2016年1月15日金曜日

i-DMのデメリット

i-DMのメリットを列挙してみたものの、それだけでは公平でありませんので、せっかくですのでi-DMのデメリットについても思いつくままに書いてみたいと思います。

  1. 当然のことながら「ヘタクソ」と連呼されれば気分が悪い
  2. 車の不出来のせいで「ヘタクソ」呼ばわりされるともっと気分が悪い
  3. 走る・曲がる・止まるの基本のできている車かどうか明るみに出てしまう
まず、1.については初期状態では1st Stageですので、普通に運転していれば緑点灯して当然、時折青点灯させていればいつの間にか2nd Stageに昇格していますので、よほどのことが無い限り、いきなり「ヘタクソ」と連呼されることはありません。白点灯が気になってくるのは2nd Stageで点数が上がってきて、3rd Stageに進めそうでなかなか進めないあたりからでしょうか。ある程度慣れ親しんでくれば「なぜ白点灯させてしまったのか」を考えて改善するようになりますが、i-DMの考え方を理解し、その考え方に沿った運転を目指そうとしない限りは単に「ヘタクソ」と連呼されて気分が悪いだけだと思います。

2.については結構腹が立ちます。今の乗っているデミオディーゼルですと、停止時の揺り戻しを無くすのがなかなか難しくて、最初から減速度を低めにすることで対処しています。しかし、もう少しのところで早めにエンジンが止まってカックンとなったりすると白点灯します。もっとも、停止時の挙動に対する評価が厳しくなったのはあ4th Stageからですので、普通に乗っている分にはあまり影響ないでしょう。あるいは、トルクが足りないなと感じてアクセルを踏み増したら白点灯とかもあります。「それは車のトルクや変速機の制御が良くないからではないか」という気がするのですが、白点灯させるのもしゃくですので、いろいろ工夫せざるを得ません。車の癖を理解した上でなだめすかすことも大切なのかもしれませんが、それ自体はあまり運転の楽しさに直結しないのではないかと感じます。

3.については、加速・減速・舵を意図した通りにコントロールできなければそもそも滑らかな運転になりようがなくて、例えば少しアクセルを踏み込んだら急加速する車で「急加速するな」と言われても、「それは車の側の問題なのではないか」と思いますし、同様に少しブレーキを踏んだだけでカックンとブレーキが効き過ぎる車に対しては「まずそのブレーキを何とかしろ」と言いたくなります。同様に、ステアリングフィールが希薄で、どれだけハンドルを切ったらどれだけ曲がるのかわからないような車で「ちゃんとハンドルを切れ」と言われても、「だったらそれに必要な情報をよこせ」と言いたくなります。i-DMによってドライバーが運転操作を気にするようになれば、ドライバーが意図した通りにリニアに反応する車かどうかが明るみに出てしまいます。

車の出来に自信のあるメーカーでしたらi-DMを導入できるでしょうが、そうでないメーカーはi-DMによってドライバーを刺激したくないと考えるかもしれません。マツダがi-DMを導入した際にそこまで自信があったのかよくわかりませんが、数百万円払って車を買ったお客様をヘタクソ呼ばわりするだけでなく、自分の所の車の出来不出来についても容赦無い批判を浴びせられる可能性のあるシステムをよく導入できたものだと思います。

普通のドライバーだって車の出来不出来に関してはそれなりに感じるところがあって、単にいちいち口に出さないだけですが、i-DMなんて導入しようものなら、普通のドライバーも公然と車の出来不出来について口に出すようになるのではないでしょうか。特に車のネガティブな部分が拡散しやすくなると思います。日本の自動車メーカーがそれを乗り越えれば日本のクルマづくりが大きく変わる可能性がありますが、どうなるのでしょう。

2016年1月14日木曜日

i-DMのメリット

i-DMのメリットを思いつく限りで並べてみると、以下の通りです。

  1. 無駄な動作が減ることで、結果的に燃費が良くなりかつ速くもなる
  2. Gの変化が滑らかになることで、ドライバーや同乗者にかかるGも滑らかになり、長時間運転しても疲れにくくなる
  3. 急な運転動作を回避するために、車間距離を取って周囲の状況に注意して先読み推量するようになるので、安全運転になる
  4. 白点灯が多いのはその速度で走るための実力が伴っていないということなので、実力に見合った速度に落とすようになり、安全運転になる
  5. 上達すれば車にかかるGを自在にコントロールできるようになり、運転が楽しくなる
  6. そのために、車に乗る機会が増え走行距離が伸び、運転経験が蓄積する
ここで重要なのは、実力の裏付けなく小手先のテクニックで点数を上げたりステージを上げたりするだけでは上記のメリットが実現しないことです。点数やステージは結果に過ぎませんので、何のために滑らかな運転をするのかを意識しないと本末転倒です。

