2019年7月21日日曜日

Mazda 3はマニュアルエアコンでもそこそこ凝っている

自動車の内装設計においてはボタンやダイヤル等の人間が直接触れる箇所の操作性や感触が入念に検討されていて、エアコンのボタンやダイヤルも同様にきちんと設計されているものですが、マニュアルエアコンは安物ということで旧世代のものを使い回したいい加減なものがはびこっています。

マニュアルエアコンは、暑いと感じればダイヤルを左に回す寒いと感じればダイヤルを右に回す、風量が欲しければダイヤルを右に回すという極めて直感的なUIなのに、ダイヤルの質感の低さがすべてを台無しにしています。ドライバーが運転中に触れる可能性のあるものは極力手探りで操作できることが望ましく、目視に頼ってはいけません。そういう意味ではボタンよりもダイヤルの方が有利です。タッチパネルは論外です。内気循環と外気循環の切り替えにしても、ボタンを探して押すよりもレバーをガコっと動かす方が操作が容易です。

そういう意味ではマニュアルエアコンも決して捨てたものではないのですが、とかく安かろう悪かろうがはびこっていて、安いんだからこれで我慢しろと言わんばかりです。たしかにエアコンは車の安全性や走りに必須かといえばそうではありませんが、しかしドライバーが運転中に操作する可能性のある機器のUIは安全性に直結します。

そんな中、Mazda 3のマニュアルエアコンはフルオートエアコン同様にダイヤルやボタンの操作性が考慮されています。ボタンが多い印象を受けますが、それでも温度調整と風量調整はダイヤル式になっています。ある意味最強の組み合わせかもしれません。こういう所で手を抜かないところにMazda 3の本気を感じます。

Mazda 3のフルオートエアコンだと運転席側と助手席側とで別々に温度設定できますが、中のコンプレッサーは一緒ですので結局風量で調整しているに過ぎません。それなら各自でルーバーを操作しても一緒です。人間の体感に根差したものは人間が直接操作するのが確実です。しかも、前方注視義務のあるドライバーと異なり、助手席の人には多少余裕がありますので、暑さ寒さの調整くらい自分でやれば済むことです。

2019年7月20日土曜日

遅ればせながらデミオ1.5Lガソリンエンジン車に試乗しました

1.3Lガソリンエンジン車ならレンタカーや代車で今まで何度も乗りましたが、1.5Lガソリンエンジン車はレンタカーでもまだ出回っていませんので、今まで乗る機会がありませんでした。Mazda 2を検討するにあたって1.5Lエンジンがどのような感じか知りたかったので試乗した次第です。

【走る】
《エンジン》
発進時の第一印象は今まで以上にどっしりした感じで、初期型ディーゼルエンジン車に初めて乗ったときの印象に似ています。本当にこれが国産コンパクトカーなのでしょうか。エンジン回転数が上がらずにしずしずと動きます。市街地でゆっくり走る分には低い回転数で走りますので快適ですが、加速度を上げてみようとアクセルを踏み込むと急激にエンジン回転数が上がります。もともとマツダの1.5Lガソリンエンジンは2000回転くらいでトルクが伸び悩んでから3000回転くらいで急激にトルクが伸びる特性があって、パワーが足りないとすぐに3000回転くらいまで回ります。アクセラ1.5Lのようにもとから非力な車ではこの回転域を多用しますので最初からそういうものと思えますが、デミオのAT車では低い回転数で粘ろうとするため、重苦しくなって耐えられなくなったら唐突に回転数が上がる印象を受けます。どうやらATの制御がディーゼルエンジンのものと共通らしいですが、トルクの太いディーゼルエンジンでは問題ないとしても、ガソリンエンジンは1.5Lであっても自然吸気エンジンですので排気量相応のトルクしかないことから、トルクの不足する箇所が出てくるようです。従来の1.3Lエンジンの場合、もとからパワーがありませんので最初からそこそこ高めの回転数でしたし、小さくて軽い1.3Lエンジンの方が軽快に回る印象があります(その代わりアクセルを踏み込んでも伸びしろがない)。日本の道路向けでしたらこちらの方が自然な加速感だったのかもしれません。

