2024年6月3日月曜日

ロータリーエンジンの時代になったらRRもありなのではないか

マツダが開発中の小型化されたロータリー発電ユニットはEV専用プラットフォームのモーターの場所にも設置できるとされています。マツダはEVの時代はFRの時代だとしていますし、後方にモーターを設置するレイアウトも考えているようです、それくらい小型化できるのでしたら、ルノートゥインゴやSmartのようにRRにもできるのではないでしょうか。

トゥインゴやSmartはレシプロエンジンを後席の下に設置しています。レシプロエンジンにできることがロータリーエンジンにできないはずがありません。ノーズは短いですがポルシェ911と同様に前のボンネットはトランクルームになっています。直進安定性さえ確保できればこのレイアウトは合理的です。まず後輪は駆動に特化し、前輪は操舵に特化できますのでサスペンションをシンプルにでき、その分サスペンションを軽くできます。FR車と異なりドライブシャフトが不要です。だからこそFRの時代になる前の自動車はRRだったわけです。360cc時代の軽四輪車は軒並みRRで、マツダのキャロルもRRでした。

自動車は追突されたときに乗員を守れるよう、後方は頑丈にできていて、逆に自分が追突したときには、乗員を守ったり歩行者を保護したりするため、前方は壊れやすくできています。前方にエンジンルームがあるとエンジンルームがクラッシャブルゾーンですので追突時にエンジンが脱落したり壊れたりするようにできています。一方、エンジンが後方にあれば頑丈な区画の中で守られています。

荷物の出し入れについても、今は後ろがせり上がったような車体ですのでリアハッチの位置が高く、荷物を高く上げないとトランクルームに荷物を入れられません。前方のボンネットをトランクルームにするなら、荷室を低くすることができます。ポルシェ911のトランクルームなんてかなり低い所にあります。中身が空のトランクルームを前方に伸ばすのでしたらトランクルームを大きくしても車両重量はさほど増えませんので、ロングノーズショートデッキのデザインと車両重量の低減とを両立できます。また、FR車と同様に前輪を前に出すことができますので、右ハンドル車であっても適正なドライビングポジションを確保できます。前輪を前に出してホイールベースを確保すれば、RR車が苦手な直進安定性を補うこともできそうです。

ルノー・トゥインゴで重量1000kg前後。ロータリーエンジンで軽量化できればもっと軽くできるでしょう。もしシリーズハイブリッドで車両重量を900kgくらいに抑えることができれば、MX-30 R-EVの半分以下の重量ですので、燃費は単純換算で2倍、30km/L超えです。燃費性能の雄ヤリスハイブリッドにはまだ及びませんが、アクアに肉薄し、ノートe-Powerのようなレシプロエンジンのシリーズハイブリッド車に勝てます。ロータリーエンジンは原理的にレシプロエンジンよりも熱効率が悪いのですから、他車との競争力を確保しようとしたらロータリーエンジンにできてレシプロエンジンにできないことを追求するしかないのではないでしょうか。熱効率で勝てないなら重量で勝つしかありません。もしロータリーエンジンにできてレシプロエンジンにはできないような軽量化パッケージがあるなら、それを追求しない手はありません。

問題は、利幅の小さいコンパクトカーのために独自プラットフォームを起こす経済合理性があるかです。マツダ単独で数が出ないなら他社との共同開発もありかもしれませんが、ロータリーエンジンという基幹技術をマツダに押さえられた状態でおいそれと共同開発の話に乗れるかというと、それも難しそうです。ではCセグメントやSUVまで含めてスモールプラットフォームは全部ロータリーエンジンのRRにしてしまうかというと、それではレシプロエンジンを乗せられなくなってしまいます。

それでも、バッテリーEVと共通化できるでしょうから、レシプロエンジンを諦める覚悟さえできればある程度幅広く使えるかもしれません。バッテリーEVだってバッテリー搭載量を抑えるためには軽量化が一番で、レシプロエンジン車の延長線上では実現不可能なレベルでの軽量化が必要です。かといってバッテリーEV一本足では不安ですので、EV専用プラットフォームに積めるロータリーエンジンというのはリスクヘッジになります。あとはロータリーエンジンをどこまで本気でやるか次第です。

2024年6月2日日曜日

小型化されたロータリー発電ユニット

2024年5月28日にトヨタ、スバル、マツダの共同で三者三様にエンジン開発をする旨が発表されました。その中でマツダが発表したのはロータリー発電ユニットをさらに小型化したものと、FR車向け2ローターのロータリーエンジンユニットでした。注目を受けたのは後者ですが、前者も意外と重要だと思いました。

