモノサシもあります(だからCO2排出量の少ないディーゼルエンジンが有利)。

一般に排気量が拡大すると燃費が悪化する傾向にありますが、1.8Lディーゼルエンジンを開発する過程で、排気量を増やしても燃費を悪化させない工夫がなされましたので、これを1.5Lエンジンにも適用すれば燃費を向上できるかもしれません。そうでなくてもCX-5向けに導入された2Lガソリンエンジンの改良と同様の改良はいずれ1.5Lエンジンにも導入されるでしょうが、CX-3の燃費の数字を見る限りでは、燃費へのインパクトはほぼ無いようです。

2.コスト

コストには2種類あります。開発コストと製造コストです。1.3Lエンジンと1.5Lエンジンとの比較では、製造コストにはさほど差が無いのではないかと推測します。開発コストはハードウェア開発だけでなく、ソフトウェア開発や型式認定取得のコストも含まれます。開発コストについては数の出るモデルの方が1台当たりの開発コストの配賦が小さくて済みます。1.3Lエンジンは日本とタイ向けのデミオ専用であるのに対し、1.5Lエンジンは欧州その他各国のデミオ用や、世界各国のアクセラ用に生産されています。ロードスター用の1.5Lエンジンのベースでもあります。

今後次世代エンジンを開発するにあたって、1.3Lエンジンと1.5Lエンジンの両方を開発する場合の開発コストと、1.5Lエンジンのみ開発する場合の開発コストとを比較したら、1.5Lエンジンのみ開発して日本仕様のデミオにも1.5Lエンジンを積んでしまった方が安くつく可能性もあります。タイ向けには現状の1.3Lエンジンをそのまま使い続けるという選択肢があります。

3.競合車種

競合車種との比較では、ヴィッツやフィットの自然吸気ガソリンエンジン車では1.3Lエンジンを積んでいますし、スイフトやノートは1.2Lエンジンです。日本の公道ではこれくらいの動力性能があれば走れてしまいます。さすがに高速道路で長距離を走るのには厳しいですが、それは他のBセグメント車でも同様ですし、高速道路で楽に走りたかったらトルクの太いディーゼルエンジン車という選択肢があり、ガソリンエンジンの排気量が少し増えたくらいではディーゼルエンジンの優位は揺らぎません。アクセラは1.5Lガソリンエンジンと1.5Lディーゼルエンジンの両方がありますが、全く競合していません。

尚、競合車種との比較においては、価格や動力性能だけでなく、燃費性能の競争もあることに注意が必要です。

4.値付け

値付けについては、他の商品とのバランスを考慮して異なる性能の商品には異なる値段をつける必要があり、1.5Lガソリンエンジン車につけられる値段は1.3Lガソリンエンジン車以上1.5Lディーゼルエンジン車未満ですが、価格差が最大で30万円の中で中間の価格をつけると「もう少し足せばもっと高性能なものを買える」という状況になり、あまり売れそうにありません。かといって1.3Lエンジン車とほぼ同じ値段で1.5Lエンジン車を売れば1.3Lエンジン車の中古価格が著しく下落します。

とはいえ、CX-3では競合車が1.5Lガソリンエンジンなのに対して2Lエンジンを搭載し、しかも1.5Lディーゼルエンジン車よりも30万円安くしましたので、1.5Lエンジン車の値段で2Lエンジン車を売っています。アクセラでは2Lガソリンエンジン車の代替で1.5Lディーゼルエンジン車を同じ値段で販売しているのに対して、CX-3では2Lガソリンエンジン車を安くしています。最近のマツダは値付けについては柔軟なのではないでしょうか。ただし高価なCX-3においてはデミオほど燃費性能に対するプレッシャーが無いことに注意が必要です。それにCX-3のガソリンエンジン車はさほど売れているわけではありません。

上記を踏まえながら今後デミオに搭載されるであるガソリンエンジンを推測すると以下が思いつきます。
  1. 改良型1.5Lエンジン(気筒休止で燃費性能にチャレンジ)
  2. 改良型1.3Lエンジン(細かい改良の積み重ねで燃費性能をブラッシュアップ?)
  3. 現行1.5Lエンジンのお下がり(90psに減格する等燃費重視のセッティングでどこまで燃費を追及できるか)
  4. 現行1.5Lエンジンのお下がり(本来の性能のままなら性能は向上するが燃費は確実に悪化)
  5. 現行1.3Lエンジンを使い続ける(性能向上は全くないがとりあえずコストはこれが一番安い)
1と2を比較すると1の方が費用対効果にすぐれているように見えます。コスト重視であれば3と4と5で、ともに開発コスト回収済みとすればあとは製造コストの差ですが、それもさほど無さそうです。手っ取り早く性能を向上させるなら2より3や4の方が割安ですが、4では燃費性能は期待できません。3なら1.3Lエンジンと同じ値段で売るのに抵抗がありません。ただし、3で燃費性能が向上するなら日本向けでもとっくにやっているはずです。燃費の測定方法が変わればまた違ってくるでしょうが。

