2023年10月29日日曜日

Mazda 3は良くも悪くも4人乗りロードスター(その3)

常日頃からMazda 2の2Lエンジン車の燃費の悪さをあげつらっていますが、ロードスターの燃費はどうなのだろうと思って調べてみたら、1000kgと軽いのに17km/Lしか出ないのですね。同じサイズのMazda 2なら20km/Lを超えますので、スポーツカーとして燃費よりもパワーや走る楽しみを重視するセッティングなのでしょう。Mazda 3の方が一回り重いので、ロードスターよりも一回り燃費が落ちるのは別におかしくないともいえます。だったら86/BRZはどうなのだろうと思って調べてみたら、こちらはMazda 3やインプレッサよりも一回り軽くて12km/L弱。ちなみにインプレッサのマイルドハイブリッド無しは14km/L弱。インプレッサ用のエンジンがベースですので、スポーツカーというのはそもそもそういうものなのかもしれません。Mazda 3の2Lエンジン車は燃費性能だけは一人前にスポーツカー並なのだと思うと、よくぞここまでロードスターに合わせたものだと思います。

よくわからないのがMazda 3の1.5Lエンジン車で、ロードスターよりも3割以上重いのにロードスターと遜色ない燃費ですし、しかも信号の少ない道での実燃費はBセグメント並の20km/Lを出せますので(同じ道を2Lエンジン車で走ると18km/L)、同じMazda 3でもこちらはかなり燃費が良いです。その代わりアンダーパワーでエンジンをしっかり回してもあまり加速しません。もしかして、加速性能を落とせば燃費を良くすることができるということでしょうか。だとすれば、2Lエンジンの排気量をパワーではなく燃費に振り向ければもっと燃費を良くすることができるということでしょうか。エンジンの制御で調整できるのでしたら、トヨタのハイブリッド車のようにエコモードとかパワーモードとかを選べるようにしてくれるとありがたいです。一応スポーツモードというのもありますが、デフォルトの燃費性能がスポーツカー並ですので、敢えてスポーツモードを使おうという気になれません。

2023年10月25日水曜日

ICONIC SP発表

2023年10月25日のジャパンモビリティーショーにてICONIC SPが発表され、併せてプレスリリースも出ました。 

見た目は2022年11月22日の経営計画の発表の際に登場したビジョンスタディと同じです。ただし、前回は白だったのに対して今回は赤であり、RX-7に近くなっています。フロントグリルの周りの縁取りが赤いと、犬が舌を出しているようにも見えます。他社がカクカクしたコンセプトカーばかり発表している中で、キャラクターラインを廃した曲面基調のエクステリアデザインは異彩を放っています。

パワートレインは2ローターのロータリーエンジンによるシリーズハイブリッドで、出力はMX-30 Rotary-EVの2倍の370psとのこと。モーターを後部につければFRであってもドライブシャフトが不要ですが、内装の写真を見る限りではドライブシャフト用のスペースがあるようにも見えます。後輪駆動用のモーターを後部につけたらドライブシャフトなしでFRを実現できますし、エンジンと発電機の横に前輪駆動用のモーターをつけたら比較的容易にAWDにできそうですが、パワートレインの詳細についてはまだわかりません。2シーターかつ幌無しですので座席後部のスペースはトランクルームの分を差し引いても余裕があります。

エンジンは縦置きとの説が有力です。電気モーター駆動車でしたら必ずしもエンジンを縦置きにする必然性がありませんので、横置きにして極力後ろに寄せるやり方もありえますが、縦置きの方がフロントサスペンションのためのスペースを確保しやすいですし、ガソリンエンジン車と設計を共通化しやすいです。

車体サイズはロードスターよりも一回り大きく、全長は265mm、全幅は115mm大きいです。Bセグメントサイズのロードスターに対してCセグメントサイズです。重量は1450kgもありますが、CセグメントとしてはMazda 3のディーゼルとSkyactiv-Xの中間の重量。ロードスターと違って屋根付きなのは車体剛性を確保しつつ最大限に軽量化するためと推測します。MX-30 Rotary-EVよりもかなり軽いですが、車体の軽量化もさることながら、シリーズハイブリッドなので蓄電池搭載量が少ないのではないでしょうか。もしMX-30でシリーズハイブリッド車を作るとしたら、Cセグメントで1500kgくらいでしょうか。同じモーター出力でPHEVよりも重量が2割軽いので、軽快に走りそうです。

ロードスターよりも重いのは蓄電池の重量がかさむことや、ガソリンエンジン車と異なりまだ極限までの軽量化をできていないのかもしれません。普通のシリーズハイブリッドなら蓄電池搭載量をもっと少なく軽くできそうですが、370psの出力を出すためにはエンジンで発電した電力だけでは足りず、ある程度蓄電池からの放電も必要になるでしょうから、その分蓄電池の重量がかさんでいるのかもしれません。