ロータリーエンジンは原理的にレシプロエンジンよりも熱効率が悪いので、もしロータリーエンジンで燃費性能を確保しようとしたら車両重量を減らすしかありません。軽くするためには車体を小さくするのが一番です。室内スペースを犠牲にせずに車体を小さくしようとしたらエンジンルームを小さくするしかありません。そうすれば小型軽量なロータリーエンジンの長所を活かすことができます。ロータリー発電ユニットの小型化にはそのような問題意識が背景にあるのではないかと推測します。

そこで気になるのが魂動デザインとの整合性です。マツダは今までロングノーズショートデッキのエクステリアデザインを好んできました。エンジンルームを小さくすればその分ノーズが短くなります。だからこそコンパクトカーのデザインは難しいわけですが、マツダのデザイナーはどのように解決するのでしょうか。

2024年5月26日日曜日

マツダ独自のハイブリッドとは

CX-5のフルモデルチェンジの際にマツダ独自のハイブリッドを搭載することが発表されました。自社技術の中身が発表されていませんので、様々な憶測を呼んでいます。せっかくなので正式に発表される前に予想してみようと思います。

まずわかるのはトヨタのハイブリッドシステムではないということ。すなわち、2モーターで遊星歯車を介してエンジン動力を駆動力と発電とに任意に配分するシステムではないということです。トヨタのハイブリッドシステム自体はトヨタが他社にも無料で開放しており、やろうと思えばやれないこともないのですが、なにぶん制御が難しく、その一番難しい制御の部分を自社で開発するのは困難ということでマツダはだいぶ前にこの方式の自社開発を諦めてトヨタのハイブリッドシステムをOEM導入することを決めました。燃費性能は世界最高レベルですし、モーターやインバータの小型軽量化が進みコストも下がった結果、コスト面でも重量面でも普通のガソリンエンジン車との差が小さくなっています。

現在マツダが持っている技術は、ラージプラットフォーム向けのPHEVとMX-30で採用されたロータリーエンジンで発電するタイプのEVです。しかしどちらもそのままCX-5に移植することができませんので、CX-5向けの独自開発が必要です。まだ詳細が発表されていないのはそのためでしょうか。

前者は、エンジン自体はマツダでありふれた2.5Lガソリンエンジンですが、縦置きエンジンのFR向けのプラットフォームですので横置きエンジンのFF車であるCX-5にそのまま移植することができません。後者はCセグメントのMX-30向けのシステムで、一回り大きいCX-5に移植するにはエンジンのパワーが足りません。そもそもロータリーエンジンは小型軽量という利点はあっても、エンジン自体の燃費は原理的にレシプロエンジンに劣ります。そこでMX-30用のロータリーエンジンでは燃費に特化した結果、ロータリーエンジンの燃費としては驚異的に改善しましたが、それでも日産やホンダのレシプロエンジンベースのシリーズハイブリッド車の燃費にまだ及びません。

サイズの大きいCX-5なら敢えて小型軽量のロータリーエンジンを採用するまでもなく、既存の1.5Lガソリンエンジンや2Lガソリンエンジンを発電専用に調整したものを使う方がはるかに簡単ではないでしょうか。Mazda 3での燃費を比較する限り、2Lエンジンを低回転で使うよりも1.5Lエンジンを高回転で使う方が燃費が良さそうです。これなら日産のe-Powerくらいの燃費は達成きます。

シリーズハイブリッドは120km/h以上の高速域の燃費が悪いのが弱点ですが、北米のインターステート・ハイウェイの最高速度は時速70マイル(112km)かつ速度取り締まりが厳しいので、120km/h以上での燃費の悪さが顕在化しません(だからこそハリアーみたいな鈍重な車が売れるわけです)。日本でも公道での最高速度は120km/hです。速度域の高い欧州向けを諦めて、高収益の北米向けに特化すればシリーズハイブリッドでもやれないこともなさそうです。欧州といっても、アウトバーン以外の高速道路の最高速度は130km/hですので、モーターと推進軸の間に小容量の歯車を介せばできないこともないかもしれません。どのみち電気モーターは低回転で大トルクを出しますので、ディーゼルエンジン同様に若干ハイギアードにしても加速できます。また、モーターの出力軸がそのまま推進軸にならないのでしたら、どのみちどこかで歯車を介すことになりますので、そこで歯車比を調整して増速すればよいでしょう。

CX-5は車高の高いSUVですので、床下にバッテリーを積むスペースがあります。バッテリーの搭載量に応じて電気モーターだけで走れる距離を調整できます。レシプロエンジンによるシリーズハイブリッドの充放電制御は、ラージプラットフォーム向けのPHEVの充放電制御とほぼ同じですので、ハードウェアはともかくソフトウェアについては既存の技術を流用しやすいでしょう。

