2021年10月29日金曜日

Mazda 3とCX-30の商品改良

2021年10月28日にMazda 3とCX-30の商品改良が発表されました(プレスリリース)。

【パワートレイン】

残念ながら、予想通りに改良型ガソリンエンジンの搭載はありませんでした。むしろSkyactiv-Xの燃費が向上していました。エンジンの燃費向上は燃費規制の厳しい欧州向けですので、欧州で売れ筋のSkyactiv-Xで燃費を向上する方が効果が高いことは理解できますが、プレスリリースを読んでも一体どうやって燃費を向上させたのかが記載されておりません。日本でXを買うような人は燃費で選んでいるわけではないでしょうから、運転の気持ちよさのアピールしかしていません。

さらにわからないのは、全般的にWLTC燃費が向上している一方で、AT車の高速道路モードの数字だけが悪化していることです。MT車の高速道路モードの燃費は向上しています。ギアが変わったのかと思って諸元表を見ても変速比と最終減速比に違いはありません。もしかしてAT車だけアクセルペダルの反力を少し強くしたのと関係あるのでしょうか。Xは制御が複雑すぎてまだ気筒休止を導入できていませんが、ソフトウェア開発が追い付いて気筒休止を導入できたら高速道路モードの燃費が少し向上するかもしれません。

【価格】

日本でも積極的にXを売りたくなったのか、1.5Lエンジン車並みの装備でXのエンジンを積んだSmart Editionというのが出ました。本体価格はXD Proactiveと同じく2,790,741円(税込)です。乗り出し330万円くらいでしょうか。装備はともかくいまどきの国産Cセグメント車として手の届かない値段ではありません。

装備は15Sと15S Touringの間で、15Sとの価格差は約60万円、15S Touringとの価格差は約50万円です。エンジンの価格差は間を取って55万円くらいでしょうか。同じ装備の2Lエンジン車とXとの価格差は約70万円ですので、Xの価格を下げるために相当がんばっています。逆に、1.5Lエンジンが改良型になってしまうと少なくとも燃費については差がなくなってしまいますので、このタイミングで改良型エンジンを載せるのは難しそうです。

長距離向け装備の無いX Smart Editionは長距離向け装備満載の20S Proactive Touring Selectionより少し高い程度ですので、逆にいえば、いまどきの電子装備というのはかなりコストがかかっています。都会に住んでいて高速で出かけるとなると長距離向けの装備が欲しくなるところですが、田舎に住んでいて高速道路をあまり使わないのであればエンジンだけにお金をかけるという考え方はありえます。

もう少し現実的なのはProactive Touring Selectionからパワーシートを削ってProactive Touring Selectionよりも安くしたBlack Tone Editionです。こちらは売れ筋の20S Proactive Touring Selectionよりも60万円高く、X L Packageよりも15万円近く安いです。

【塗色】

プラチナクオーツメタリックはセダンとハッチバックの両方に導入され、従来ハッチバック専用色だったポリメタルグレーがセダンにも導入されました。最近のマツダは推し塗色を全車種に展開する傾向がありますので、その一環でしょう。ポリメタルグレーのセダンが似合うかどうかは実車を見てみないとわかりませんが、プラチナクオーツメタリックのハッチバックはこれはこれで意外と似合うかもしれません。ポルシェでもこの手のベージュ系の塗色があります。白に近い色でありながら光沢感があり他の塗色と同様に車体への映り込みが見えます。少なくとも今回廃盤になったチタニウムフラッシュマイカよりはとっつきやすそうな塗色です。

車の形に応じて似合う色と似合わない色とがあるはずですが、塗色のバリエーションを増やすだけなら型式証明の取得が必要なわけではありませんし、少ない種類の塗色にまとめることができれば塗装ラインの生産効率が上がりますので、生産側の都合としては理解できますが、マツダではデザイン部門よりも生産部門の方が力が強いのでしょうか。

2021年10月26日火曜日

Mazda 3の乗り心地がだいぶ良くなってきました

新車時にはガタガタした乗り心地で、こんな車で高速で長距離走れないと思いましたが、走行距離が増すにつれて足回りの当たりが取れてきて、次第に乗り心地がよくなってきています。もともと平滑な路面では乗り心地が良かったですが、最近になってやっと小さな凹凸くらいはサスペンションで吸収できるようになって、ぬるーんとした乗り心地になってきました。

何がどうぬるーんなのかというと、もともとふわふわしない車なのですが、かつては路面の凹凸に追従して車体が揺さぶられていました。しかし徐々にフラット感が増してきて、ときおり橋の継ぎ目のような大きな段差でガツンと来る程度になりました。もしかしてこれが開発者が本来意図した乗り心地なのでしょうか。ただ、ドイツ車のような高速域で氷の上を滑るような乗り心地とは違うように感じます。低速域では相変わらずガタガタしますし。足の動きだけで凹凸を吸収するというよりもむしろ、GVCか何かで車体の姿勢を制御しているような感じで、それがぬるーんとした感じを引き起こしているのではないでしょうか。車体制御の可能性を疑うのは、路面から入ってくる情報から当然に期待されるFF車の挙動と、実際の車体の動きとが一致しないような気がするからです。