最初からバスドライバー並のドラテクの持ち主でしたらi-DMのおかげで上達する要素はあまり無いかもしれませんが、自分を含めて下手な人がi-DMに叱咤激励されながら上達していくと違いを実感できます。自分の場合、あいにく5.の境地には達していませんが、1.2.3.4.6.は実感します。メーカーにとっては6.は新車販売の増加要因になりそうです。5年で20万kmとか乗ったらさすがに買い換えるでしょうから。3.と4.は交通安全にとても重要な要素です。すべての車にi-DMがつけば安全かつ円滑な交通に寄与するのではないかと思うものの、あいにくマツダのシェアではあまり影響力がありません。トヨタにi-DMの技術を供与したら日本の道路状況が激変するのではないかと期待します。また、多くのドライバーが自分の運転の仕方を自覚するようになり、車の走る・曲がる・止まるという基本性能を気にするようになることで、日本の自動車市場も変わってくるのではないかと期待します。

よくSkyactivのマツダ車に乗ると車に乗る機会が増えると言われますが、車自体の出来もさることながら、車の性能を引き出すためにはドライバーの技量も必要です。せっかく出来の良い車であっても下手な運転をしたら車が可哀想です。我が身を振り返ってみると、下手なドライバーの特徴はまず自分が下手だという自覚が無いことです。次に、「どういう運転をしたいか」という方向性が欠如していることです。

i-DMはまず下手な運転に対して「ヘタクソ」と言い切ることで、下手なドライバーに対して下手であるという自覚を促し、それから何がどう下手なのかをランプの色で示し、さらに、「急アクセル・急ブレーキ・急ハンドルを控えて、Gの変化が滑らかな運転をする」という明確な指針を示します。あとは、どうすれば急アクセル・急ブレーキ・急ハンドルをしなくて済むのかを考えながら運転し、理想の運転に近づくべく努力を続ければ、徐々に上達していきます。走り慣れた道を空いているときに走れば青点灯させることは容易ですが、先読み推量の難しい混雑する道や初見の道であっても青点灯させるためにはそれなりの練習が不可欠です。

i-DM以前の自分の運転とi-DM以後の自分の運転とを比較すると、もしi-DM付の車に乗らなかったらきっと上達するのはかなり難しかったのではないかと想像します。i-DMの無い時代に上達した人は一体どうやって上達したのでしょうか。サーキットや峠で速く走りたいという動機があればまだしも、車を足として使っている人が公道で普通に走るだけで、どうやって理想の運転を思い描けばよいのでしょう。

滑らかな運転というのは一見これといった特徴を見出しにくいため、何がどう上手なのかよくわかりにくいですが、いざ自分が同じようにやってみようとしてもなかなか思い通りにならないことに気づいて、そこに彼我の差を見出すわけです。本当に上手な人ほど難しいことをさも簡単そうにやってのけてしまうものです。

また、普段i-DM付の車を運転しない人にi-DM付の車を運転してもらうと、運転経験豊富であっても結構白点灯させるものです(上手な人でしたら勘所さえわかればすぐに適応しますが)。自己流でそこそこうまいと思っていても、Gの変化を可視化してみると意外とそうでもなかったりします。

そういう意味ではi-DMというのは画期的なシステムだと思うのですが、短期的には白点灯するたびに気分を害しますので、それを乗り越えた先にあるものを知ってもらうことが普及の鍵になるのではないかと思います。

2016年1月11日月曜日

i-DMの点数が下がりました

i-DMが4th Stageに昇格して以来ずっと4点台半ばをうろうろしていて一向に進歩しないのですが、先日高速道路を使って移動した際にi-DMの点数が下がりました。たしかに混雑していて走りにくい道だったとはいえ、3.0点とか出たり、平均点が4点を下回ったりすると、随分下手になったものだと感じました。いつの間にか5th Stageにでも昇格していれば点数が下がるでしょうが、むろん昇格するほどの高得点を取ったことはなく、まぎれもなく4th Stageのままでした。