3と4は新エンジンと旧エンジンの共存を想定したものですが、航空機では旧世代エンジンと新世代エンジンの併用があって、例えばエアバスではNew Engine Option (NEO)とCurrent Engine Option (CEO)の両方が販売されています。CEOの方がコストが安かったり納期が短かったり、従来機種と整備を共通化出来たりといった独自の利点があります。それらの利点が自動車でどの程度あてはまるのかはよくわかりませんが。

タイ市場には1.3L縛りがありますが、だからといってタイ市場だけのために1.3Lエンジンを改良するのは費用対効果が良くないので、エコカー優遇税制の適用を受けられる限り現行エンジンで引っ張る可能性があります。

個人的には1が最もありがたいですし、どのみち1は欧州の環境規制に適合するために必要だと思いますが、1.3Lエンジンも残さなければならないとなると、上位グレードで1、下位グレードで5と併用するのが現実的かもしれません。今の1.3Lエンジンだって日本の公道ではちゃんと走ります。しかもアクセラ1.5Lよりもパワーに余裕があります。数の出る1.5Lエンジンには開発コストをかけ、1.3Lエンジンには極力コストをかけないという考え方を取ると1と5になります。2は費用対効果が悪いですし、3と4は、走行性能はともかく、エンジン自体の燃費性能には限度があり、現在の欧州仕様よりも燃費性能が改善することはありません。

1のさらに上にはSkyactiv-Xのマイルドハイブリッドもありえますが、ディーゼルエンジンと並んで最上位グレードでしょうから、現行のガソリンエンジン車とは別物でしょう。

日本国外仕様のMazda 2

デミオのガソリンエンジンモデルは国によって1.3Lだったり1.5Lだったりしますので、少し調べてみました。

【1.3L】
  • 日本:競合するヴィッツやフィットが1.3Lエンジン搭載。日本の公道では速度域も加速度も低め。ディーゼルエンジン車販売あり。
  • タイ:タイのエコカー優遇税制は1.3L以下のガソリンエンジン車と1.5L以下のディーゼルエンジン車が対象。エンジン仕様は日本向けと同じ。ディーゼルエンジン車販売あり。
【1.5L】
  • 欧州:RON95。欧州ではエンジン出力によって税金や保険料が決まるため、75ps(圧縮比12)、90ps(圧縮比14)、115ps(圧縮比14)と複数種類の出力で販売。1.5L自然吸気90psで1.2Lターボとほぼ同等。欧州の道路は速度域が高めなのと、競合メーカーが低回転でトルクの太いダウンサイジングターボを採用しているため、一回り排気量の大きい自然吸気エンジンで対応。ディーゼルエンジン車販売あり(のはずでしたが、よく見たらディーゼルエンジン車のラインナップが消えていました)。
  • 米国:トヨタのヤリスセダンとして販売。RON91。106hp、14.2kgm(圧縮比12?)。ディーゼルエンジン車販売なし。ハッチバックのヤリスも1.5Lエンジンのみ。
  • オーストラリア:RON91。廉価版は圧縮比12、上位グレードは圧縮比13。ディーゼルエンジン車販売なし。
  • インドネシア:RON91。圧縮比13。ニッチな輸入車という位置づけのため廉価版なし。ディーゼルエンジン車販売なし。
【販売なし】
  • 中国:小型車のニーズが乏しい
  • インド:未進出
  • ブラジル:メキシコ工場からの輸出が頓挫
網羅的に調べたわけではありませんが、大きな市場で見る限り、1.3Lエンジンは日本とタイのみで圧縮比12のRON91仕様が供給されているようです。1.5Lエンジンはデミオ用だけでもRON91仕様とRON95仕様、廉価版は圧縮比12、上位版は圧縮比13(RON91)または圧縮比14(RON95)とあります。さらにアクセラ用にも圧縮比13のRON91仕様と圧縮比14のRON95仕様がある他、欧州向けでは出力が抑制されていたりして、これも何種類かあります。