1.5Lエンジンは本来はデミオ向けで、日本やタイのような一部の国を除きデミオのエンジンは1.5Lです。一方、アクセラ向けのエンジンは2Lが標準で速度域の低い日本でのみ1.5Lエンジンが売れています。しかし、乗り比べてみると非力なアクセラの方が自然な運転感覚です。しかしそれは速度域の低い日本の道路だからそう感じるに過ぎず、デミオ向けの1.5Lエンジンは、速度域の高い道路では、3000回転くらいで一気に巡航速度まで加速して高速巡航時には2000回転くらいに落とす、追い越し加速時には3000回転で一気に加速するという使い方を想定しているのかもしれません。

《シャシー》
試乗コースは市街地のまっすぐな道なのですが、路面が荒れているため、荒れた路面での乗り心地を体感できます。乗り心地は1.3Lの頃からのデミオと同じです。同じ道をMazda 3で走ったときには意外と突き上げがありましたが、それでも突き上げがすぐに収束していました。デミオの場合はそこまで輪郭が鋭くありません。角が取れている代わりに収束するまで僅かに時間がかかります。Mazda 2ではMazda 3と同じような乗り心地になるのではないかと予想しますが、実際のところは乗ってみないとわかりません。

【曲がる】
交差点を曲がるときの感覚は、これはすごいと感心したMazda 3と異なり、所詮デミオです。試乗したのはデミオなのですから当然です。Mazda 2になって足回りがどれくらい良くなるのか楽しみです。

市街地走行のみでしたので、ワインディングでのコーナリングがどのような感じかはわかりません。エンジンが重くなったわけではありませんので、曲がる性能については1.3Lエンジン車と同様なのではないかと予想します。

【止まる】
排気量が増えた分だけエンジンブレーキの効きがよいですし、エンジン負圧を用いたブレーキ倍力装置もよく効きますので、全般的にブレーキの効きは良い印象です。デミオの1.3Lエンジン車やアクセラの1.5Lエンジン車よりもブレーキペダルの踏み込み度合いは小さめです。それでもガソリンエンジン車ですのでブレーキ操作感はディーゼルエンジン車よりも自然で、停止時のブレーキリリースも楽です。

【ディーゼルエンジン車との比較】
これならディーゼルエンジン車でなくてもよいのではないかと感じました。1.5Lエンジンは良い意味でディーゼルエンジンらしからぬところが持ち味ですので、乗り味はさほど違いません。ノーズが軽い分だけガソリンエンジン車の方が曲がりやすいでしょうし、ブレーキ操作感もガソリンエンジン車の方が自然ですので、全般的にはガソリンエンジン車の方が運転しやすいのではないでしょうか。

唯一ディーゼルエンジンが有利なのは中間加速です。トルクが太いため、2000回転くらいでそこそこ加速できますので、いつの間にか速度が高くなっています。試乗後にディーゼルエンジン車に乗って帰宅したとき、むしろこちらの方が軽快なのではないかと感じたくらいです。試乗したガソリンエンジン車は15インチホイール、ディーゼルエンジン車は16インチホイールですので、通常なら15インチホイールのガソリンエンジン車の方が出足が軽いはずなのですが。

そうなるとDJ初期型のような、「ディーゼルエンジンは重厚な上位グレード、ガソリンエンジンは軽快な廉価版」という位置づけが意味をなしません。Mazda 2ではガソリンエンジンの廉価版でも上位グレードと同等の安全装備をつけられるようになりましたが、今の1.5Lエンジンのもとでは、たしかに差をつける意味がありません。

【Mazda 3との比較】
シャシー性能については、デミオでは勝負になりません。Mazda 2になってどこまでMazda 3に近づけるか楽しみですが、こればかりは実車に乗ってみないと何ともいえません。今のところ、Mazda 2に試乗できるのは早くて2019年10月頃でしょう。

