2017年6月28日水曜日

CX-3の2Lガソリンエンジン車発売

マツダより、CX-3の2Lガソリンエンジン車の発売が発表されました。もともと海外向けには1.5Lディーゼルエンジン車と2Lガソリンエンジン車との2本立てでしたが、今まで日本では1.5Lディーゼルエンジン車のみでした。しかしディーゼルエンジンは長距離巡航向けである一方、日本でのCX-3のターゲットは都市住民ですので、街乗りで扱いやすいガソリンエンジン車が無いのと、CX-3のディーゼルエンジン車の価格設定が割高だったこともあり、さほど売れていませんでした。CX-3のターゲット顧客の求めるものをもっとリーズナブルな値段でという要望のもとに発売されたのはCX-3のガソリンエンジン車です。

【重量】

  • FFではディーゼルエンジン車よりも30kg軽く、4WDではディーゼルエンジン車よりも40kg軽量ですが、デミオで1.5Lディーゼルエンジン車と1.3Lガソリンエンジン車との間の重量差が100kgあることを考えると、2Lガソリンエンジン車はさほど軽くない印象。
  • アクセラ2Lとの比較では70kg軽いです。1.5Lディーゼルエンジンでアクセラと比較すると100kgの差がありますので、同じエンジンでの比較でしたら100kgの差が出るはずのなのですが、70kgしか差が出ないということは残り30kgを遮音や乗り心地向上に振り向けているのでしょうか。


【パワートレーン】
  • ガソリンエンジン車にはMTの設定無し(欧州向けには当然MTあり)。タウンユースを想定か。
  • ATは1.5Lディーゼルエンジン車と同じもの。
  • エンジン出力は148ps。欧州向けでは2Lエンジンは120psですが、日本向けでは本来の出力のように思いきや、実はアクセラ2Lの155psよりは少し低いです。
  • 2800回転で最大トルク192Nm。これもアクセラ2Lでは4000回転で196Nmでしたので、高回転でのトルクをアクセラ2Lよりも少し絞っており、低回転域でのトルクを重視した特性のようです。
  • 高回転域でのトルクをアクセラ2Lよりも絞っている理由がよくわからないのですが、CX-3は車体の割に太いタイヤを履いていますので、フルパワーで走行すると足回りとのかねあいで何か支障があるのでしょうか。
  • アクセラよりも70kg軽い上に2Lエンジンですのでトルクには余裕がありそうです。タウンユースに限定してもアクセラ1.5Lガソリンエンジン車よりもかなり快適に走れそうです。
【価格】
  • 同じグレードでの比較で1.5Lディーゼルエンジン車よりも約30万円安い価格設定。アクセラでは2Lガソリンエンジン車と1.5Lディーゼルエンジン車とでほぼ同じ価格なので、2Lエンジンにしては割安な設定といえるのか、あるいはCX-3の1.5Lディーゼルエンジン車が割高なのか。
  • かつてのアクセラ2Lガソリンエンジン車よりも20万円ほど安い価格設定。
  • ホンダヴェゼルの1.5Lガソリンエンジン車よりも約20万円高い価格設定。
  • 4WDで比較するとC-HRの4WDの1.2Lガソリンターボ車とほぼ同価格。一方、FFのディーゼルとハイブリッドで比較するとCX-3の方が10万円ほど安い設定。
  • 同じく4WDで比較するとスバルXVのAWDの2Lガソリンエンジン車とほぼ同じ価格。
  • CX-2のガソリンエンジン車であってもXVの1.6Lガソリンエンジン車よりも一回り割高。
  • 価格で見る限り、車体が一回り大きいCH-RやXVを競合として意識している模様。
【総評】
  • CX-3を気に入って買う場合、街乗りで使い勝手が良い上に価格も一回り安いガソリンエンジン車の方がディーゼルエンジン車よりも魅力的に見えます。ガソリンエンジン車は燃費は劣るものの、都市住民は通勤で車に乗りませんので、そもそも燃料代で大きな差がつくほどの距離は乗りません。
  • 同じ価格のXVやCH-Rとの比較では、車体が小さく車庫入れが楽と言えますが、その分車内が狭いので、4人で乗るのは難しそうです。