レシプロエンジンベースのシリーズハイブリッドでは、Mazda 3やMazda 2のような小さいサイズの車には展開できないかもしれませんが、CX-5は単体で数が出る車ですので、CX-5だけのための技術があっても、安価な技術なら開発費を回収できそうです。少なくともロータリーエンジンの燃費をさらに改善して2ローターにしてCX-5に積むよりは安くつくのではないでしょうか。

2024年3月24日日曜日

ロードスターのポールアンテナ

ロードスターは幌屋根で屋根上にアンテナを設置できないため、車体後方にポールアンテナが立っています。どうせポールアンテナを立てるのだったら左前方につければヘタクソポールを兼ねるのではないでしょうか。格好悪いですし、NDロードスターはもともと前輪の上のボンネットがせり上がっていて位置をつかみやすいため、そもそもヘタクソポールをさほど必要としませんから、どうせやらないでしょうけど。

昔の車はAピーラー運転席側に伸びるアンテナがついていて、あれならオープンカーにもつけられそうですが、ロードスターではそうせずに敢えて車体後方にポールアンテナをつけているのはなぜなのでしょう。いまどきのアンテナはFMラジオのアンテナだけでなくテレビのアンテナも兼ねていますので、昔よりも機構が複雑になっているためでしょうか。

Mazda 3ではセダン・ハッチバックともにリアガラスアンテナが採用されており屋根がすっきりしていますが、リアガラスのないロードスターにはつけられません。小さいながら後ろにガラスのあるロードスターRFならリアガラスアンテナをつけられるのでしょうか。Mazda 3はせっかくリアガラスアンテナなのに、わざわざ社外品のシャークフィンアンテナをつける人もいるようで、人の好みはそれぞれですので、そういうカスタムもあるのかもしれません。だったらヘタクソポールアンテナのカスタムも誰かがやってもよさそうですが。

2024年3月18日月曜日

MX-30の車高の低いのがほしい

MX-30は他のマツダ車とは異なる比較的緩いエクステリアが魅力ですが、過去にEVに試乗した際には、天井が高くてアップライトな姿勢で座っているとまるで軽自動車のトールハイトバンを運転しているかのような気分でした(もちろん走りやドライビングポジションは全然違いますが)。車体の嵩上げをなくし、車体下部の樹脂パーツの縁取りをなくせばMiniみたいになりそうです。1人か2人で乗るならMX-30ほどの大きさの車は不要ですし、観音開き扉は車体を重くしますので、Bセグメントサイズの3ドアハッチバックにして、次期Mazda 2のシリーズハイブリッド車にならないものでしょうか。

2024年1月16日火曜日

ディーゼルエンジンによるシリーズハイブリッドは可能か

ハイブリッド車は、電力回生のみならず、エンジンだけではトルクの不足する領域でモーターアシストをするものです。それに対してディーゼルエンジンは低回転でトルクが太いのでモーターアシストは不要と考えられています(トラックにはディーゼルハイブリッドもありますが)。それに、ディーゼルエンジンはターボチャージャーやインタークーラーや、ブレーキサーボ用の真空ポンプや、環境対策のためのDPFフィルターといった補機類を既に多く積んでいますので、そこからさらにモーターや発電機や蓄電池といった補機を増やすのは冗長に見えます。

しかしそれはトヨタのTHS2のようなパラレルハイブリッド車の話であって、エンジンを発電専用に用いるシリーズハイブリッドでは、エンジンの効率の良い領域のみを使うことができることが効率性の源泉です。低回転での太いトルクは電気モーターによって実現しています。それはガソリンエンジンだろうとディーゼルエンジンだろうと、はたまたロータリーエンジンであっても同様です。もしディーゼルエンジンを発電専用に用いるなら、熱効率の良い領域だけで使うことができますので、駆動用ディーゼルエンジンに積むような補機類を省略したりできないものでしょうか。ディーゼルエンジンは窒素酸化物対策と煤対策が難しいですが、熱効率の良い領域でしか使わないなら、環境対策も容易になりそうです。

ディーゼルエンジンは自然吸気では同じ排気量の自然吸気ガソリンエンジンよりもパワーが低いですが、ガソリンエンジンよりも低温で燃焼できますので、排気量を増やすことで発電用エンジンとして十分な容量を確保できれば、効率の良い発電用エンジンにならないものでしょうか。1.5L自然吸気ディーゼルエンジンで、1.2L自然吸気ガソリンエンジンや800ml自然吸気ロータリーエンジンと同じくらいのパワーが出るなら、これら3つの中では最も熱効率が良かったりしないものでしょうか。駆動用エンジンの補機と変速機(これも結構重い)の代わりに発電機とモーターと蓄電池を積むなら、重量を同じくらいかあるいは少し軽くできそうです。

