2016年8月13日土曜日

デミオディーゼルとCX-3の比較

両方を乗り比べる機会がありましたので、両者の違いを記してみます。まず、おおざっぱに比較してみると以下のような違いを感じます。

【CX-3】

  • 後席の乗り心地を重視したサスペンションセッティング(車体全体が上下動する)
  • 低速域で乗り心地が良い
  • 混雑する大都市近郊の道路で使い勝手が良い
  • 追従型クルコンあり
  • ゆったりしている
  • エンジン回転数は高め(アクセルを踏み込むとすぐにシフトダウンする)
  • 穏やかに走る
  • 窓の天地寸法が小さいため車格以上の囲まれ感がある
  • 着座位置が高めでその分重心も高め
  • 車体が重い
  • 見た目が立派
  • 車輪が大きそうに見える
  • タイヤが太い
  • 3ナンバー300万円クラス
  • かけられるコストに余裕がある


【デミオディーゼル】

  • 2人乗車向けに最適化されたサスペンションセッティング(前がどっしりしていて後ろが跳ねる)
  • 高速域で安定性が良い
  • 交通量の少ない良い地方の道路で使い勝手が良い
  • クルコンは速度設定のみ
  • どっしりしている
  • エンジン回転数は低め
  • 元気よく走る
  • 窓が大きく開放感があり、狭い路地でも見通しが良い
  • 着座位置が低め
  • 車体が軽い
  • 見た目はコンパクトカー
  • 車輪の見え方は実際の大きさ相応
  • タイヤの太さは車のサイズ相応
  • 5ナンバー200万円クラス
  • かけられるコストに余裕が無い

CX-3の売り文句としては以下が挙げられますが、CX-3の優位というよりも、CX-3の仕様上不利になった部分を補っているという印象を受けます。

  • 剛性の向上→車体が大きくなった分を補う?
  • 遮音性の向上→エンジン回転数が高くなった分を補う?
  • 前席を左右に寄せて後席を中央に寄せることで後席からの見通しを改善→窓の天地寸法が小さくなった分を補う?
  • リアサスペンションのダンパーにアクセラ用のものを使用→後席の乗り心地を重視するため?

ベースが同じであっても味付けを変えることで異なる方向性の車に仕上がっているという印象を受けます。

一方、CX-3とデミオディーゼルで共通する部分もあります。

  • ホイールベース
  • ギア比(CX-3の車輪径が大きい分は最終減速比で調整されている)
  • ナチュラルサウンドスムーザー
  • DE精密過給制御
  • フラットワイパー
  • シャークフィンアンテナ
  • 室内寸法
  • 内装の質感
ただ、これらのうち装備についてはデミオがCX-3のおさがりを活用した結果として共通になっているだけであって、CX-3の装備が見劣りしているわけではありません。内装の質感についてもデミオはアクセラのおさがりを活用しているためであり、プラスチックのダッシュボードを除けばCX-3の内装の質感が見劣りしているわけではありません。単にデミオディーゼルにお値打ち感があるだけです。


おそらくCX-3を買うのは以下のようなプロファイルの人ではないでしょうか。

  • 子育てが終わって生活に余裕が出てきた
  • 300万円3ナンバーの車を買える
  • 普段は子供が乗らないので大きな車は必要ない
  • しかし車格が落ちるのは嫌なので内装と乗り心地には相応のものを求める
  • 都市部で生活している

Bセグメントのくせに高いとかデミオと比べて割高というのは、比較すればたしかにそうかもしれませんし、車で見栄を張る必要の無い人にとってはそうかもしれませんが、予算ありきで車を選んでいる人にとっては安い車は眼中になく、高くて高そうな車であることに意味がありますので、そのような比較はあまり重要でないのではないでしょうか。同じ予算のCセグメント車と比較すればCセグメント車の方がお値打ち感があるように見えるものの、いまどきのCセグメント車は次第に大型化していて都市部での取り回しがあまり良くありませんし、見た目も車格相応です。

乗用車ベースの「SUV」ブームというのはつまるところ、車格以上に立派そうに見える車が欲しいということであり、同じ車格の乗用車よりも見劣りするミニバンが縮小傾向にあるのと表裏をなしているように思えます。アルファードは高価な車ですが、だからといってクラウン以上に立派に見えることはありません。たとえ偉そうなフロントグリルにしても却って下品なだけです。しかしハリアーはベースとなるカムリよりも立派に見えます。車格以上に立派な車は自動車メーカーにとってはコスト以上に高く売れる車であり、需要サイド供給サイド双方の利益になりますので、もうしばらくはSUVブームが続くのではないでしょうか。

