2019年6月30日日曜日

Mazda 3に試乗しました

定期点検のついでにMazda 3に試乗しました。試乗したのは15S TouringのAWDです。ホイールは18インチ、タイヤはブリジストンのTuranza。試乗コースは市街地です。

【エクステリア】
見た目はかなり立派です。同じソウルレッドでも先代よりもきれいに見えます。すぐ近くのアテンザと比べるとボンネットが随分低いです。LEDヘッドライトの性能が向上してフォグラングが不要になりましたので、それに合わせて従来フォグランプがついていた場所のエクステリアデザインの考え方を変える必要があります。Mazda 3のハッチバック車では、かつてフォグランプがあった場所のフロントバンパーに皺をつけていますが、この部分はまだ実績が乏しいため、今後改良の余地があるかもしれません。

【インテリア】
内装は先代よりも立派になり、一つ上の車格の車のように見えます。ただ、運転中は前方を注視していますので、内装にはさほどこだわりはありません。

【座席】
背もたれの傾斜角、座面の前後と高さの調整に加えて、座面をせり上げる機能があります。あまりせり上げると膝裏に圧迫感を感じますので、小柄な人はあまりせり上げない方がよいかもしれません。前席は頭がつかえることなく問題なく座れます。ハッチバックの後席はギリギリ頭が天井に触れるかどうかくらいですが、それを除けばハッチバックの後席であっても別段狭くありません。セダンにも乗り込んでみましたが、こちらは後席の頭上に余裕があります。

【トランクルーム】
数字の上では先代よりも容積が少し落ちているようですが、2人乗りで長距離を移動するという観点では、荷物を積む上で問題ありません。セダンの方が荷室の容積が大きいため、後席に人を乗せるならセダンの方がよいでしょう。ハッチバックは実質2人乗りだと思います。ちなみにセダンのトランクを開けると奥の方では塗装した鉄板がむき出しになっています。しげしげと眺める場所ではありませんので、割り切っているのでしょうか。

ハッチバックのリアハッチやセダンのトランクを開ける際にはエンブレムの下のボタンを押してエンブレムを押し上げますが、初めての操作でもスムースに開けられます。

【視認性】
マツダコネクトの画面は横方向に拡大したおかげで画面が大きく見やすくなりました。もしかして解像度も上がっているのでしょうか。アクティブドライビングディスプレイはフロントガラスに投影するタイプで、広い面積で投影できるようになりました。座高が高くても高さを調整すれば問題なく見えます。後ろの窓が小さいのは相変わらずですが、後方を見る分には特に問題ありません。斜め後ろの視界についても、運転中は特に気になりませんでした。セダンでも後の窓は小さいです。

試乗車には360°ビューモニターが付いていました。車庫入れの際にはバックモニターを見るよりも360°ビューモニターを見る方が扱いやすいです。メーカーオプションですが付けた方がよいでしょう。バックモニターや360°ビューモニターのおかげで車庫入れ時でも斜め後ろの視界には問題ありません。

速度計はアナログ風の映像になりました。デジタルよりもこちらの方が視認性が良いです。映像なのにさほど違和感が無いのは、解像度が高いためでしょうか。タコメーターも先代の廉価版についていたデジタルのは非常に見にくかったのですが、MAZDA3のは大きく見やすくなりました。

i-DMのランプは速度計の両脇にあります。従来の車種ですとメーターの中央にあって否応なしに目立ちましたので白点灯するたびに気分を害しましたが、MAZDA3のは点灯しているのは見えるものの、見ようと思わなければ視界に入っても脳が認識しません。

【パワー】
Mazda 3の1.5LエンジンでAWDといえばマツダ車のラインナップの中でもパワーウェイトレシオは1400kg/111ps=12.61kg/psと最弱で、しかも18インチホイールですが、街乗りで加速する際には特に不便を感じません。このパワー感は謎です。リアサスペンションがトーションビームになってバネ下重量が減少した効果が総重量増加の効果を上回っているのでしょうか。だったら総重量も抑制していればもっと軽快に走るのではないかと思うものの、世界的には2Lエンジンが主流ですので、そこまでして1.5Lエンジン向けに軽くする動機が無いのかもしれません。1.5Lでもっと軽快に走りたかったら16インチホイールの15Sを買うという選択肢もあり、これならバネ下重量がさらに軽くなります。おそらく16インチの方が出足が軽いはずですが、18インチであっても街乗りでは不自由しません。たしかに少しアクセルを踏み込むとすぐに3000回転なり4000回転なりに上がりますが、先代よりも重くなっているはずなのに、先代に比べるとなぜかエンジン回転数がさほど上がりません。4000回転まで上がるのはごく一瞬です。