800mlロータリーエンジンもRX-7の頃のエンジンに比べればかなり燃費が良くなっていて、1200kgくらいのBセグメントのシリーズハイブリッド車なら23km/Lくらいは目指せそうですが、ロータリーエンジンは原理的にレシプロガソリンエンジンよりも熱効率が悪いです。熱効率の勝負であれば補機類を省略した自然吸気ディーゼルエンジンにも可能性がないものでしょうか。レシプロガソリンエンジンを積んだ日産ノートe-Powerで実燃費25km/Lくらい、ロータリーエンジンを積んだシリーズハイブリッドで23km/Lくらい出せるなら、自然吸気ディーゼルエンジンで30km/Lを超えることができないものでしょうか。軽油で30km/L超えならヤリスハイブリッドと並んで世界最高水準の燃費性能になりえます。

さらにいえば、ディーゼルエンジンではバイオディーゼル燃料を使うこともできます。持続可能な燃料が使えるならエンジンを残すことができます。ロータリーエンジンも雑食性と言われていますが、液体水素は技術的なハードルが高いですし、ガソリンエンジン向けの持続可能な燃料というとバイオエタノールくらいしかありませんが、バイオエタノールは食と競合します。

2023年11月12日日曜日

自動車メーカー各社の納期

ここのところトヨタ車の納期が絶望的に長く、「販売店にお問い合わせください」と表示される車種が大半です。トヨタは半導体不足が原因としていますが、トヨタが調達でそんなヘマをする会社とは思えませんし、半導体不足が本当なら国内他社はどうなっているだろうかと思って調べてみました。

まずはマツダから。主力車種のCX-60、CX-5、CX-30はなんと0.5〜1ヶ月程度で工場出荷です。Mazda 3はSkyactiv-Xも含め1ヶ月程度です。他は概ね2〜3ヶ月程度ですが、タイの工場から輸入しているCX-3と、数の出ないロードスターRFのみ4ヶ月程度とのこと。意外なのは一見数が出そうなMazda 2の納期が3ヶ月前後であること。Bセグメント車は利幅が薄いので、生産能力に制約があるときにはCX-60のような利幅の大きい車の生産を優先させているのかもしれません。マツダの場合、積極的に売りたい車ほど納期が短いようです。

次はスバル。どれも2ヶ月程度で、一部2〜3ヶ月程度の車種もあります。車種によるばらつきがほぼ無く、どの車種も通常想定される納期であることから、生産能力が制約になっていないのではないかと推測します。

ホンダは比較的納期が長いです。フリードだけは1ヶ月程度ですが、ガソリンエンジン車を中心に半年かかる車種もあります。売れない車の生産を後回しにしているのでしょうか。日本向け販売の主力である軽自動車のN-BOXとN-ONEは2ヶ月程度と標準的で、生産能力の制約は無さそうです。

日産はZのような一部の売り切れ車種を除き概ね1〜2ヶ月程度。売上が補助金に左右されるサクラは今のところ1〜2ヶ月程度。マイナーな車種で3〜4ヶ月程度。ホンダもそうですが、数の出ない車は一定のロット数に達してから生産するのでしょうか。

三菱は人気車種ほど納期が長い傾向。バックオーダーを抱えているのでしょうか。

ダイハツはどれも1ヶ月〜となっており、生産能力の制約はなさそうです。

スズキは本社からは納期の開示なし。販社の情報では、相変わらずジムニーの納期が長いです。

このように横並びに見てみると、トヨタ車の納期だけが異常です。半導体不足が本当であっても、他社は普通に生産できていますので、果たしてそれだけが原因なのか疑わしいです。燃費が良くて航続距離の心配のないハイブリッド車が世界的に売れまくっているというのもあるかもしれません。トヨタはマツダと異なり海外生産が多いのにどうしたのだろうと思って調べてみたら、国内生産の半分くらいが輸出されているようです。今は円が安く輸出向けの方が高く売れますので、円が安いうちに輸出で稼ぐべく、生産能力を輸出向けに優先的に振り向けているのでしょうか。

また、マツダの納期の短さが際立っていますが、他社で通常想定される納期よりも短いのは混流生産によって受注後すぐに生産ラインを押さえられるからでしょうか。

ホンダや日産はグローバルに生産していますが、ホンダの日本国内の工場の輸出依存度が低いのに対し、日産は海外生産比率が高いのに国内工場の輸出依存度が高く、裏返せば日本国内ではろくに売れていないことになります。国内での主力車種はノート、セレナ、エクストレイルですが、セレナとエクストレイルは数が出ませんので、事実上ノートくらいしかありません。

トヨタ車を買いたくても買えない状況のもと、他社の営業が「うちなら早く納車できますよ」と売り込んでもおかしくありませんが、トヨタのハイブリッド車に匹敵する燃費性能の車はなかなかありません。となるとトヨタ車の中古車市場の相場が上がっているのかなという気もしますが、ハイブリッド車はバッテリーが劣化しますので、必ずしも新車の代替にはなりません。