低い車体のどこに蓄電池を置いたのか気になるところです。もしかして、後輪側にモーターを搭載したうえでドライブシャフトのある場所に蓄電池を積んでいるのでしょうか。もしそうだとするとガソリンエンジン車と車体設計を共通化しやすいです。ロータリーエンジンで直接駆動する場合は、後軸付近のモーターのあるであろう場所に変速機を配置すると、エンジンと変速機の間はトルクが小さいためにドライブシャフトが細くて済み、センタートンネルを大きくする必要がありません。重量バランスもシリーズハイブリッドとほぼ同じになります。シリーズハイブリッドの370psは過大に見えますが、ロータリーエンジンで直接駆動する場合には2.5Lレシプロエンジン相当の性能ですので、スポーツカーとしては平均的な水準です。とはいえ、蓄電池を積まない分軽量化できますので、これはこれで軽快な走りが実現しそうです。発電機とモーターと蓄電池の重量を差し引いて変速機の重量を足すと1200kgくらいでしょうか。

どのみちこの重量ではロードスターのようなライトウェイトスポーツカーにはなりえませんので、RX-7後継と位置づけて高出力にしています。走りはテスラのような大容量蓄電池を積んだEVスポーツカーに近いのではないかと推測しますが、EVよりも軽くしていますので燃費を度外視すればロードスターとテスラの中間のような走りでしょうか。

燃費についてはMX-30 Rotary-EVよりも軽量化した分と高出力化した分とが相殺されていそうですが、WLTC燃費は未公表ですのでわかりません。燃費に自信がないのか、水素やカーボンニュートラル燃料を使えるということをアピールしています。カーボンニュートラルでしたらCO2排出量規制に引っかかりません。しかし、それを実現するためにカーボンニュートラル燃料の調達をどうするのかや、液体水素のタンクどどこにどうやって積むのかについては言及がありませんので、現時点の限られた情報のもとでは、燃費が悪いことの言い訳に使っているように見えます。

2023年10月22日日曜日

Mazda 3は良くも悪くも4人乗りロードスター(その2)

Mazda 3で渋滞する道を走れば当然楽しくありませんが、少し流れが良くなってくると「いい車だな」と感じます。その一方で「いい車なんだけど」という感覚は何だろうと思っていましたが、Mazda 3で気持ちよく走れる道というのはロードスターで気持ちよく走れる道と同じなのではないかと思うようになりました。信号が無くて流れが良くてある程度自分の意図した通りにコントロールできる道路では気持ちよく走れます。田舎に住んでいればMazda 3でも気持ちよく走れますが、混雑する都会では気持ちよく走れません。特に東京に住んで電車通勤している人は車で遠出する機会がほぼありませんので、そういう用途でしたらトヨタのハイブリッド車の方が楽に運転できそうな気がします。

Mazda 3はロードスターRFのように屋根がついていて、それでいてロードスターRFよりも安く、しかも後ろに人が乗ることができて荷物もたっぷり積めて、しかもFFですので冬タイヤを履けば雪道も走れます。ロードスターはセカンドカーとしては高価ですが、Mazda 3なら1台で済みます。しかし軽自動車ばかりの田舎でMazda 3が売れるかというと、実用車にしては高価ですし、見た目を除けば趣味の車というほど振り切っているわけでもなく、しいていえば、毎日車で数十km通勤する人ならMazda 3の1.5Lに乗れば気持ちよく通勤できるかなという程度です。


2023年10月12日木曜日

電動化時代のライトウェイトスポーツカーのあり方

ライトウェイトスポーツカーというと、さほどパワーのないガソリンエンジンをしっかり回して走るイメージがありますが、電気モーターとガソリンエンジンとでは特性が異なりますので、電動化した場合には同じような走らせ方ができません。

ガソリンエンジンは低回転でトルクが細く、高回転でトルクが太くなり、回転数とあいまってパワーが出ますが、電気モーターの特性はその逆で、低回転からトルクが出ますが、回転数が上がると、回転する電機子が自ら生み出す逆起電力によってトルクが細くなり伸び悩みます。ものすごく滑らかなディーゼルエンジンのイメージです。

電気モーターによる加速感なら、電気自動車に乗らなくても日産ノートe-Powerで体験できます。アクセルを踏み込むと60km/hくらいまで一瞬で加速しますが、高速域では効率が悪いです。EV走行領域の広い新型アクアもそれに近い加速感です。この加速感をベースに運転して気持ちよいライトウェイトスポーツカーを設計するとなると、そもそも気持ちよい運転とは何かというところから設計しなければなりません。