2016年8月9日火曜日

レンタカーでCX-3に乗ってみました

今までCX-3に乗ったことがありませんでしたので一度は乗ってみたかったのですが、このたびレンタカーを借りたらCX-3をあてがわれました。

【個体】

  • 2016年6月登録で走行距離2899kmと、ほぼ新車。レンタカーの割に距離が伸びないのは料金が高くて借り手が少ないのかもしれません。
  • 年次改良後ですのでナチュラルサウンドスムーザーやDE精密過給制御がついています。
  • 駆動方式はFF。
  • グレードはレンタカーですので一番安いXDで、マツダコネクトやフルオートエアコンがついていますが、ヘッドアップディスプレイやパドルシフトはついていません。
  • シートはファブリック。
  • タイヤは215/60R16でブリジストンのTuranza T001。
  • 色はセラミックメタリック。


【結論】
  • 長距離移動ではすこぶる快適
  • 1.5Lでも動力性能に不足なし
  • 年次改良で導入された技術のうちDE精密過給制御は効果がありそう
  • サスペンションはいまいち
  • 車内はデミオとほぼ同じ

【動力性能】

  • デミオと同じくらいハイギアードでデミオよりも一回り重いので、おとなしめの走りかと思いきや、よく加速しました。
  • 対面通行道路での追越加速でも安心です。
  • ゆっくり発進する際には2000回転でシフトアップしてから1500回転まで落ちますが、少し多めにアクセルを踏み込むと3000回転でシフトアップして2000回転まで落ちます。
  • しかしそれでも最大出力の出る4000回転に達したことはほとんどありませんでした。
  • シフトアップを遅らせて回転数を増やしているのとデミオよりも過給圧が高いため、動力性能に不足はありません。
  • DE過給制御も効いているようで、青信号発進時も追越時も加速の不足を感じる場面はありませんでした。意図した通りに加速すれば加速感は良くなりますので、燃費と両立させるうえでもよくできた仕組みだと思います。
  • デミオディーゼルの場合、ある程度踏み込んでいくといきなりターボが効いてドッカンと異次元加速するのですが、今回乗ったCX-3は、DE精密過給制御のおかげか、あるいは最初からターボの効く回転数でエンジンを回しているのか、アクセルを踏んだら踏んだ分だけ加速します。1.5Lディーゼルエンジンは最初から高めの回転数で回す方が使いやすいのかもしれません。


DE精密過給制御は年次改良後のデミオにも採用されていますので、走りについては年次改良後のデミオディーゼルでも同様で、デミオの方が車体が軽い分エンジン回転数が少なめなのではないかと推測します。

【ノイズ】
ナチュラルサウンドスムーザーのおかげでディーゼルエンジン特有のカラカラ音はほとんどせず、ふた昔前のガソリンエンジンないしいまどきの3気筒エンジンのような感じです。もともとエンジン回転数が高めですので、一旦走り出してしまえば低い回転数のときの音は気になりません。スバルの水平対向エンジンも独自の音がしますので、エンジン音に関しては車ごとの個性と割り切ればさほど問題ないのではないでしょうか。たしかに好みの問題とはいえ、「ディーゼルエンジンの音がするから買わない」と決めつけるのは勿体ないと思います。

ロードノイズはデミオよりも静かに感じました。タイヤの違いによるものでしょうか。

【ステアリング】
年次改良により、センター付近で反応しやすくなりました。そのせいか、高い速度域で直進時にふらつきます。G-ベクタリングコントロールが導入されれば改善するかもしれません。

【サスペンション】
状態の良い舗装道路を低速で走る分には乗り心地が良いのですが、高い速度で荒れた路面を走ると路面に足を取られます。年次改良の結果、後ろだけが跳ねることはなくなったようですが、その代わり車体全体がふわふわ跳ねる感じです。動力性能に不足はなくても、サスペンションがついてこられない感じです。高い値段と高そうな雰囲気を持っていても、所詮はBセグメントなのだと思いました。高速道路を走るCX-3がどうして軒並みおとなしいのだろうと思っていたのですが、動力性能の問題ではなくサスペンションの問題のようです。