2021年10月17日日曜日

Mazda 3やCX-3向けのガソリンエンジン

CX-3の年次改良車の1.5Lガソリンエンジンは改良型ではないようです。CX-3に1.5Lガソリンエンジンを積んでいるのは日本向けだけで、方や改良型ガソリンエンジンの目的は欧州のCO2排出量規制(≒燃費規制)対応が目的ですので、欧州向けでないものにまで改良型ガソリンエンジンを積む動機が無いのかもしれません。

Mazda 3においても1.5Lガソリンエンジンを積むのは日本向けを除けばトルコ向け等ごく限られていて、これも欧州のCO2排出量規制とは関係ありませんので、年次改良車にも改良型ガソリンエンジンは積まれないのではないかと予想します。

では2Lガソリンエンジンはどうかというと、欧州向けのMazda 3の売れ筋はSkyactiv-Xに移行していて、2Lガソリンエンジンは廉価版という位置づけですので、あえて改良型ガソリンエンジンを積む動機がなさそうです。欧州向けMazda 2の1.5Lエンジンにおいても圧縮比12で4-1排気管で75psの廉価版と圧縮比14→15で4-2-1排気管で90psの上位版とが併売されています。

では欧州向けのCX-3の2Lガソリンエンジンは主力だからテコ入れされるかというと、こちらはそもそも12月限りで販売終了となる国が出ています。2Lガソリンエンジン車と1.8Lディーゼルエンジンとの組み合わせはCX-30と被りますし、CX-30ではすでにSkyactiv-Xがありますので、欧州向けはそちらに統合でしょうか。もともとCX-30はホイールベースを短くしてまで全長を欧州Cセグメント車の標準に合わせており、これは縦列駐車の多い欧州では重要なことです。そこまでして欧州のニーズに合わせているということは、そちらが本命なのかもしれません。そして価格に敏感な日本向けには安価なCX-3の1.5Lガソリンエンジン車を継続とか。

とはいえ、すでに開発済であれば従来型であっても改良型であっても製造コストは変わらないはずですし、マツダの生産ラインは混流生産が可能ですので、従来型エンジンを一定数生産する動機も無いはずです。どうせコストが同じなら燃費の良いエンジンを生産する方が皆が幸せになるのではないかと素人考えでは思うのですが、あえて従来型を残す理由が何かあるのでしょうか。

例えば欧州向け2Lガソリンエンジンにはマイルドハイブリッドと気筒休止がついていてSkyactiv-Xとの価格差が小さくなっています。燃費改善効果が乏しいのに高価な補機をつけてまでマイルドハイブリッドにしているのは、欧州では欧州メーカーがトヨタに匹敵するハイブリッド車を作る技術を持っていないために、マイルドハイブリッドでもハイブリッド車に含まれるという欧州ルールの産物であり、電動化比率のアリバイとして敢えてそうしているともいえます(裏返せば、欧州以外でそこまでする必要はない)。しかし改良型エンジンで製造コストが増えずに燃費が7%も向上するなら、企業平均燃費向上の足しになりますし、廉価版であるならなおさら費用対効果が重視されるはずです。

日本では罰金を課されるような企業平均燃費規制はまだ導入されておらず、税制上の優遇措置を受けられるかどうかが一つの目安になります。Mazda 2の改良型エンジンはこれをクリアできたからこそ日本でも発売されたのでしょう。CX-3やMazda 3でこのラインをクリアできないなら、敢えて改良型エンジンを積む動機が無いのかもしれません。

あとは走りの質の問題で、日本向けMazda 2はエンジンをあまり回さずに走る前提ですので、中回転域でのレスポンスが改善すれば効果があるのかもしれませんが、CX-3やMazda 3の1.5Lエンジンはアクセルを踏み込んだときには3000回転から4000回転くらいまで回す前提ですので、エンジン改良のスイートスポットを外れている可能性もあります。回転数を落とせるくらいトルクが太くなれば別でしょうが、さすがにそこまでの改善ではないでしょうし。目立った改善効果が期待できないなら、改良型エンジンの生産が安定して信頼性が確保されるまでの間は、信頼性の高い従来型エンジンで乗り切るというのもありかもしれません。

では日本向け2Lエンジンはというと、前述の通り、欧州向けに改良型エンジンを積むのであれば開発されるでしょうが、そうでなければわざわざ開発にリソースを割く動機がないのかもしれません。とはいえ、欧州向け2Lエンジンには気筒休止が搭載されていますので、日本向けにも気筒休止くらいはあってもよいのではないかと思います。6ATだと高速道路の速度域でエンジン回転数が上がってしまって他社のCVT車に高速燃費で負けています。新東名の120km/h区間だと15km/Lくらいしか出ません。今後東京から放射状に伸びる高速道路で120km/h区間が増える予定ですので、高速燃費の改善に力を入れてほしいものです。日本向けの導入するためには、気筒休止の制御を日本向けにも作り込む必要がありますが、ソフトウェア開発にリソースを割くほど優先順位が高くないのでしょうか。