幸い、ライトウェイトスポーツカーは高速道路で飛ばすような車ではなく一般道で気持ちよく走れることが重視されるでしょうから、さしあたり高速域のことはあまり気にしないことにして、曲がりくねった道を運転するときに何を気持ちよく感じるかを突き詰めていけば良さそうに見えます。

ノートe-Powerに乗ると、最初は面白がってアクセルを踏み込んで一気に加速したくなりますが、じきに飽きてきてほどほどに加速するようになります。それに急加速すると燃費にも悪いです。

発進時のアクセルの踏み方をどうするかですが、電気モーターは停止状態でもトルクが発生しますので、CVT車のようにいきなりアクセルをぱかっと踏み込んで加速することもできます。ただ、そのやり方ではスイッチを入れると機械が勝手に加速するだけですし、乗り心地も悪いです。最初は楽しくてもじきに飽きてくるのではないでしょうか。

エンジンよりもモーターの方が細かいトルク制御が容易ですので、コーナリング時にトルクベクタリングでサポートできるだけでなく、ドライバーの細かいアクセルワークに機敏に反応できる車にすることもできます(どこまで機敏にするかは味付け次第ですが)。

電気モーターを導入する上で難しいのはむしろブレーキで、停止直前に回生ブレーキが失効しますので、油圧ブレーキで補う必要がありますが、その切替が難しくて、電車であれ自動車であれ衝動が出やすいです。運転で一番大切なのがブレーキで、特に停止直前は制動力を抜きながら滑らかに停止させることが求められますが、その最も繊細なタイミングで衝動が出る車は運転して楽しくありません。幸い、MX-30 EVは既にその辺りがきちんと作り込まれています。

モーターの出力をどの程度の設定するかも難しくて、ライトウェイトスポーツカーの定義に即して考えればなるべく低めの方がよいでしょうし、あまりパワーがありすぎると繊細なアクセルワークが難しいかもしれません。かといって高速道路の追い越し加速くらいはできないと困りますので、それが基準になるかもしれません。

2023年10月7日土曜日

もしかしてロータリーエンジンによるシリーズハイブリッドは電動化スポーツカーには使えるのだろうか

ロータリーエンジンはシリーズハイブリッドで使う分には燃費性能が不足しているように見えますが、燃費に敏感なBセグメントやCセグメントの量産車ユーザーならともかく、ロードスターに乗るような人はさほど燃費を気にせずに、むしろロータリーエンジンの回転音や電気モーターの太いトルクによる加速を楽しめるかもしれません。それにスポーツカーはあまり数が出ませんので、多少燃費が悪くても企業平均燃費規制への影響は僅少でしょう。

テスラならともかく、スポーツカーが蓄電池で重くなってしまってはライトウェイトスポーツカーのような機敏な走りができませんので、ロードスター後継の電動化スポーツカーをもし出すとしたら、おそらく蓄電池自動車ではないのではないかと予想しています。蓄電池よりも軽くてエネルギー密度が高いのはロータリーエンジン+ガソリンです。MX-30 R-EVのパワートレインはMX-30のエンジンルームに積む分にはまだスペースに余裕がありますので、だったらレシプロエンジンでもよいのではないか、日産やホンダはできているのにと思いましたが、ロードスタークラスのライトウェイトスポーツカーのエンジンルームに収めようとしたら小型軽量化が必要でしょう。

ロードスターはFRですので車体中央にドライブシャフトが通っていますが、後輪車軸付近にモーターを配置するならドライブシャフトが不要になり、設計の自由度が増します。前輪側のモーターも残せば4WDになります。できれば4輪にインホイールモーターがつけば面白そうですが、数の出ないスポーツカーでは開発費の回収が厳しそうです。

ロードスターはもともとMazda 2用の1.5Lエンジンをベースにしていたり、内装部品もMazda 2と共通だったりして、量産部品を活用することでコストを圧縮しています。ロータリーエンジンによるシリーズハイブリッドも量産車と共通化することでコストを圧縮できるかもしれません。MX-30 R-EVで採用されている技術は、MX-30単体で見る限りではあまり合理性を見いだせませんが、もしロードスター後継者まで念頭に入れているのであれば、もしかしたらありかもしれません。MX-30 R-EVのハイブリッドモードの燃費が悪いのは、もしかしたらエンジン回転数を変化させているためかもしれず、それはMX-30ではさほど意味があるように思えませんが、ロータリーエンジンを積んだスポーツカーには必要なことかもしれません。

ロードスター後継の電動スポーツカーのためにそこまでするかという気もしないでもありませんが、先日のロードスターのマイナーチェンジのために注いだ開発陣の熱量ならありえなくもありません。