Bセグメントのデミオ/Mazda 2とCセグメントのアクセラ/Mazda 3との間の最大の違いは運転する際の気持ち良さで、こればかりは車格相応の差があります。デミオも素直で扱いやすくて道具としてはなかなかのものですが、あくまでも移動の足と感じられます。内装が良くても安全装備が充実しても、乗り味はあくまでも移動の足です。これはディーゼルエンジン車であっても同様です。一方、アクセラは非力な1.5Lエンジン車で近所に買物に行くだけでも気持ち良いです。

Mazda 3とMazda 2とで見積を取ってみるとガソリンエンジン車値段の差は70万円くらい、Mazda 2のディーゼルエンジン車とMazda 3のガソリンエンジン車との値段の差は50万円くらいです。しかしMazda 2のディーゼルエンジン車とMazda 3のガソリンエンジン車とでは燃料コストが大幅に異なりますので、実質的な価格差はやはり70万円くらいです。5年乗るとしたら年間14万です。月1万強で気持ち良さを買うかどうかです。

自動車のフルオートエアコンは本当に必要十分なのか

昔の自動車用エアコンは原始的だったため、温度設定できるフルオートエアコンがさも立派そうな扱いを受けていますが、本当にそれでよいのでしょうか。単にデンソーの汎用品をポン付けしているだけで、デンソーのカタログの中から高い車には高い製品を安い車には安い製品をつける程度の安易な仕事になっていないでしょうか。それが果たしてマツダの標榜する人間中心の車作りなのでしょうか。

そもそも温度設定機能なんて昔の家庭用エアコンにもついていたようなもので、温度センサーと安いチップで簡単に制御できます。それ自体は別にありがたがるほどのものではありません。それ以上におかしいと思うのは、人間の暑さ寒さの体感というのはあくまでも本人が暑いと感じるか寒いと感じるかの問題であって、決して気温の数字によって決まるものではないと考えるからです。冷房の設定温度を28℃にしろなんて余計なお世話です。不特定多数を乗せる公共交通機関なら平均的な嗜好に応じて設定温度を決めることに意味があるかもしれませんが、乗っている人の自由にできることが乗用車の存在意義です。

家庭用エアコンにおいては、温度を設定する形でしかエアコンの効きを調整できませんので、とりあえず温度を設定してみるものの、暑いと感じれば設定温度を下げ、寒いと感じれば設定温度を上げるという形で調整します。温度調整は本人が暑いと感じるか寒いと感じるかの問題であり、設定温度は単なる目盛りでしかありません。それは自動車用エアコンでも同様で、マニュアルエアコンであろうとフルオートエアコンであろうと、結局暑さ寒さの体感に応じて目盛りを上げたり下げたりしているだけです。

暑さ寒さの感じ方は人それぞれであるだけでなく、同じ人であっても同じ気温で暑いと感じるときもあれば寒いと感じるときもあります。様々な要因がありますが、一つは体温の問題です。体温が高ければ暑いと感じますし、体温が低ければ寒いと感じます。犬は体温が高いため総じて暑がりです。体を動かせば体温が上がりますし、じっとしていれば体温が下がります。夏に外を歩いていて車に乗った直後には体温が高いため暑く感じますが、車に乗ってしばらくするとあまり体を動かさないため体温が下がってきて同じ温度でも寒く感じるようになります。また、体温には時間による周期変動もあり、人間の深部体温は夕方に最も高くなり明け方に最も低くなります。家庭用エアコンの「おやすみモード」や「快眠モード」のたぐいで設定温度が徐々に上がっていくのはそのためです。エアコンの温度センサーで計測できるのは空気の温度でしかなく、人間の体温を計測しているわけではありませんし、ましてや深部体温なんて車載のセンサーでは計測のしようがありません。