1.5Lエンジンも欧州の環境規制対応でマルチホールインジェクターを採用して燃焼効率を向上して煤を出にくくしていますので、その効果でしょうか。スペックの数字だけ見ると向上しているようには見えないのですが、実用的な使い方をする分には効率が上がっているのかもしれません。陸橋の上り坂でもパワーの不足を感じませんでした。しかし、山道でどうなるかは実際に走ってみないとわかりません。

高速道路を走行しなかったため、追越加速の際にどうなるかはわからず。しかし、高速巡航中にはさほどパワーを必要としませんので、アダプティブクルコンをつけてダラダラ走る分には全然気にならないのではないかと推測します。

【走る曲がる止まる】
Mazda 3で秀逸だと思ったのは、走る曲がる止まるのすべてにおいて車の挙動が自然で素直で扱いやすいことです。相当入念に作り込まれているのではないでしょうか。特に停止直前のブレーキをリリースする際の挙動も自然で、ブレーキリリース時に神経を使うデミオディーゼルとは全然違います。これは運転する上ではとても重要なことなのですが、スペックの数字に出るものではありませんので、こればかりは実際に運転してみないとわかりません。まだ長い距離を走っていませんので推測でしかありませんが、これだけ扱いやすければ長距離乗っても疲れないのではないでしょうか。1車線の曲がりくねった道を走ると時速30kmでも速く感じますので、酷道や林道でそういう道を運転してみて車の挙動や運転のしやすさや疲れにくさを体感するのがおそらく最もわかりやすいのではないかと思います。

まだおろしたてでサスペンションがなじんでいないのか、路面の凹凸からの突き上げは大き目です。しかし運転している限りはさほど気になりません。最近のマツダ車はホイールが大きいからといってただちに乗り心地が悪いわけでもありませんので、16インチタイヤで改善するかどうかは実際に乗ってみないとわかりません。

【ステアリング】
ステアリングホイールは細いですが、しっとりとしていて滑りにくいので、扱いやすく感じます。ステアリングスイッチも小型化されていますので、見た目がすっきりしています。その分メーター類が見やすいです。

【パーキングブレーキ】
電動パーキングブレーキですので、アクセルを踏めば自動で解除され、そのまま走り出すことができます。さらにオートホールドもついていて、これをオンにすると信号待ちで停止しているときにブレーキを離すことができますので足が楽です。停止してアイドリングストップに入ったらブレーキペダルから足を離すことができます。ブレーキペダルを踏んでいませんので、停止中に意図せずしてエンジンが始動することがありません。発進時にはアクセルを踏むだけです。特に信号待ちの多い街乗りで威力を発揮します。一旦これで味をしめたらもはやオートホールド無しの車には戻れそうにありません。

【静粛性】
ディーラーの営業さんと話しながら乗りましたので、静粛性についてはきちんとチェックしませんでしたが、ロードノイズやエンジン音によって話し声がかき消されることはありませんでしたし、エンジン回転数が上がってもエンジン音はさほど響きませんので、そういう意味では静粛性は向上しているのかもしれません。回転数が上がればエンジン音も大きくなりますが、決して不快な音ではありませんので、おそらく選択的に遮音されているのでしょう。

【カーオーディオ】
検証できず。「走るオーディオルーム」という触れ込みが本当かどうかはとても気になるのですが。

【マツダコネクト2】
検証できず。この辺りはレンタカーでまる1日借りて使い込んでみないとわからないでしょう。1.5Lなので車載通信機も無し。

【装備】
1.5LではパドルシフトやアダプティブLEDヘッドライト等の長距離向けの装備をオプションでもつけられないのですが、市街地での試乗では特に不自由なし。田舎ではハイビームでないと前が見えませんので、アダプティブLEDヘッドライトをつけられないのだけが心残りです。パドルシフトがある方が下り坂でエンジンブレーキをかける際に楽なのですが、いまどきのAT車は下り坂でブレーキを踏めば自動でシフトダウンしてエンジンブレーキがかかりますので、たまに山道を走る程度でしたらブレーキパッドが減るのを気にせずにブレーキを踏めばよいのかもしれません。