2017年6月25日日曜日

マツダコネクトのバージョンを59.00.502に上げました

2017年6月19日にマツダコネクトv59.00.502がリリースされました。主な変更点のうち、便利そうに感じたのは以下です。
  • USBオーディオの動作の安定性 楽曲数が多い場合、リスト表示が極端に遅くなる現象を改善すると共に、選曲操作の反応を向上しました。
  • ナビゲーションの作動安定性を向上しました。
  • CMUの作動安定性/応答性
今のところiPod周りやBluetooth周りでは特に不満はなく、ナビも立ち上がってしまえばさほど不満が無いのですが、唯一今でも不満なのは起動があまりにも遅いことです。ナビを使わないならマツダコネクトが起動するのを待つまでもなくそのまま発進してしまえばよいのですが、エンジンを始動してナビに目的地を入力して出発しようとすると出発までずいぶん時間がかかります。当座の対応としてはエンジンを始動してから目的地を入力するのではなく、エンジンを停止する前に目的地を入力しておくといったことはできるのですが、それはそれで目的地に着いてもなかなか車を降りられないわけで、いずれにせよもっと反応が速くならないと不便です。

今までのマツダコネクトのバージョンアップの実績では、パフォーマンスの改善については効果に個体差があって、バグが直っていないケースやパフォーマンスが期待したほど改善していないケースがありました。

入庫後にエンジンを始動してみるとたしかにマツダコネクトの起動は今までよりも速くなりましたが、それは単に今までがあまりにも遅すぎただけで、更新後の起動時間に満足できるかといえばまだ満足できません。せめて先に地図を表示させるだけでも印象が違ってきますので、エンジン停止時の地図の画像をメモリにキャッシュしておけばよさそうに思えます。

USBオーディオの動作の安定性がどの程度改善されたか見るために、久しぶりにUSBメモリを挿して音楽を再生してみました。USBメモリの最初の読み込みまでは正常に動作しませんでしたが、一旦読み込みが終了すると問題なく動作するようになりました。ただし、USBオーディオはエンジンを始動してから音楽再生が開始されるまでかなり時間がかかります(iPodでしたらiPod側のDAコンバータを使いますので比較的早いのですが)。今まではシャッフル再生にしていてもエンジン始動時にフォルダの最初の曲からの再生に戻ってしまいましたが、今のところ正常にシャッフル再生できています。しかしiPodで曲を再生するときと異なり、曲と曲との間の空白の時間が数秒あり、音楽再生が止まってしまったのだろうかと思っているとしばらくして次の曲の再生が始まります。都度曲のファイルを読み込んでいるためでしょうが、さすがにある曲を再生中に次の曲のファイルを読み込むといった器用なことはまだできていないようです。実は曲と曲との間に空白があるのが本来の仕様で、iPodで空白が無いのは「ギャップレス再生」に対応しているからのようです。

2017年6月18日日曜日

エンジンマウントを交換しました

ここ数か月ほどアイドリングストップに入るためにエンジンが停止するときの振動がひどくなってきましたので、定期点検を機にエンジンマウントを交換してもらいました。5年乗るとするとそろそろ折り返し点ですし、走行距離が10万kmを超えるとメーカー特別保証が効かなくなりますので重要部品を交換するには良いタイミングです。

効果はてきめんで、エンジン停止時の振動が無くなったわけではありませんが、通常の許容できるレベルにまで戻りました。エンジンが停止するときには普通に振動するときと振動がほとんど無いときとが同じくらいの頻度で発生するのですが、どのようにしてそのような違いが生じるのかよくわかりません。また、ブレーキを緩めてきれいに停止させるのも少し楽になったような気がします。

