マツダ車はブレーキが甘いと思っている人がそこそこいるようです。たしかにMazda 3に初めて試乗したときには、それまでのデミオディーゼルの感覚でブレーキペダルを踏んだら思いの外効きませんでした。デミオディーゼルはブレーキの効きがかなり良かったので強く踏むと急ブレーキになってしまうためです。しかし、踏力でコントロールするブレーキであることを理解してそのように操作すればちゃんとブレーキが効きます。
ブレーキに関する誤解にはいくつか理由が思い当たります。
1.日本車の大半はブレーキペダルのストロークでコントロールするタイプであるため、ストロークが飽和した状態で最大のブレーキ力だと誤解しがち。踏力でコントロールするブレーキが効くのはそこからです。
2.昔のトヨタ車のように安物の車はブレーキペダルの踏み始めでブレーキが強くかかり、それ以上踏んでもブレーキが効きませんでした。その感覚でおっかなびっくり踏んだら拍子抜けすることでしょう。踏力でコントロールするブレーキが効くのはそこからなのですが、それ以上踏んでも効かないと学習してしまった人はさらにブレーキを踏むという発想がないのかもしれません。これは車の問題です。
3.そのそもストロークとか踏力とかいった高尚な話以前に、日本のドライバーにはアクセルペダルやブレーキペダルをスイッチのOn/Offのような感覚で操作する人が少なからずいそうに見えます。CVT車はむしろそのようにアクセルペダルを踏んだ方が意図した通りに加速しますし、ブレーキランプがついたり消えたりしてブレーキを踏む時間によって速度をコントロールしていて一段停止できない車もよく見かけます。これはドライバーの問題です。
4.踏力でコントロールするブレーキにおいては踏力がかからないとブレーキが効きませんが、踏力をかけるには筋力や体重も必要ですし、正しいドライビングポジションでなければ踏力をかけられません。西洋人の体格や筋力に合わせてブレーキを設計すると小柄な日本人女性には踏力が不足するかもしれません。小柄な人が運転しても自分でかけられる踏力に応じて制動力をコントロールできなければ、本当の意味で踏力でコントロールするブレーキになりえません。これはマツダの車作りの問題ですが、これは各国の市場向けにブレーキ力を調整してほしいですし、事後でも乗る人に合わせて調整できるようにしてほしいものです。ブレーキ力の大半は実はブレーキ倍力装置(ガソリンエンジン車ではエンジンの負圧、ディーゼルエンジン車では真空ポンプ)によって提供されていますので、ブレーキ倍力装置の力の出方の調整が必要に見えます。
ということを踏まえたうえで、ディーラーの営業担当は試乗しにきてくれた貴重な顧客候補に対してブレーキの扱いについてきちんと説明したのでしょうか。マツダ車からマツダ車への乗り換えであっても初めて踏力コントロール型の車に乗るときには慣れが必要ですし、他社からの乗り換えを検討している貴重な顧客を逃すのはもったいないです。