大幅に減点されるのは主にアクセルを踏みすぎているときです。急ハンドルや急ブレーキは一瞬ですが、急アクセルは長時間持続するためです。普通にアクセルを踏み込んで加速しているはずなのになぜか長時間白点灯することがあり、その割に急加速した形跡もなく、一体どうしたのだろうか、センサーがおかしくなったのだろうかと感じました。一つ心当たりがあって、右足の踵の位置がアクセルペダルの根本よりも少し左にずれていました。この位置でいつもと同じ調子でアクセルペダルを踏み込むと、どうやら踏みすぎてしまうようです。踵の位置をアクセルペダルの根本に置くと、急アクセルでの減点は激減しました。この踵の位置でブレーキを踏むと右足の先を内側にひねることになり、ブレーキを踏む頻度が高いと膝に負担がかかるのですが、アクセルを踏むときとブレーキを踏む時とで明らかに足の向きが違うため、これなら踏み間違えることはなさそうです。

しかし、上り坂でパワーが足りないなと思って少しアクセルを踏み込むと、急アクセルで白点灯することが何度かありました。Skyactiv-Driveは下り坂でアクセルペダルを離すと下り勾配を検知して自動でシフトダウンしてエンジンブレーキをかけるのですが、上り坂を検知してもアクセルペダルを踏み込まない限りシフトダウンしません。車のパワーが足りないせいでヘタクソ呼ばわりされるのは気分が良くないですが、きっと車をなだめすかすことも実力のうちなのだろうと思っておもむろにシフトダウンすると、今度は加速はしたものの急加速で白点灯しました。それならばということで、少しアクセルを緩めてシフトダウンして徐々に踏み込んだら、やっと白点灯しないようになりました。トルクが太いはずのディーゼルエンジン車なのにどうしてこんな面倒なことをしなければならないのかよくわかりませんが、そういうときには3速固定とか2速固定とかにすると走りやすくなります(高低差の無い渓谷沿いのワインディングでも同様)。

なお、帰りは道が空いていて走りやすかったこともあり、久しぶりに5.0点が出ました。アクセルで青点灯の時間を確保できればハンドルやブレーキで多少減点されても容易に取り返せるからですが、ハンドルやブレーキで減点されている限りまだ実力が伴っているとはいえません。

2016年1月8日金曜日

欧州市場におけるSkyactiv-Gエンジン

欧州でのデミオの販売価格を見たついでにアクセラの販売価格も見てみたのですが、日本での売り方と随分違うことが見て取れました。最も顕著なのは出力別に価格をつけていることです。

日本では自動車税のかねあいもあり1.5Lエンジンとか2Lエンジンといった売り方をしていますが、ダウンサイジングターボ全盛の欧州では排気量は全く重視されておらず、120psに設定されたエンジンならSkyactiv-G 120、100psに設定されたエンジンならSkyactiv-G 100といった分類になっています。2Lエンジンを減格した120psエンジンと1.5Lエンジンが本気を出す120psエンジンとでは低回転域でのトルク・出力特性が全然違うのに、そんな大雑把な売り方で大丈夫なのだろうか心配になりますが、とにかく、そのような市場になっているようです。

同じエンジンでも制御ソフトウェアの設定を変えて減格することで複数の出力のエンジンを提供できますので、少ない種類のエンジンで多様な商品を提供することができ、生産効率が良いです。排気量が重視されないおかげでマツダのように頑なに自然吸気式ガソリンエンジンを作り続けているメーカーであっても、出力さえ減格すれば低排気量の車と同じように売ることができます。

2LエンジンはRON95のガソリンのもとで本気を出せば165psまで出せるのですが、通常仕様では120psに減格されています。1.5Lエンジンは100psが主流で、RON91の圧縮比13でも115ps出せる割には控えめです(ちなみにゴルフの廉価版の1.2Lターボは86psと105ps、中位グレードの1.4Lターボで122psと140ps)。デミオ用の1.5Lエンジンはさらに90psと75psで売られています(ちなみにポロの1.2Lターボも廉価版では90ps、1L3気筒ターボで95ps)。ストップアンドゴーが少なければ低回転域でのトルクが太ければ十分で、公道では俊敏さは必要ないため、そのような減格が可能なのでしょう。本来の最大出力を出すグレードは贅沢品のスポーツグレードという位置づけです。欧州でディーゼルエンジン車のシェアが高いのも、道路との相性だけでなく税制上の理由があるのかもしれません。それに対して排気量や重量で税額が決まる日本では出力が大きくても税額に影響が無いため、エンジンが出せる最大出力に設定しているようです。