もう一つは湿度の問題です。同じ気温であっても空気中の水蒸気量に応じて潜熱の量が異なりますので、例えば28℃であっても湿度が低ければ快適ですし逆に22℃であっても湿度が高ければ蒸し暑く感じます。夏場の蒸し暑さの目安になるのは最低気温で、空気中の水蒸気量が多くて潜熱が多いと、夜間の放射冷却によっても空気中の熱量が十分に減少せずに、最低気温が高くなります。湿度をコントロールすることなしに気温だけコントロールすることに一体何の意味があるのでしょうか。当初は暑く感じても、エアコンをつけているうちに除湿されますので、同じ設定温度でもだんだん寒く感じられるようになります。人間の暑さ寒さの体感に合わせようとしたら一定の設定温度に保つ制御では十分ではありません。

自動車用のエアコンにおいて温度による制御が意味を持つのは、夏に車を駐車して車内の温度が高くなったときです。始動直後にはフルパワーで冷やして、ある程度気温が落ち着いてきたら出力を落とすということを自動でやってくれます。しかしエアコンの出力制御だけで対処できるのはよほどの高級車だけで、大衆車では人力で窓を開けたり扉を開けたりして暑い空気を出して外気と入れ替える制御と併用されます。それなら窓を閉めてからおもむろにエアコンをつけても大差ありません。

自動車特有の制約としては、移動体であるが故に走る場所によって気温や換気の度合いが異なるということが挙げられます。アスファルトの舗装道路の上では暑いですし、森の中では涼しいです。しかしそれはドライバーにとっては自明なことですので、機械に判断させるよりも人間の任せる方が簡単かもしれません。速度が高ければ換気量が多い一方で、交差点で停止中にはラジエーターに冷気が当たらず、かつ暑い空気が空気取入口付近に滞留しますので、同じ設定温度でも急に暑くなったりします。温度制御があればある程度対応できるものの、交差点での停止時にアイドリングストップがかかる時代になると、たとえ温度制御をしても肝心のエアコンが止まってしまいます。そうなると暑くなりますので、停車中であってもエンジンを始動してフルパワーでエアコンを動かします。それはあまり利口なやり方に感じられません。

人間が自らの体感に基づいて主体的に判断する領域と機械がアシストする領域とがあり、あるべき姿に即してそれらをどのように切り分けるかを考えるというのは車作りに共通したもので、それならば同様の考え方がエアコンにも適用されるべきです。ローテクというのは人間の体感に直結したものであるが故に意外とあなどれず、下手な電子制御はローテクに及びません。人間の体感に合わせるためならば敢えて安い部品を採用するという選択肢もありえます。電子制御を人間の体感に合わせるのは結構大変な作業です(だからこそ一見地味なMazda 3の走りはすごいと思います)。エアコンについてはダイキンのような空調専業メーカーの技術の後追いにならざるを得ませんが、自動車特有の制約を考慮した上で人間の体感に沿ったエアコンを作れたら、それは素晴らしい成果となることでしょう。

2019年7月18日木曜日

Mazda 2発表

2019年7月18日にデミオの商品発表とMazda 2への名称変更が発表されました。詳細は各種発表資料をご参照いただくとして、ここでは気になった点を列挙します。

【グレード名】
装備の充実に伴い、名称が1ランク上がっています。
15C→15S
15S→15S Proactive
15S Touring→15S Proactive S Package
15S Touring L Package→15S L Package
XD→XD Proactive
XD Touring→XD Proactive S Package
XD Touring L Package→XD L Package

最上位がL Package、次がS Package、廉価版がProactiveとの位置づけようです。これにレンタカー/営業車グレードの15Sとモータースポーツベース用の15MBという構成です。

