2019年11月23日土曜日

Mazda 3の塗色について

売れていないと言われつつも最近になってぼちぼち実車を見かけるようになりました。まだ全部は網羅できていませんが、見た目の感想を以下記します。

【ファストバック】
ポリメタルグレー:ヌメヌメ度MAX。ファストバックのヌメヌメを極めるならこれでしょう。
白:ヌメヌメ度MIN。白塗装は光沢感がないため外板への映り込みがなく車体の造形のみが映えます。キャラクターラインが無いことから白は高級そうな尻をしていて、後から見ると堅気でない車に見えます。ヌメヌメが苦手な人にはこれが一番合いそうです。公道でもそこそこ見かけます。
ソウルレッド:ギラギラ度MAX。定番。
黒:ワル度MAX。マツダ車で黒は珍しいのですが、Mazda 3ファストバックの悪そうな見た目とマッチするのか、Mazda 3ではたまに見かけます。フロントグリルもホイールも黒いので松崎しげる並に真っ黒です。純正のエアロパーツをつけたらさらに悪そうに見えます。デイライトをつけて高速道路の追越車線でものすごいスピードで追いついてきたら思わず道を譲りたくなりそうです。もし追越車線でものすごいスピードで走れればの話ですが。
ディープクリスタルブルーマイカ:意外にも実車で見かけました。一見地味ですが、光が当たるとギラギラ系です。暗い色ですが、黒くない分、黒よりもワル度は控えめです。

【セダン】
マシーングレー:迫力があります。ギラギラしていますので、セダンの繊細な形状が映えます。
白:普通のCセグメント車に見えます。白塗装は光沢感が無いため、側面の複雑な形状が目立たず、普通の形に見えます。特に後ろ半分は普通の形ですので、すれ違いざまに後ろを見るとカローラのように見えます。
ソニックシルバー:白と同様に無難なレンタカー色ですが、セダンには無彩色で光沢感のある塗色が合うように見えます。マシーングレーほどギラギラしていないため、穏やかな見た目です。
ソウルレッド:アテンザのセダンに近い同じサイズですので、アテンザ後継のニーズがあるようです。
ディープクリスタルブルーマイカ:ローマ教皇が来日時に乗っていました。クラウンでもたまに濃紺を見かけますが、同じようなイメージです。

2019年11月10日日曜日

Mazda 3の2Lガソリンエンジン車に試乗しました

日本の公道の速度域なら1.5Lで十分だと思っていますが、1.5L車だと付けられない長距離向け装備があることから、2Lで乗った場合にどんな感じなのか知りたくて試乗させてもらいました。当初は2L車に懐疑的でした。デミオの1.5Lガソリンエンジン車のようにパワーとトルクに余裕がある分ハイギアードにしてしまうとアクセルを踏み込んだときにトルクの苦しい速度域が出てしまって却って走りにくいのではないかと懸念していました。車と道路と運転とは三位一体で、ヨーロッパの速度域にマッチする車が必ずしも日本の速度域にマッチするとは限りません。車はバランスが大切ですので、むしろパワーの劣る車の方が扱いやすいことだってあります。Mazda 3の1.5L車ならアクセルを踏んでエンジンを回す必要があるものの、前に試乗した際には街乗りでは意外と問題なく乗れることがわかっていました。高速巡航ではパワーは必要ありませんし、フルパワーで加速する時間は短時間です。長距離向けの装備はたまにしか使いませんが、車に乗れば必ずアクセルを踏みますので、値段や装備のことは気にせず、運転して気持ちの良いのはどちらかという観点で試乗してみました。

出足は静かで穏やかです。意図した通りの出足であり、出すぎることも足りないこともありません。街乗りで加速してみても常に穏やかであり続けます。遅くはありませんが速くもありません。1.5Lエンジンが重量に対して非力なだけで、2Lだからといってパワーがあるわけではありません。ブレーキも効きすぎることはなく、デミオディーゼルのよく効くブレーキの感覚でブレーキを踏むと思いのほか制動距離が延びますが、踏めが踏んだだけ効くブレーキですので、慣れれば扱いやすいと思います。曲がるのも素直で、意図した通りに曲がります。狭い道も走ってみましたが、コントロールしやすいため、車体の大きさの割には苦になりません。全般的に運転する上でのストレスが無い代わりに刺激もありません。

2L車特有の装備としては、まず道路標識を認識するシステムは夜間でも機能します。なぜか市街地で「120」と表示されることもありますが、明らかにおかしな数字でしたら誤認することもないでしょう。フロントガラスに投影されるタイプですので、ヘッドアップディスプレイよりも高い位置に表示されて見やすいです。メーターパネル上でも制限速度が表示されますが、スピードメーターの左上に小さく表示されるのみです。標識の識別精度がもっと高くなったら、スピードメーター中央部の一等地に表示されてもおかしくありませんが、今はまだその水準でははさそうです。アダプティブLEDヘッドライトは、ハイビームコントロールと異なりハイビーム切り替えがきちんと機能しますので、ストレスがありません。夜間の運転ではハイビームにしないと標識が見えませんし、特にハイビームが点灯しないでオービス看板を見落としたら大変なことになります。パドルシフトは1.5L車にはつかず、カタログを探しても見当たりませんが、ショップオプションで2万円くらいで付けられるとのことです。前側方接近車両検知はあればあるなりに便利で、慣れてしまえば進路変更時の後側方接近車両検知と同様に重要なバックアップとなるはずです。クルージング&トラフィックサポートを使う機会はありませんでした。2019年9月からカタログにひっそり追加されたリバース連動ドアミラー機能も試せずじまい。