もし日本でも欧州と同様の売り方ができれば、同じエンジンを使って「1.5Lエンジンを100psに減格して1.3Lエンジンのクラスで売る」とか「2Lエンジンを120psに減格して1.6Lクラスで売る」みたいなことができるのかもしれません(日本には自動車税の壁があるせいで0.5L刻みの区分を越えるのは難しいですが)。高価なターボやディーゼルエンジンを使わなくても容易に低回転域のトルクを太くすることができますし、自然吸気エンジンですのでレスポンスも良好です。日本でもハイブリッド車の普及に伴い、必ずしも排気量が車格を表すわけではありませんし、また、ハイブリッド車に搭載されるガソリンエンジンは排気量の割に出力が小さめですので、もはや排気量だけを見ても実際の出力はわかりません。もっとも、「1.5Lで約100psで低回転域でトルクの太いエンジンが欲しい」なんて言おうものなら、「だったらディーゼルを買ってください。お買い得ですよ」と言われそうですが。

2016年1月2日土曜日

デミオ15S Touringは可能か

デミオ13S Touringの発売が発表されましたが、高速道路メインならパワーに余裕のある1.5Lエンジンの方が、同じパワーやトルクを出すのに必要なエンジン回転数が少ない分だけ走りやすいのではないかと思いました。日本仕様には1.5Lガソリンエンジン車がありませんが、海外向けには1.5Lガソリンエンジン車がありますし(しかも欧州仕様だとRON95のガソリンに合わせて圧縮比14)、日本向けでも15MBならありますので、1.5Lガソリンエンジンを積むこと自体は物理的には可能です。1.3Lエンジンと同じ重量ですし、製造コストもほぼ同じです。

1.5Lガソリンエンジンを積むことで期待されるメリットは以下の通りです。

  • 最終減速比を下げて高速域でのエンジン回転数を落として静粛性を向上することができる(15MBは逆に13SのMT車よりも最終減速比を上げてスポーツ走行向きになっています。そのため15MBのJC08モード燃費は13SのMT車よりも1割ほど悪化していますが、反対に最終減速比を下げれば燃費はさほど悪化しないのではないかと推測します)
  • パワーの余裕を活かして16インチホイールを履いて高速安定性を高めることができる
  • 同じ1.5Lエンジンを搭載するアクセラよりも200kg軽量なので俊敏に走る(前-50kg、後-150kgくらい?)
  • 1.5Lディーゼルエンジン車よりもフロントが軽いので曲がりやすい(15MBと13Sは同じ重量なので、ディーゼルエンジン車よりも前輪への荷重が100kg軽い)
  • 1.5Lディーゼルエンジン車よりもエンジンの特性上俊敏に動くので街乗りでも快適
  • 1.5Lディーゼルエンジン車のような圧倒的なトルクは無いものの、高速巡航のみに特化したXD Touringに比べて日本の公道の広い範囲で素直で扱いやすい
DEデミオ時代には1.5Lエンジン車は全然売れませんでしたが、DJデミオはDEデミオの4ATに対して6ATですので高速域で余裕がありますし、内装や静粛性も向上していますので、高速域向けのグレードがあってもよいのではないかという気もします。

しかし、本体カタログ価格ベースで13Cが1,350,000円、同じ装備で1.5Lエンジンの15MBが1,501,200円(1.5Lエンジンで+15万円)、13Sが1,458,000円、13S Touringが1,684,800円(装備の差で+20万円)、XDが1,782,000円(ディーゼルエンジンで+30万円)、XD Touringが1,965,600円という値付けになっており、1.3Lエンジンと1.5Lエンジンとの間の価格差は15万円に設定されています。今のマツダは正価販売を旨としており、1.3Lエンジンの値段で1.5Lエンジン車を売ったりしないでしょうから、15S Touringの価格を13S Touringよりも15万円高い183万円に設定したとすると、
  • 同じ装備で1.3Lエンジンでもよしとすれば15万円安い。15万円の差を感じるほどの走りの差なのか。1.3Lエンジンでも公道で流れに乗って走ることは可能。性能曲線を見比べてみても1.5Lだと1.3Lよりもパワーとトルクが10%増しで相似拡大したような特性。
  • 装備を減らせばXDをもっと安く買うことができて、走りはもっと良く、特に高速巡航では快適。XDは15インチホイールなので出足が軽く街乗りでも快適。
  • あと15万円足せば同じ装備でXD Touringを買えて、高速道路ならこちらの方がはるかに楽。
という意思決定に直面します。このような状況で15S Touringを買う人がいるかといえば、たしかに難しいかもしれません。デミオのガソリンエンジン車は素直でバランスが良いのが長所ですが、ディーゼルエンジン車の圧倒的なトルクのような際立ったものが無いために、他車との比較において抜きん出ることが難しいです。アクセラ1.5Lと比べても淡白な味付けになっています。