【エクステリア】
Mazda 3と同様の顔になりました。他車種に合わせる意図もあるでしょうが、最大の理由は、LEDヘッドライトの性能が向上してフォグランプが不要になったためではないでしょうか。従来の顔のままフォグランプだけ無くすと間延びしますので、フォグランプが無い前提で顔を変える必要があります。尚、これに伴い全グレードでLEDヘッドライトになっています。ただし、最下位の15Sのみヘッドライトの仕様が異なるようで、アダプティブLEDヘッドライトを選択できません。

フロントグリルのメッシュが細かくなったのに合わせてアルミホイールのデザインも変更になりました。

従来、15Cを除きシャークフィンアンテナに統一されていましたが、下位グレードはコストダウンのためか標準ではツノアンテナに戻りました。しかしメーカーセットオプションはすべてDVDドライブ・TVチューナー・シャークフィンアンテナとの抱き合わせですので、何がしかメーカーセットオプションをつけると選択の余地なくシャークフィンアンテナになってしまいます。実質的には変わらないでしょう。

しかしフルモデルチェンジではありませんので、それ以外のエクステリアに変更ありません。後ろから見るとそのまんまです。

塗色は、ダイナミックブルーが廃止され、代わりにセラミックメタリックが標準で選択できるようになりました。ポリメタルグレーはまだありません。

【インテリア】
L Packageのレザーシートはブルーグレーに、S Packageのファブリックシートは黒系からネイビーに、Proactiveのシートは茶系に変更になっています。写真で見る限りではどうしてこんな色にしたのか意図を理解できておりません。色だけでなく材質や質感を含めて、実車で見てみないとわからないでしょう。マシーングレーのような無彩色の外装とマッチしそうに見えます。

【エンジン】
ディーゼルエンジンは依然として1.5Lのままです。今のエンジンルームでは1.8Lエンジンは入りきらないのでしょうか。おかげで、日本その他一部の国でのみ1.5Lディーゼルエンジンが細々と続くことになりました(欧州ではディーゼルエンジン無しになり、北米ではもともとMazda 2の販売自体が無し)。1.5Lエンジンは特に改良されていないようで、従来のままの数字です。とはいえ、1.5Lエンジンのままでも220NmまででしたらNOxの排出量はさほど増えません(AT車で250Nmまで出すと欧州の環境規制をクリアできず)。

15MBのエンジンは2018年の商品改良時には改良前エンジンでしたが、やっと他のグレードと同様の改良版エンジンになりました。

【燃費】
1.5LディーゼルエンジンでもWLTCモード燃費が表示されるようになりました。もちろん見た目の数字は下がっていますが、普段走っているときの実燃費はWLTCモード燃費よりも少し良くて、平均で22km/Lくらいはコンスタントに出ています。今回のWLTCモード燃費の数字が少し低いのは静粛性確保のために30kgほど重くなったせいでしょうか。

また、15MBでWLTCモード燃費が表示されるようになったことから、他のガソリンエンジングレードと燃費を比較できるようになりました。15MBのエンジンは4-2-1排気管付圧縮比14ですので、4-2-1排気管無しで圧縮比12のエンジンと比べて燃費が5%ほど良いです。そのかわり日本ではハイオク指定ですので燃料代は少し余計にかかりますが。

【変速機】
Mazda 3では中容量ATの変速比が一部変更になりましたが、Mazda 2ではガソリンエンジン・ディーゼルエンジンともにATの変速比に変更なし。一方、ディーゼルエンジンのMTはバックのみ若干ローギアードになった他、ガソリンエンジンのMTは4速5速6速が若干ハイギアードになっています。

最終減速比については、AT車では変更なし。ガソリンエンジンのMTでは若干ハイギアードになり、ディーゼルエンジンのMTでは若干ローギアードになりました。ディーゼルエンジン車ではWLTC燃費表示に伴いディーゼルのMTを燃費スペシャルグレードにする必要が無くなったことから、走りやすくしたように見受けられます。ガソリンのMT車をハイギアードにしたのは、4速5速6速をローギアードにしたことを補うものでしょうか。その分1速2速3速がハイギアードになっています。つながりやすさを重視したものでしょうか。