エンジンマウントが走行機器や操縦安定性に影響するのは当然のことですが、デミオでイーゼルは総重量1130kgの軽い車に200kgくらい(なぜかエンジン重量が開示されていない)のエンジンを積んでいますので、なおさら影響がありそうです。

2017年6月17日土曜日

DE精密過給制御付のデミオディーゼルに乗ってみました

2016年6月登録のデミオディーゼルに乗る機会がありました。DE精密過給制御とナチュラルサウンドスムーザーはついていますが、G-ベクタリング・コントロールはついていないモデルです。同時期のCX-3には乗ったことがありますが、デミオで乗るのは初めてです。

もともとデミオディーゼルは太いトルクを高速域の加速に振っているためにハイギアードで、初期型では発進時の加速に難があったのですが、DE精密過給制御の威力は絶大でアクセルを踏んだら踏んだ分だけ期待通りに加速するようになり、街乗りでもストレスなく加速できるようになっていました。デミオの方がCX-3よりも車体が軽い分だけCX-3よりも出足が軽いかと期待しましたが、そこまでの差は感じられませんでした。同じエンジンでもCX-3やアクセラの方がデミオよりもトルクが太いためでしょうか(270Nmと250Nm)。

ナチュラルサウンドスムーザーの方は、たしかに低速域でもカラカラ音が聞こえなくなりました。しかしそれでもディーゼルエンジン特有の音と振動は残っており、ガソリンエンジンとは歴然と異なります。非力なガソリンエンジン車ではアクセルを踏み込むと回転数が上がってエンジン音がうるさいですが、ディーゼルエンジン車なら低回転でもぐいぐい加速しておきますので、ある程度メリハリを持って加速するならエンジン回転数の少ないディーゼルエンジンの方が音は静かだと思います。

初期型からたった1年でここまで実用的な使い勝手が向上しているのは大したものです。新車で購入するならその時点で最新のものを購入するだけですが、中古で購入する場合、年ごとに仕様が異なりますので、どの年次のものか注意した方が良さそうです。

2017年6月16日金曜日

レンタカーでG-ベクタリング・コントロール付のアクセラ1.5Lに乗ってみました

レンタカーで1.5Lクラスを予約したらアクセラ1.5Lが来ました。いつものアクセラかと思って運転しているうちにふとステアリングホイールを見るとホーンが小さい2016年夏にマイナーチェンジされたモデルでした。もしやと思って車検証を見たら2017年4月登録で走行距離6000km強でした。となればG-ベクタリング・コントロールがついていますので、どんな走りになったのだろうか気になりました。尚、レンタカーの廉価グレードでしたのでヘッドアップディスプレイはついておらず、改良後のヘッドアップディスプレイを試す機会はありませんでした。

【G-ベクタリング・コントロール】
コーナーでステアリングを切ったら修正舵無しにきれいに曲がりましたので、G-ベクタリング・コントロールの効果かと期待しましたが、コーナー手前でブレーキを踏んでアクセルを踏まずに通過する場合であっても同じような感じでしたので、果たしてG-ベクタリングコントロールの効果によるものなのかわかりませんでした。サスペンションセッティングの変更によるものという可能性もあります。たしかに曲がるのが楽という印象は受けましたが、それは普段フロントベビーなデミオディーゼルに乗っているからそれに比べて楽というのもありますし、アクセラ1.5Lはもともと曲がるのが楽な車ですのでG-ベクタリング・コントロールによるものかどうかはよくわかりません。

【乗り心地】
前期型よりもどっしりとした乗り心地に感じます。G-ベクタリング・コントロールは直進時の安定性には寄与しているようですので、それによるものかもしれません。町中でおとなしく走る分にはすこぶる快適です。デミオディーゼルは後ろが軽いせいで車体の後ろ半分が揺れるのですが、車体の重いアクセラは路面の凹凸をうまくいなしてくれます。軽い車の方が動力性能は良いですが、乗り心地を考えればある程度重い方が有利かもしれません。