しいていえば、ディーゼルエンジン車でも4WD車なら前後の重量バランスが良いですが、2WD車よりも20万円高くなりますので、15S TouringとXD Touring 4WDとの価格差は35万円です。しかし4WD車を必要とするような寒冷地に住んでいればガソリンエンジン車の4WDとの比較になりますので、価格差が縮小します。

それにしても、1.5L自然吸気ガソリンエンジンと1.5Lディーゼルターボエンジンとの価格差が15万円となると、実はディーゼルエンジンの価格競争力はなかなかのものではないかと思います。後処理装置が不要なSkyactiv-Dならではでしょう。一方、排気量は同じ、圧縮比もほぼ同じで、両方ともアルミブロックですので、ターボ等の補機を除いた部分の重量はほぼ同じのはずなのですが、実際にはディーゼルエンジンの方が100kg重く、どの部分が重量増に効いているのか気になります。

1.3Lガソリンエンジン車はヴィッツやフィットに合わせた価格設定ですし、ディーゼルエンジン車はアクアやフィットハイブリッドに合わせた価格設定で、かつマツダのマーケットシェアのもとでこれらの相場に影響を及ぼすことは難しいでしょうから、与件とせざるを得ません。他に比較対象があるクラスですと、経済的に折り合いそうにありません。

他社との比較でいえば1.5Lクラスに属しますが、カローラはおろか日産ノートのスーパーチャージャー付と比べても室内や荷室が狭く、しかもノートの最上位車種メダリストよりも高いです(値引きを考慮すればもっと価格差がつくことでしょう)。では走りだけでどこまで勝負できるかというと、たしかにアクセラ1.5Lに比べれば重量が小さい分だけパワーに余裕がありますが、ガソリンエンジン車だと他車と比べて圧倒的な差があるわけでもなく、しかも同じ1.5Lクラスにデミオディーゼルがありますので、走りに圧倒的な差を求める人はディーゼルエンジン車を求めることでしょう。結局、ディーゼルエンジン車には無い俊敏さや曲がりやすさを活かせる用途というと15MBのようなスポーツ走行向けということになってしまいそうです。

せっかくですのでUKのサイトを見てみたところ、115psモデルは日本の15MBに相当するMTの"Sport"のみで15995ポンド。90psのMTの"Sport"は14995ポンドですので、価格差は約18万円。90psのATの上級グレードとディーゼル(AT)の価格はそれぞれ16595ポンドと17395ポンドで、価格差は約14万円。Apple to appleで比較すると、ディーゼルエンジンはなかなかお買い得ですし、場合によっては1.5Lガソリンエンジンよりも安いです。1.5Lの上級グレードが難しいのは日本の市場だけではなさそうです。

UKも日本と同様に公道の速度域が低いので、ではアウトバーンのあるドイツならどうかと思って見てみました。すると、上級モデルのExclusive-Lineの6MTで105psのディーゼルが17490ユーロ、115psの1.5Lガソリンエンジンが18890ユーロと、なんとガソリンエンジンの方が18万円ほど高いです。なお、90psの1.5Lエンジン車は15390ユーロ、75psに減格したモデルだと12890ユーロです。欧州ではエンジン出力に応じて税金や保険料が決まるため、節税のために高回転域の最高出力のみ減格している車が売れ筋で、高出力の車は高い税金や保険料を払える人向けに本体価格も高く設定される傾向があり、結果的にディーゼルエンジンよりも高出力の1.5Lガソリンエンジンの方が高くなっているようです。115psのガソリンエンジン車はドイツでもスポーツグレード扱いのようです。ドイツでは日本と同様にガソリンよりも軽油の方が安いため、ディーゼルエンジン車はお買い得です。

ドイツといえばPoloはどうかと思って見てみると、HighlineのMTの場合、105psの1.4Lディーゼルで19400ユーロ、110psの1.2Lターボで17925ユーロ、同じく110psの1L3気筒ターボで18075ユーロとなっています(なぜか1L3気筒の方が高い)。90psの1.2Lターボだと16850ユーロです。さすがにこちらはディーゼルエンジン車の方が高いです。後処理装置を含めた補機類の多いディーゼルエンジンの方が高価なのが普通で、後処理装置不要のマツダのディーゼルエンジンのコスト競争力の高さが伺えます。