【シャシー】
Skyactiv第2世代に合わせるべく、大幅に手を入れたようです。操縦安定性の向上と乗り心地の向上は歓迎しますが、これは能書きだけではわかりませんので、実際に乗ってみるまで何とも言えません。併せて、シートも骨盤を立てるシートに変更されました。今までのデミオのシートの出来もなかなか良いと思いますが、Mazda 3を試乗した際にシートの出来の良さに感心しましたので、同様のシートが導入されるのは楽しみです。

ホイールサイズが若干変更になっています。XD Touringでは16インチホイールでしたが、XD Proactive S Packageでは従来のXD同様に15インチアルミホイールが標準になりました。ただし、メーカーセットオプションで2万円出すと16インチホイールを選べます。従来は15インチホイールだと高速安定性がやや及ばず、やむなく16インチホイールを選びましたが、185/60R16という特殊なサイズ故にタイヤの選択肢が乏しいことから、15インチホイールでも高速域で安定して走るのでしたら出足が軽くて乗り心地が良くて安い15インチの方がありがたいです。15インチだと185/65R15という標準的なサイズで、16インチでは選べないBluEarth-GTも選べます(Regnoはやっと16インチでも選べるようになりました)。たとえコストダウンのためだとしても、上位グレードでホイールのサイズをケチる必要はありませんので、15インチでもまともに走る足になったことを期待しております。

CX-3と同様に専用設計タイヤを導入するとのことですが、新車装着タイヤがどこのメーカーのどの製品なのか気になるところです。

【長距離向け装備】
ガソリンエンジンの廉価版(15Sと15MBを除く)でも10万円のセーフティークルーズパッケージをつけると全車速対応型MRCCやアダプティブLEDヘッドライトやレーンキープアシストといった長距離運転で絶大な威力を発揮する装備をつけられるようになりました。交通標識識別システムはProactive以上で標準装備です。

Mazda 3の1.5Lガソリンエンジン車ではオプションでも付けられない装備なのに、Mazda 2ではガソリンエンジンの廉価版でも付けられますので、Mazda 2のガソリンエンジン車はお買い得だと思います。Mazda 2の方がほぼ同じ1.5Lエンジンで圧倒的に軽いですし。

Proactiveには標準ではステアリングシフトスイッチがついていませんが、2万円のショップオプションでつけられる他、15S Proactiveでは7万円のスポーティーパッケージで本革巻きステアリングと合わせて購入できます。ステアリングシフトスイッチは山道ではあれば便利ですが、ガソリンエンジン車ではスポーツモードにセットして低めのギアで走れるようにすることでも対処できますので、無くてもどうにかなるかもしれません。

【その他装備】
上位グレードでは電動パワーシート付です。しかし電動パワーシートのメリットはシートポジションを記憶させておいて複数人で乗ってもすぐに自分に合ったポジションにできることですので、一人で乗るなら手動で調整する方が早いです。自動防眩ルームミラーもついていますが、今まで必要を感じたことがありません。

ショップオプションでルームミラー付近にメガネを収納するスペースをつけることができます。運転中にサングラスをかける人や運転用メガネをかける人にとっては収納しやすく邪魔になりませんので便利だと思います。

【静粛性】
Mazda 3と同様に遮音材を盛って静粛性を高めたようです。ディーゼルエンジンであってもエンジン音はさほど気になりませんし、新車装着タイヤのトーヨーのProxes R39
でなければロードノイズもさほど気になりません。初期型で気になるのは風切り音とBピラーの隙間から入ってくるノイズです。外から入ってくる音については隙間を塞いだり制振したりすることで対処できますので、その辺りが改善されればよいのですが、これも実車に乗ってみないとわかりません。