【注目度】
ディーラーへの来客の7割くらいがMazda 3目当てとのことで、一般人からは相当注目されているようです。営業さんも出払っていましたので、来客数自体も増えているようです。注目されることと売れることは必ずしも一致しませんが、注目されなければ売れることはありません。

【価格】
15S TouringのFFで見積を取ってもらったら乗り出しで300万円弱になって、1.5L自然吸気ガソリンエンジン車のくせに高くなったものだなと思ったものの、カローラスポーツ(1.2Lターボ)やインプレッサ(1.6L)のオンライン見積でも実は同じくらいします。トヨタは高くても売れますし、スバルはオプション無しなら安いものの、標準装備のものが少なくて片っ端からオプションをつける必要があり、しかもそのオプションが高いので、オプション付きの値段だとカローラスポーツと同じくらいします。Mazda 3は標準装備でもいろいろついていますので、オプションでつけるものがさほどありません。ナビのSDカードは5万円くらいしますが、他社で純正ナビをつけたら未だに20万円くらいします。同じ装備で比較すれば値段は同じくらいですし、それでいて内装外装には圧倒的な差がありますので、1.5Lについては他車との比較では割の良い買物かもしれません。

【Mazda 3に向いているのはこんな人】
  • 低い速度でも気持ちよく運転したい
  • パワーが無くて遅くて免許にやさしい車に乗りたい
  • 車内で過ごす時間を気持ちよく過ごしたい
どうせ日本の公道の速度域では速く走る余地なんてありませんし、日本の公道では遅い車ほど大手を振って走っていますので、速い車に乗ってもイライラするだけです。走行距離が短ければ速くても遅くても所要時間はさほど違いません。それならイライラせず気持ちよく過ごせる方がよいでしょう。

【総評】
自動車を公道での移動の手段とみなす人にとってはとても良くできた車だと思います。一方、パワーとかスピードといった数字で表せるようなわかりやすい評価軸では特に優れた点が無いため、従来からの評価軸で評価しようとすると何が良いのかさっぱりわからない車だと思います。操安設計についても、路面からの突き上げは結構ありますので、従来からの乗り心地の考え方では褒めることができません。そのため、自動車評論家は今まで慣れ親しんだ手法を使うことができず、何をどう評価したらよいのか困っているのではないでしょうか。一般人の評価と評論家やマニアの評価とではかなり違ってくるのではないかと推測します。

余計な情報を入力せず、実際に運転して気持ち良いかどうか、長距離走って疲れないかどうかという、素人にでもわかる判断基準を適用するのがよいと思います。これは実際に乗ってみないとわかりません。

2019年6月26日水曜日

Mazda 3 15S Touringの仕様に関する素朴な疑問

Mazda 3の1.5Lガソリンエンジン車の上位グレードである15S Touringは、オプションであっても以下を装備することができません。

  1. クルージング&トラフィック・サポート
  2. アダプティブLEDヘッドライト(ALH)
  3. パドルシフト
  4. 前側方接近車両検知(FCTA)
  5. 交通標識認識システム
  6. マツダコネクトの車載通信機
1.は渋滞する高速道路向け、2.はハイビーム必須の田舎向け、3.は山道向け、5.は土地勘の無い道路向けですので、街乗り用と割り切ればついていなくてもさほど困りません。

一方、理解に苦しむのは、15S Touringでは18インチホイールのみでオプションであっても16インチホイールを選べないことです。下位グレードの15Sは16インチホイールのみですし、2Lガソリンエンジン車の下位グレードやSkyactiv-Xの下位グレードではオプションで16インチホイールを選ぶことができる中、唯一15S Touringだけは18インチホイール必須になっています。「街乗り用と割り切るなら16インチで十分、それでも18インチホイールが欲しい人はオプションでどうぞ」というならわかるのですが、街乗り用と割り切るべきグレードで16インチホイールを選べないというのは一体どういうことなのでしょう。

15Sにはフルオートエアコンが付かないとか、スーパーUVカットガラス(フロントドア)+IRカットガラス(フロントガラス/フロントドア)がメーカーセットオプションになっているとか(なぜかCD / DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)と抱き合わせ)とか、内装が若干シンプルになっているといった差はありますが、16インチのタイヤを選びたければ15Sの方がましかもしれません。ホイールが軽い方が街乗りでの出足が軽いですし、タイヤのクッションが大きい分、衝撃の吸収でも有利です。走行距離が延びなければタイヤ交換はさほど必要ないかもしれませんが、18インチのタイヤよりも16インチのタイヤの方が安価です。