2017年2月14日火曜日

2Lクラスのミニバンに1.5Lディーゼルエンジン搭載は可能か

日本のファミリーカーのボリュームゾーンは2Lクラスのミニバンで、トヨタならノア・ヴォクシー、日産ならセレナ、ホンダならステップワゴンとどれも売れています。1500kg前後の重い車体を2Lのエンジンで引っ張っており、出力150ps、トルク200Nmくらいです。このクラスのミニバン向けに1.5LディーゼルエンジンをOEM供給できないものでしょうか。あいにくマツダはミニバンを作るのをやめてしまいましたので、ミニバン向けにエンジンを供給してもマツダの車種と競合しません。むしろ日本専用車種のミニバンを作る体力の無いマツダに代わってノアやヴォクシーをOEM供給してもらってもよいくらいです。

1)1.5Lディーゼルエンジンはミニバン向けなのではないか

パワーは105psと控えめですが、トルクは270Nmもあり、ミニバンの重い車体を引っ張る上で不自由はありません。また、ミニバンは重心が高いですし、同乗者が快適に乗れるよう運転するものですので俊敏さは必要ありません。しかも日本専用のミニバンでしたら日本の公道の速度域で走れる性能があれば十分ですから、ローギアにして低速域の加速を良くすることも可能です。

2)長距離巡航ではやはりディーゼルエンジンの方が快適

子連れで長距離を移動するときに公共交通機関を使うのは大変です。重い荷物を持ってさらに子供を連れて駅まで歩いたり、周りに気兼ねしたりするくらいでしたら、多少時間がかかっても車で移動する方が楽です。自分の車の中でしたら子供が泣こうが騒ごうが周りに迷惑がかかりません。どうせ長距離を運転して疲れるのは父親だけですし。また、公共交通機関では乗車人数分の運賃料金がかかるのに対して車でしたら何人乗っても高速代と燃料代は一緒ですから、大勢で移動するなら車の方が割安です。そのような用途でミニバンを使うのでしたら長距離巡航に適したディーゼルエンジンの方が快適ですし、ある程度長距離乗れば車両価格が少々高くても燃料代で元を取れます。

3)ディーゼルエンジンを積める設計が必要

1.5Lディーゼルエンジンといえどもターボ等の補機がついていますので、エンジンを積むためのスペースを確保する必要があります。ハイブリッドシステムもかさばりますが、ハイブリッドシステムとディーゼルエンジンとでは形が異なりますので、複数のパワートレーンに対応できるエンジンルームの設計が必要です。既存の車種に今まで想定していなかったエンジンを積むのは困難ですので、フルモデルチェンジまで待つ必要があります。トヨタの場合はノアやヴォクシーにTNGAを導入して設計を一新するときがチャンスでしょう。しかしそれでも室内スペース重視のミニバンでエンジンを積むためのスペースを確保するのは容易でないでしょう。

4)エンジンそのものの成熟が必要

小型クリーンディーゼルエンジンは新しい技術ですのでガソリンエンジンに比べて不具合が出たりそうでなくても不満が出てきたりするケースが多いでしょう。自社の看板技術でしたら責任を持って対応するとしても、他社製品の不具合の対応に追われるのには尻込みするでしょう。他社にOEM供給する前にまず自社で不具合を潰していく必要があります。考えようによっては、地道な改良をすればいつか数が出る可能性があるわけですから、努力の動機付けになるかもしれません。

5)変速機のトルク容量

せっかくディーゼルエンジンのトルクが太くても、そのトルクを受け止められる変速機が無ければ搭載できません。日本の小型車や大衆車で普及しているCVTはトルク容量の大きいものを作るのが難しいので、エンジンとATとをセットで導入する必要があるかもしれません。それにCVTは高速巡航時にエネルギーのロスが大きいので、高速巡航が得意なディーゼルエンジンの長所を活かしきれません。

エンジンと変速機は協調制御ですので、ECUと合わせてセットで導入する方が開発は楽かもしれませんが、OEMで導入する側からすればコスト上昇要因です。トヨタでしたらマツダ内製のATを買うよりもアイシンAW製のATを載せる方が現実的かもしれません。

ノア・ヴォクシーのフルモデルチェンジでマツダが参画してディーゼルエンジンを担当すれば面白いのではないかと思うものの、素人が思いつくようなことはプロはとっくに考えているでしょうから、何かすぐに市場に出せない理由があったり、解決が必要な課題があったりするのでしょう。

2017年2月8日水曜日

マツダ車に量販グレードを拡充する余地はあるのか

CX-3やデミオの国内販売が振るわないようです。少し前までなら「生産能力に制約がある中、利益率の高い市場向けの販売に振り向けるのである」と言い訳できたものの、トランプ政権になってその最も利益率の高い米国向けの輸出に高率の関税をかけられて販売に影響が及ぶ可能性があります。となると国内販売でも数を追及せざるを得なくなり、CX-3やデミオの国内販売を増やそうとしているようです。

正価販売を標榜しているなか安く売ろうとしたらスペックダウンした廉価グレードを投入せざるを得ないのですが、日本国内でガソリンエンジン車の販売の無いCX-3ならまだしも、他の車種で廉価グレードを投入する余地があるのか疑問です。デミオのガソリンエンジン車は実質1.3Lのみですし、アクセラの売れ筋は今でも安価な1.5Lガソリンエンジン車です。その中でも最も安価なデミオ13Cやアクセラ15Cが大量に売れているかといえば、別にそんなこともありません。

安さが売りの軽自動車でも売れ筋は最も安いアルトやミラではなく、装備の充実したトールハイトワゴンだったりします。「コンパクトカーにはバリューを追及する顧客が多い」という場合、そのバリューが何を指すものなのか、何との比較で割安なのかはよく考えた方がよいかもしれません。初代CX-5が大ヒットしたのは、ハリアーよりも良い車がハリアーよりも圧倒的に安く売られていたためであり、値段そのものが安かったためではありません。フィットが売れているのもコンパクトカーなのに車内が広く感じられて1台で済ませられるからでしょう。日本の消費者が果たして安かろう悪かろうに飛びつくでしょうか。

既存の部品の組み合わせですぐに作れそうな廉価グレードとして思いつくのは、デミオXD Touringよりも安いデミオ15S Touringくらいでしょうか。仮にCX-3に1.5Lガソリンエンジン車を投入するとしたらそちらと被るものの、デミオとCX-3の両方で1.5Lディーゼルエンジン車を販売しても価格帯が異なることから棲み分けがなされていますので、同様の棲み分けは実現するかもしれません。

コンパクトカーのボリュームゾーンは街乗り用ですので、売れているのは街乗りに適したハイブリッド車です。日本向けのコンパクトカーで数を稼ぎたかったらハイブリッド車を作るのが正攻法です。日産ノートはエコスーパーチャージャーでもハイブリッド車の後塵を拝していましたが、街乗りに適したe-Powerを発売した途端に急に売れるようになりました。しかしマツダには街乗りに適したハイブリッド車のラインナップがありません。デミオEVレンジエクステンダーベースのハイブリッド車を開発中のようですが、ロータリーエンジンを使う限りそう簡単には燃費の数字を稼げません。レンジエクステンダーは9Lのガソリンで180km走行ですから燃費は20km/Lしかありません。電気自動車の航続距離としてはなかなかのものですが、回生ブレーキ付にもかかわらずガソリンエンジン車の燃費よりも劣るのではハイブリッド車の燃費としては論外で、さすがにこの数字のままでは市場に投入できないでしょう。だからこそ目下開発中なのでしょうが、どのような形で市場に出るのか楽しみです。