【マツダコネクト】
フルモデルチェンジではありませんので、従来型です。たしかに新型の方が画面の解像度が高いですが、従来型であってもさほど不自由を感じません。

Apple CarPlayとAndroid Autoに対応しましたので、出発前にスマホで目的地設定しておいて、車に乗るときにスマホを接続することでエンジン始動後すぐにカーナビが使えるのは便利だと思います。とりあえず最初はSDカードの地図データを購入するにしても、3年以上経過して有償で地図データを更新するくらいでしたらスマホのカーナビを使った方が便利でしょう。3年もすればさらに性能が良くなるでしょうし。

Mazda 3と異なりスピーカーの設置場所から見直されたわけではありませんので、音については従来通りでしょうか。それでもカロッェリアのDEQ-1000A-MZをつなげば音が激変しますので、当面はそれで乗り切ればよいのではないでしょうか。

【価格】
オンライン見積で10万円のセーフティークルーズパッケージをつけた場合のグレード別乗り出し価格は以下の通りです(パックdeメンテ無し)。

15S Proactive:2,327,370円
15S Proactive S Package:2,455,457円
XD Proactive:2,535,270円
XD Proactive S Package:2616557円

たしかに値段は上がっておりますが、装備がだいぶ増えましたので、同じ装備で比較するなら初期型の上位グレードと最新型の最下位グレードとの比較になり、そうなると車の出来が毎年良くなっているにもかかわらず初期型からほとんど値上がりしていません。

ProactiveとS Packageの差額は8万円くらいです。15S Proactiveは鉄チンホイール、ウレタンステアリングのときの値段ですので、条件を揃えれば差額8万円くらいになります。ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車との差額は16万円くらいです。燃料コストが4円/kmほど違いますので、4万km乗れば燃料代だけで元が取れます。5年乗るなら年間8000kmペースですので、長距離乗る人にとってはディーゼルエンジン車の方が安くつきます。

しかしそれでも短距離移動主体の人にはディーゼルエンジンは向きませんし、たとえ長距離乗るとしてもガソリンエンジン車には独自の軽快さがあります。装備の面でも、初期型ではガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車で差がありましたが、今ではガソリンエンジン車でも遜色ありません。また、ディーゼルエンジンは初期どっかんターボの頃は高速道路で圧倒的な加速力でしたが、エンジンに煤が貯まるにつれて吸気性能が落ちますし、何度かのECU書き換えを経て街乗りで扱いやすくなった反面、高速道路ではおとなしくなりましたので、それなら敢えてディーゼルエンジンでなくてもよいのではないかという気もします。

鉄チンホイールやウレタンステアリングを気にしない人にとっては、事実上の最下位グレードである15S Proactiveがお買い得に見えます。たしかに国産コンパクトカーとしては安くありませんが、他に類を見ない安全装備や長距離向け装備てんこ盛りでこの値段です。Mazda3で長距離向け装備をつけようとすると2Lガソリンエンジン車以上のグレードに誘導されますので、乗り出し300万円です。

アルミホイールは見た目だけであって安物のアルミホイールは全然軽くありません。見た目といってもどうせ運転中には車内から見えません。また、運転中に手袋をつける人には本革巻きステアリングは必要ありません(手袋をつけると革が摩耗しやすい)。素手で触るなら本革巻きの方が感触がよく滑りにくいというメリットがありますが、素手で触ると程度の差こそあれステアリングに手汗がつきますのでこまめな清掃が必要です(手袋なら洗うだけ)。

全般的に走りや安全に関係するものは下位グレードまで広く装備されるようになり、走りや安全と関係なく好みで選ぶものについてはオプションという形になっており、車としては健全だと思います。唯一気に入らないのは未だにメーカーセットオプションでDVDドライブやTVチューナーが抱き合わせになっていることくらいです。これだけスマホが普及してApple CarPlayやAndroid Autoも使えるようになった時代にどうして旧態依然とした円盤やテレビを見る装置を押し付けられなければならないのかよくわかりません。しかも停止中以外は映像が表示されない代物です。ドライバー以外がテレビを見たかったらスマホのワンセグだってあります。本来ならこんなものはショップオプションなり社外品で十分なはずですが。