【エンジン音との相性】
前期型との違いを感じたのはエンジン音の印象です。アクセラ1.5Lといえば軽快さが取り柄で、アクセルを踏み込めばエンジン回転数が上がって乾いた音になったものですが、アクセルを踏み込んだ際の軽快さが感じられません。むしろ町中では「ぐもー」と籠った音に聞こえました。程度こそ違えど1.2L自然吸気エンジンを積んだ日産ノートのような感じです。アクセラ1.5Lが本来持っていた軽快さとどっしりしたサスペンションセッティングとの整合が取れていない印象を受けました。軽快さを求めるならむしろひらりひらりと曲がっていく前期型の方がふさわしそうです。サスペンションセッティングやエンジン音をこの車のキャラクターに合わせたものにするよう工夫が必要だと思います。

普段は町中でおとなしく走り、たまに遠出するときには高速道路では追越加速時以外は楽に走れて、ワインディングでは軽快に走れるのが理想なのですが、町中での快適さとワインディングでの軽快さをどのように両立させるかが鍵かもしれません。

【スポーツモード】
マイナーチェンジでデミオのガソリンエンジン車と同様にスポーツモードがつきましたので、試してみました。市街地ではエンジン音がうるさいだけですが、山道ではキックダウンしなくてもぐいぐい力強く登っていきます。単に低めのギアで引っ張るだけでありパワーが増大しているわけではありませんが、実用上は便利です。非力な車にはあった方がよい機能です。スポーツモードの切り替えはシフトレバー右前方の低いレバーで行いますが、デミオ同様この場所にあると切り替えが面倒です。昔はこの手のボタンはシフトノブについていたものですが、どうして走行中に容易に切り替えられない仕様になってしまったのでしょう。

しかし、山道を登るならマニュアルモードで低めのギアで固定することでも十分に対処できますし、ストップアンドゴーの多い市街地ではスポーツモードだとエンジン音がうるさすぎですので、スポーツモードが無くてもさほど困りません。1.5Lであっても上位グレードにはパドルシフトがついていますし。

【高速道路】
どっしりとした乗り心地になったこともあり、高速道路といえどもゆっくりおとなしく走る分には快適です。これならディーゼルでなくてもいいかなという気がしました。ただし高速道路を数百km走ったわけではありませんので、長距離走行で疲れにくいかどうかまではわかりませんでした。前期型に乗ったときには追越加速がつらいので高速道路では使いにくいという印象だったのですが、たしかに踏んでもなかなか加速しないのは同じなのですが、前期型のときよりもエンジン音が気にならなくなりました。踏み込んだときにエンジン回転数が上がってエンジン音が大きくなるのは街乗りのときと同様なのですが、高速道路ではロードノイズや風切り音が大きいため、それらの音との組み合わせの問題でしょうか。もしかして高速道路向けにエンジン音をいじった可能性もあります。

重量に比べて非力なエンジンと低いギアが災いして高速巡航には適しませんが、ATの段数が少し増えればローギアードでありながら高速走行に対応できるのではないかと感じました。高速巡航に効いてくるのはボディーとサスペンションであり、追越加速のとき以外はパワーはさほど必要ありません。幸いアクセラはボディーとサスペンションはしっかりしていますので、あとは高速走行時のエンジン回転数を抑えて快適性を増せば高速道路でも使いやすくなるのではないでしょうか。マツダのATは現在は6段ですが、これが8段になれば高速道路でも走りやすくなりそうです。

【ソニックシルバー】
同じくシルバー系のアルミニウムメタリックよりも明るい色になりました。一見するとよくあるシルバーなのですが、よく見るとわずかに水色がかっています。トヨタのシルバーや白の車の隣に駐車すると色の違いがよくわかります。シルバーのような無難な色ですら普通のシルバーにしないあたりがいかにもマツダです。

【類似した車】
どっしりとしたボディーとサスペンション、そこそこクイックなハンドリング、それでいて非力なエンジンと回転数の高いエンジン音の組み合わせに最初のうちは違和感を抱いていましたが、そういえば程度の差こそあれ方向性のよく似た車があることを思い出しました。Miniの一番安いモデルです。