せっかくですので、2L車を試乗した直後に1.5L車ももう一度試乗してみました。アクセルを踏むと勇ましいエンジン音が聞こえてきますが、2L車に試乗した直後ということもあり、ろくに前に進んでおらず、スピードメーターを見るとまだこんな速度だったのかとびっくりします。飛ばした気分になるものの実際のスピードは出ていないという免許にやさしい車です。この車でパトカーに捕まるのは難しそうですし、オービスの光る速度まで達するのが想像できません。これはMazda 3に限ったことではなくアクセラ1.5Lでも同様です。慣れてしまえば最初からアクセルを踏みますので、日本の公道で走る分にはこれで間に合ってしまいます。エンジンは回りますが不快ではありません。上り坂では当然パワーが足りませんが、スポーツモードにすれば同じようにアクセルペダルを踏んでもエンジンが回る分だけパワーが出ます。そもそも上り坂を走る時間なんてそんなに長くありません。街乗りでパワー不足を感じる場合も同様にスポーツモードにすれば加速しますので、乗り慣れない人は最初からスポーツモードにしてしまった方が乗りやすいかもしれません。一定速度で巡航する際にはパワーの無さは気になりませんし、曲がるのや止まるのはパワーと関係ありませんし、ボディの剛性やシャシーの性能はパワーの無い車でも一緒です。これはこれでありだなと思います。むしろ、ファストバックの癖のあるエクステリアには勇ましいエンジン音の1.5Lの方がマッチするのではないでしょうか。たまに遊びで乗る分には楽しい車だと思いますし、近所の買物でゆっくり走っても楽しい気分になります。

ディーゼルエンジン車にはまだ試乗していませんが、デミオディーゼルに乗ってきた経験から推測すると、ガソリンエンジン車に比べて癖がある一方で、長距離巡航には強そうですので、ボディー剛性やシャシー性能を堪能するのは良さそうなものの、その良さにうまくはまってしまうととてつもなく走行距離が延びるのではないかと心配になります。

2L車は派手な外見とは裏腹に中身は素直で穏やかで、見た目の中身とのギャップから、「性格の良いギャル」という印象です(その例えを用いるなら1.5Lは「普通のギャル」でしょうか)。2L車はファストバックよりもむしろセダンの方が似合いそうです。1.5Lならファストバックの方が似合いそうですが、そもそもセダンの設定がありません。MTで乗るなら2Lよりも1.5Lの方が面白そうで、2L車にMTの設定が無いのもわからないでもありません。当然2Lの方がパワーがありますが、車の運動は公道での速度と加速度によって制約されますので、パワーがあればその分速いというわけではありません。

毎日のように乗って、長距離乗って、長く乗り続けるのでしたら素直で穏やかで疲れない車の方が向いているのではないでしょうか。ファストバックの特徴的な外見も、初めて写真で見たときには何だこれはと思いましたが、目が慣れてくるにつれてだんだん良く見えてくるのが不思議です。これも長く付き合うには有利ではないでしょうか。たまにレンタカーで乗るなら1.5L、所有するなら2Lが良いのではないかと思いました。

それにしてもこの車は日本で売るのが難しい車に思えます。エクステリアは目立ちますし、インテリアも値段の割にはしっかりしていますので、そういう部分はわかりやすいのですが、肝心の走りはというと「個性が無いのが個性」みたいな走りですので、日頃から長距離を走り込んでいて「良い車とは長距離を走っても疲れない車である」ということを肌感覚で理解している人なら良さがわかるのでしょうが、あいにく日本のドライバーの大半は長距離を走りませんので、見た目だけの車と思われているようです。少々癖のある1.5L車の方がまだわかりやすいですが、カタログスペック上明らかに非力というのがネックになって、乗ってみれば意外とどうにかなるし実は結構楽しいという所までなかなか到達しません。マツダ車全般に言えることですが、乗ればわかるけれども乗らなければわからないため、文字だけでは伝わりません。こればかりは実際に乗ってみてください、できればレンタカーでも借りて長距離走り込んでくださいとしか言えません。

2019年11月5日火曜日

水噴射エンジン

かつてエンジンの燃焼室に水を噴射してエンジンの排熱で水蒸気にして膨張させることで、余った熱エネルギーを運動エネルギーにできないものかと思いついたことがありました。ガスタービンエンジンの排熱を使って蒸気タービンを回すガスタービンコンバインドサイクルのようなものをレシプロエンジンでも実現できないものだろうかと思ったためです。水は気化すると体積が1700倍に膨張しますので、燃焼室内に僅かに噴射するだけでも莫大な運動エネルギーを発生させます。これは蒸気機関でよく知られていることです。