ネット上ではサスペンションを絶賛する声が多く、一体これはどういうことだろうかと思ったものの、たしかに低めの速度域での乗り心地は上々です。大都市近郊の高速道路や一般道なら車が多くてあまり速度が出ませんので、乗り心地の良い車だと思います。しかし街乗り中心なら1.5Lディーゼルエンジンよりも海外仕様にあるような2Lガソリンエンジンの方が扱いやすいのではないでしょうか。

コーナリングについては、デミオと前後の重量がさほど変わらないはずですが、特にフロントヘビーに感じることはありませんでした。これもサスペンションセッティングの影響でしょうか。エンジン重量が変わらないまま車体が一回り重くなっていますので、前後の重量バランスは若干改善しているのかもしれません。また、後述の通り太いタイヤを履いていますのでグリップ力が大きいというのもあるかもしれません。

【タイヤ・ホイール】
16インチホイールで扁平率60%というのはデミオと同様ですが、CX-3の方がタイヤが太い分、空気のクッションが多めです。デミオの16インチだと高速安定性は良好なのですが、CX-3の場合、16インチだとふわふわします。18インチだともっと安定するのかもしれませんが、街乗りで出足が悪くなったり乗り心地が悪くなったりする可能性もあり、乗ってみないとわかりません。

タイヤ幅は215mmと、この大きさ重さから導かれる最適なサイズよりも太目です。デミオは15インチ16インチともに185mm、アクセラは16インチホイールで205mm、18インチホイールで215mmです。タイヤが太いとグリップ力は増しますが、路面の僅かな凹凸にも反応して横方向のグリップ力が発生してしまいますので、直進安定性が損なわれます。タイヤ外径の大きさもあいまって、操縦安定性はあまりよくありません。転がり抵抗についてはタイヤの選択次第ですが、同じ条件での比較では不利に作用します。せめて16インチホイールの場合はタイヤ幅をアクセラと同じ205mmにした方がよいのではないでしょうか。太いタイヤの見栄えを重視する向きもあるようですが、CX-3の場合、タイヤは太ければよいというわけではないお手本に見えます。旋回性能重視のスポーツカーならまだしも、街乗りのための車に果たして太いタイヤが必要なのでしょうか。

【外観】

  • デミオとほぼ同じ大きさとは思えないほど迫力があります。
  • よく見るとホイールベースとホイールサイズはデミオと一緒で、タイヤ周囲の黒い縁取りでタイヤを大きく見せています。最近はこういう大きそうな車輪が流行なのでしょうか。
  • セラミックメタリックはよく似合っていると感じました。黒い縁取りとの相性の良い色なのでしょう。

【室内】
  • デミオXD Touringとほぼ同じです。CX-5の方が着座位置が5cm高いのですが、運転中にはほとんど違いを感じませんでした。運転中に目の前に見えるダッシュボードがプラスチックなのはデミオと同様です。
  • 窓の天地寸法が小さいせいか、デミオと同じ室内スペースながら落ち着いた印象を受けました。
  • 座面が高いおかげで乗降は楽でした。
  • 後ろの窓ガラスがアクセラ並に小さいです。その代わり、雨の日に走ってもデミオよりも車体後部が汚れにくいです。
  • 後席は天井が高くてデミオよりはましですが、大人が常用するスペースではありません。

【燃費】
いつも通り燃費のために我慢することは一切なく、高めの速度で走ったところ、平均燃費は20.0km/Lでした。流れの悪い幹線道路をゆっくり走っているときは24km/L強でした。デミオディーゼルで同じ道を走ってもおそらく同じくらいの燃費だと思います。デミオよりも車体が重い割には良い数字ではないでしょうか。

【他車との比較】
CX-3単体としてはおとなしく走る分にはすこぶる快適な車なのですが、同じ1.5Lディーゼルエンジンを積んでいるデミオやアクセラ15XDと比較すると、デミオの方がほぼ同じ質感で安いですし、16インチホイールなら高速安定性にすぐれているように感じます。アクセラ15XDですらCX-3よりも安く、それでいて後席は広いですし、サスペンションにもお金がかかっています。軽快さを取るならデミオXD TouringのAWD、車格なりの質感や足回りや広さを取るならアクセラ15XDを選びたくなります。

デミオディーゼルを出す前にCX-3を出していれば絶賛されたかもしれませんが、デミオディーゼルが同じエンジン、ほぼ同じ内装で先に出ましたので、デミオのお値打ち感が先立ってしまいます。デミオディーゼルのAWDでもCX-3のFFよりも安いです。