【総評】
前期型はワインディングで楽しく、街乗りではそこそこ走り、高速道路ではつらかったのですが、後期型ではワインディングでは相変わらず楽しく、高速道路でもおとなしく走る分には意外とどうにかなる一方で、街乗りが少しつらくなりました。同じアクセラでも前期型と後期型とで性格が異なるようです。後期型の場合、街乗りでアクセルを踏み込んだ際のエンジン音が改善されればよいのですが。

2017年6月5日月曜日

Skyactiv-G 120とSkyactiv-G 100の性能曲線

欧州ではSkyactiv-G 2.0は出力120PSに抑えられていてSkyactiv-G 120と呼ばれています。Skyactiv-G 2.0の性能曲線をもとに最高出力を120PSに抑えると、だいたい4000回転くらいで燃料噴射を絞ってトルクを落とします。しかしSkyactiv-G 2.0の最大トルクは4000回転未満で発生しますので、4000回転以上回さなければ実用上問題ないということになります。元祖ダウンサイジングターボのVWはシフトチェンジの速い多段変速機を採用して極力ギアを高くすることでエンジン回転数を抑えることで、ダウンサイジングターボが苦手とする高回転域を避けています。マツダもVWとは別のアプローチでシフトチェンジの速い多段ATを採用しています。

公道で普通に運転する上で重要なのは最高出力よりも低回転でのトルクですが、わざわざターボをつけなくても、排気量を大きくしてエンジン制御ソフトウェアをいじって出力を絞るだけでダウンサイジングターボに似たような出力特性を実現できます。エンジン排気量が一回り大きくなっても製造コストに大差なく、ターボが不要な分だけむしろコスト競争力があります。また、自然吸気エンジンの方が高負荷域での燃費が良いというのがマツダの主張です。

1.5LエンジンのSkyactiv-G 100も同様に5000回転以上で出力を絞っていますが、トルクのピークは3000回転くらいですので、これも実用上問題ありません。車体の重いアクセラに1.5Lエンジンを組み合わせると、低負荷時には2000回転くらい、発進時や上り坂の高負荷時には3000回転くらいになりますが、3000回転になる頻度は高いものの、公道を普通に運転している限り4000回転を越えることはありません。Skyactiv-G 100は出力の割に低回転域のトルクが太くなり、1.2Lターボエンジンと同じような出力特性になります。

CX-3ならアクセラよりも100kg軽いので、日本の公道の速度域なら1.5Lエンジンでも十分に見えますし、競合するホンダヴェゼルや日産ジュークも廉価版は1.5L自然吸気ガソリンエンジンを採用しています。表面的な数字を見る限りでは、CX-3にガソリンエンジンの廉価版を投入するとしたら競合と同じく1.5L自然吸気エンジンを採用するのが順当に思えます。

仮にCX-3に1.5Lガソリンエンジンを採用しないとしたら、そのエンジン特性によるものではないかと想像します。アクセラ場合、普通にアクセルを踏むだけだと非力な車でしかありませんが、マツダの1.5Lエンジンは1000回転から2000回転にかけてはトルクがフラットな一方で、2000回転から3000回転にかけて急激にトルクが太くなりますので、加速力が必要になったら積極的にアクセルを踏み込んで3000回転くらいでパワーを引き出して走ると楽しい車です(特に低いギアで引っ張れるMT車ならなおさら)。そういう走りが楽しいのはそれを支える足回りあってのものですが、ひるがえってCX-3を見てみると、町中をおとなしく走る分にはすこぶる快適である反面、無駄に太いタイヤのせいか足回りが犠牲になっていて、積極的にアクセルを踏み込んで走る気になれません。マツダの1.5Lエンジンだと2000回転くらいでパワーが足りないとすぐにキックダウンで3000回転に上がってしまいますので、せわしない印象があります。自らの意思でアクセルを踏み込んで回転数を上げるのでしたら苦になりませんが、普通に走りたいだけなのにむやみにエンジン回転数が上がると非力な印象ばかりが残ります(アクセラ1.5Lもワインディングでは楽しい車ですが、高速道路を走る頻度が高い場合には同様の理由によりおすすめできません)。むしろ低い回転数で余裕を持って走れるトルクの太いエンジンの方がCX-3という車のキャラクターに合っているのかもしれません。