エンジン冷却水は概ね90℃くらいで安定していますので、一旦エンジン冷却水としてエンジン排熱を回収した上で、それを燃焼室に噴射して気化させて膨張させれば僅かな熱量で大きな運動エネルギーを発生させることができますし、断熱効果もあるので熱効率が良くなるのではないかとか、あるいは、4気筒のうち2気筒だけ燃料を噴射して残り2気筒には高温のEGRの中に水を噴射して熱を回収しつつ運動エネルギーに変換して、それを2気筒づつ交互に繰り返すようなやり方なら、気筒休止と同様の燃料節約効果をもたらしつつ出力を増大させることができないかとか、さらにいえば、ディーゼルエンジンでは窒素酸化物を還元するために尿素水(アンモニア水溶液)を噴射する技術が広く採用されていますが、アンモニアは水よりも沸点が低いため、水を噴射して排熱を運動エネルギーに変換した後で、残った熱でアンモニアを噴射してさらに運動エネルギーに変換した上で、触媒に到達した時点で窒素酸化物を還元するのに使えないかとか(現状では尿素水は燃焼室ではなく触媒に噴射されています)、あったらいいな的なものはいろいろ思いつきます。

しかしそういうものを探しても市販車ではなかなか見つかりませんでしたので、世の中に存在しないのには何か理由があるのだろう、素人のいい加減な思いつきだけではうまくいかないような理由があるのだろうと思っていました。ロータリーエンジンだってHCCIだって理屈としてはわかるものの、簡単に実用化できるものではありません。エンジンの排熱利用の例として最も有名なのはターボチャージャーですが、排熱利用はタダではなくて掃気の悪化を通じて燃焼効率を悪化させているとのことで、掃気を悪化させないターボ式エンジンが実用化したのはつい最近のことです(そういえばダイナミック・プレッシャー・ターボはディーゼルエンジンに横展開されないのでしょうか)。

唯一実用化しているBMWの水噴射エンジンでは、水噴射で燃焼室の温度を下げることでノッキングを起きにくくして圧縮比を上げることでダウンサイジングターボの弱点を解消しています。直噴エンジンでは燃料噴射時に燃料が気化熱を奪うことでノッキング対策をしていますが、これを水に置き換えるものです(https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/mag/15/397260/080200187/)。

東京工業大学と慶応義塾大学の研究グループは、水噴射によって燃焼室内で水蒸気の膜ができ断熱効果をもたらすことを発見しました(https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02695/?n_cid=nbpnxt_twbn)。熱損失を減らすことができればその分熱効率が向上します。

マツダが2018年8月に取得した特許では、高温高圧下で燃料と水とを反応させることで、燃料の一部を水素と一酸化炭素(一酸化炭素は酸素との結合力が強いので燃焼します。高炉では高炉ガスと呼ばれており、発電に用いられています)に改質し、このエンタルピーの高い燃料を燃焼させることでピストンを押し下げる力を強くして排熱回収するとあります(https://ipforce.jp/patent-jp-B9-6376190)。SACI燃焼(Spark Asisted Compression Ignition Combustion)を前提条件としていることから、Skyactiv-X開発の副産物のようで、実用化に成功すればSkyactiv-Xの改良型で実装されるかもしれません。しかし、特許公報には熱効率改善の定量効果についての記載はありません。

2019年のマツダ技報には「高温高圧雰囲気場における水添加が自着火・燃焼反応におよぼす影響」という論文があり、水噴射とEGRとの比較では、「水噴射の方がノッキング抑制効果が劣るだけでなく、自着火後に燃焼反応を活性化する効果がある」としています。ノッキング抑制が目的であればEGRを使えば良くて、水噴射を活用するなら別の目的でということなのでしょう。

エンジンに水を噴射すると燃焼室の中では様々な反応が起きているようで、水が気化して膨張するという単純な話ではないようです。

水噴射エンジンの既知の課題としては、凍結と腐食とがあり、保守に難があるため、レーシングカーならまだしも市販車で採用しにくいとされています。BMWのエンジンでは純水のタンクから直接噴射しているのに対して、エンジン冷却水を抽出して噴射すれば凍結の心配はないはずです。上記マツダの特許公報では、熱交換器を通して水を高温高圧にするとあります。腐食の問題は厄介で、100℃から300℃くらいの飽和水蒸気は湿っているため腐食をもたらしやすいです。原子力発電では燃料棒のジルコニウム被膜を溶かさないよう蒸気の温度を300℃くらいに抑えており、そのため原子力発電用の蒸気タービンでは腐食が課題です。通常、ボイラーではもっと温度の高い乾いた水蒸気を使います。水の噴射量が微量であれば水蒸気の温度を上げることは容易ですが、そうすると排熱をあまり回収できません。かといって排熱回収を重視して水蒸気温度を下げると腐食しやすくなりますので、エンジン側で腐食対策が必要かもしれません。