ソフトウェアでいかようにでも調整できるのでしたらいっそのこと1.5Lエンジンに統一してしまって日本向けに圧縮比12の90ps仕様を出せばよいのではという気もしてきます。現に欧州向けの圧縮比12の75ps仕様なら1.3Lエンジンでも実装できそうに見えますが、敢えて1.5Lエンジンになっています。タイ向けでは税制上の理由で1.3Lエンジンを残さざるを得ませんが、改良型の開発は1.5Lエンジンのみにして、タイ向けの1.3Lエンジンは現行仕様のものをそのまま使い続けるという選択肢もあります。例えばパワーに余裕のない1.3Lエンジン向けに気筒休止を実装しても、開発コストに見合ったメリットをあまり期待できません。

CX-3のガソリンエンジンは2Lに統一されていますが、これはアクセラ用と異なり低回転でのトルクを太くした仕様です。日本市場向けでも競合するヴェゼルやジュークの廉価版が1.5Lエンジンである一方で、CX-3は2Lエンジンですので、必ずしも競合車種に合わせなければならないという考え方ではないようですし、値付けについてもCX-3向けでは1.5Lディーゼルエンジン車よりも安くする等、柔軟に対処しているように見えます。

2018年5月3日木曜日

タイトコーナーのコーナリング

今までヘアピンカーブのようなタイトコーナーのコーナリングが苦手でなかなかうまく曲がれなかったのですが、このたびヘアピンカーブの連続する山道を走った際に、やっときれいに曲がれるようになりました。感覚的には、コーナーの突き当りで止まるようなつもりで一気に減速し、停止直前にブレーキを残したまま素早くかつ大きくステアリングを切ってそのままUターン、向きが変わりだしたらアクセルを踏み込んで一気に加速といった感じです。これでi-DMがずっと青点灯します。ちなみにDレンジだと加速時にもたつきますので2速固定です。

要は四輪の書に書いてある通り、というか教科書通りのごく基本的なことですので、できる人にとっては何を今更という程度のものですが、今まではステアリングを切るスピードと量が足りなかったせいでうまく曲がることができていませんでした。デミオディーゼルはフロントヘビーでフロントの慣性力が大きめというイメージがあって、ミドルコーナーのときと同様に早めにステアリングを切ろうとしていたのですが、タイトコーナーでは目いっぱいステアリングを切っても曲がるまで減速すべきだったのです。よく考えてみれば交差点で左折やUターンをするときには微速時に目いっぱいステアリングを切って曲がりますので、同じように曲がるのでしたら同じような運転操作が求められます。

2018年5月1日火曜日

マニュアルモード時のパワーステアリング

山道を登る際にマニュアルモードで2速固定なり3速固定にすることがよくあるのですが、気のせいか、Dレンジのときよりもパワーステアリングが軽くなっているように感じます。山道ではたしかにステアリングを右に左に切りますので、パワーステアリングが軽くなるのは運転しやすいです。

てっきり単なる車速感応式かと思いきや、もしかして加速度センサーで上り坂を検知しているときにマニュアルモードになるとステアリングを切る機会が増えると予測してパワーステアリングを軽くしているのでしょうか。まっすぐな上り坂ならアクセルを踏み込むだけで済みますが、コーナーの手前でアクセルを抜いてコーナーの出口でアクセルを踏み込む際には、Dレンジだとギアが高すぎて思うように加速しない感があり、そうなるとマニュアルモードにしますので、上り坂でマニュアルモードになるならばコーナーが連続すると推測するのはありかもしれません。できることならDレンジでも運転しやすくなるようATの制御ソフトウェアをさらに作りこんでくれるとありがたいのですが。

油圧式パワステでしたらエンジン回転数が上がるにつれてアシストが強くなりますので、マニュアルモードにしてギアを下げてエンジン回転数を上げればパワステが軽くなりますが、電動パワステにはそのような性質はありません。もしあるとすれば意図的に油圧式パワステと同じ味付けをしている可能性があります。

しかし、そもそもステアリングが軽く感じられるのは気のせいという可能性もあります。アクセルの踏み込みに対して加速しやすくなることでアクセルが軽く感じられ、そのためにコーナー手前でしっかり減速しやすくなることで、単にコーナー手前で速度が低下しているだけということならば、単純な車速感応式パワーステアリングであっても軽くなります。結果的に運転しやすくなればそれでよいので、シンプルな機構であっても体感に影響するならば、別にそれでも構いません。