かといって素の2Lエンジンのままでは価格競争力がありません。そこで欧州仕様と同様に120PSに出力を落とせば115PSの1.5Lエンジンと見かけ上の出力はほぼ同じになりますので値段を下げやすいですし、低回転域でのトルクの太いダウンサイジングターボエンジンのような出力特性になります。これなら低負荷時には1000回転くらい、少し負荷が上がっても2000回転くらいで走れますので、ゆったりとした走りが実現できます。2Lエンジン搭載でも200万円台前半くらいに値段を抑えられますので、ある程度は割高感を払拭できるでしょうし、エンジンルームが小さくて大きなエンジンを積めないデミオとの違いも明確に出せます。

2017年6月3日土曜日

CX-3の国外での販売価格

日本でCX-3の2Lガソリンエンジン車が販売されるとしたらどれくらいの値段になるだろうと思って、ドイツとイギリスでのCX-3の販売価格を見てみました。オーストラリアでの販売価格も見てみたかったのですが、郵便番号を入れないと価格が表示されません。米国ではディーゼルエンジン車の販売がありませんので、ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車の価格差を見ることができません。

【ドイツ】
欧州では同じエンジンでも出力によって価格が異なります。安いPrime Lineは120PSの2LガソリンエンジンとMTと15インチホイールのみで、VAT抜きで16,490ユーロでした。下から2番目のCenter Lineでは1.5Lディーゼルエンジンも選択できて、Prime Lineと同じく120PS, MT, 15インチホールだと18,490ユーロ、ほぼ同じスペックでエンジンが1.5Lディーゼルエンジンだと20,490ユーロと2,000ユーロの価格差です。

上位モデルのExclusive Lineだと120PSガソリンエンジンで20,690ユーロ、1.5Lディーゼルエンジンで22,690ユーロとこれも2,000ユーロの差です。120PSのATだと23,490と今度はディーゼルエンジン車よりも800ユーロ高くなります。150PSエンジンはAWDのみの設定で23,490ユーロです。1ユーロ124円で円換算すると292万円です。CX-3はアクセラよりも100kg軽いので、FFでしたら120PSで十分ということなのかもしれません。

最上位のSports Lineだと、120PSガソリンエンジンで21,790ユーロ、1.5Lディーゼルエンジンで23,790ユーロ、円換算で296万円です。150PSエンジンのAWDは24,590ユーロ、円換算で306万円です。ディーゼルエンジンのAWDは25,590ユーロとこれが一番高いです。CX-3はドイツでも結構値が張ります。

単純に価格差だけを見れば2Lガソリンエンジンは1.5Lガソリンエンジンよりも25万円安いことになりますが、比較対象の2Lガソリンエンジンの出力が120PSにスペックダウンしていることに注意が必要です。日本で販売されている2Lガソリンエンジン車は本来の出力である154PSです。

【イギリス】
一番安い120PSガソリンエンジンとMTの組み合わせで17,895ポンド、同じスペックで1.5Lディーゼルエンジンだと19,395ポンドと、1,500ポンドの価格差、約20万円の差です。上位グレードで比較してみても1,500ポンドの価格差でした。

【日本での販売価格を推測すると】
欧州価格をベースにすると1.5Lディーゼルエンジンと2Lガソリンエンジンとの価格差は20万円から25万円くらいに見えますが、日本ではガソリンエンジンの出力を絞っていませんし、MTだからといってATよりも安いわけではありませんので、アクセラと同様にほぼ同じ価格になるのではないでしょうか。300万円の1.5Lディーゼルエンジン車は買いたくないけれども300万円の2Lガソリンエンジン車なら買ってもよいと考える潜在顧客がいれば、その分だけ売れるのかもしれません。

ディーゼルエンジンも最初に比べればだいぶ改良されていて、DE精密過給制御とナチュラル・サウンド・スムーザーがついていれば街乗りでもさほど不便に感じませんし、日本では青信号発進のときですら鋭い加速が求められることがありませんので、ディーゼルエンジンであっても低めのギアで引っ張れば十分に加速できるのですが、同じように加速するのでしたら2Lガソリンエンジンの方が静かに加速できるでしょうから、静粛性を求める層にはアピールしそうです。アクセラよりも車体が軽い分、余裕のある加速ができそうです。また、エンジンが軽くなりますので、重量バランスも改善することでしょう。街乗りでの乗り味は良くなるかもしれません。

1.5Lガソリンエンジン車でも115PSありますので、2Lガソリンエンジン車の120PSとほぼ同じ出力ですが、あくまでも最高出力の数字でしかなく、通常の回転域では排気量なりの差があります。1.5Lガソリンエンジン車の場合、上り坂や高速道路ではエンジン回転数が上がりますので、ディーゼルエンジン車よりもうるさくなり、たとえ安い値段で販売しても安かろう悪かろうになってしまいます。

【他車との比較】
ちなみにデミオの1.3Lガソリンエンジン車は100万円台後半、アクセラ1.5Lガソリンエンジン車は装備にもよりますが乗り出し200万円~250万円くらいです。インプレッサも同じくらいの価格帯です。300万円あったらCセグメントの輸入車の良い車が買えます。200万円台後半で小さくて取り回しの良い車が欲しいということでしたらポロが丁度それくらいです。値引きの状況次第ではもっと安くなります。

CX-3に比較的近いのがMini Crossoverで、現モデルでは安いガソリンエンジン車がありませんが、先代の一番安いモデルは1.6L自然吸気98PSで200万円台後半、マツダの2Lエンジンに近い性能の1.6L自然吸気122PSで300万円台前半でした(マツダのガソリンエンジンは燃費重視なので排気量当たりのパワーが他社よりも控えめ)。CX-3の2Lガソリンエンジンだと同クラスの他の車よりは割高感があるものの、Miniよりは一回り安いかなという程度です。重い車体に98PSのエンジンでまともに走るのかと思いきや、本来122PSのエンジンの最高出力を絞っているだけですので、ややエンジン音が大きいものの日本の公道では問題なく走りますし、さすがドイツ車だけあって時速90kmを越えた辺りから路面に吸い付くような乗り心地になります。高速域での乗り心地の良くないCX-3とは対照的です。

【ホンダヴェゼルの場合】
ヴェゼルはハイブリッド車と1.5Lガソリンエンジン車の2本立てで、前者は227万円~277万円、後者は192万円~239万円と35万円程度の価格差です。売り上げは月によって変動があるものの、だいたいハイブリッド車6~7割、ガソリンエンジン車3~4割で推移しています。たしかにヴェゼルはこのクラスでもっとも売れている車ですが、ガソリンエンジン車のラインナップが無くても今の3分の2くらいは売れていることになります。

CX-3のディーゼルエンジン車はヴェゼルのハイブリッド車の価格に合わせていますので、ガソリンエンジン車を出すとしたら同様に1.5Lガソリンエンジン車をヴェゼルと同じ値段で売るものかと思いきや、2Lエンジンで出すとなると、1.5Lエンジンでは十分でない理由が何かあるのかもしれません。どのみち2Lエンジンも1.5Lエンジンも製造コストはさほど違いませんので、ヴェゼルのガソリンエンジン車と同じ値段で2Lエンジンをぶつけてくれば勝算ありということなのでしょうか。その場合、国外での販売価格からすれば安すぎるということになるでしょうが、日本では競合車種に値段を合わせるケースが多いので、戦略的な値付けはあり得ます。欧州仕様と同様に120PSに絞ればマツダ内での整合性も取れそうです。