2017年2月8日水曜日

マツダ車に量販グレードを拡充する余地はあるのか

CX-3やデミオの国内販売が振るわないようです。少し前までなら「生産能力に制約がある中、利益率の高い市場向けの販売に振り向けるのである」と言い訳できたものの、トランプ政権になってその最も利益率の高い米国向けの輸出に高率の関税をかけられて販売に影響が及ぶ可能性があります。となると国内販売でも数を追及せざるを得なくなり、CX-3やデミオの国内販売を増やそうとしているようです。

正価販売を標榜しているなか安く売ろうとしたらスペックダウンした廉価グレードを投入せざるを得ないのですが、日本国内でガソリンエンジン車の販売の無いCX-3ならまだしも、他の車種で廉価グレードを投入する余地があるのか疑問です。デミオのガソリンエンジン車は実質1.3Lのみですし、アクセラの売れ筋は今でも安価な1.5Lガソリンエンジン車です。その中でも最も安価なデミオ13Cやアクセラ15Cが大量に売れているかといえば、別にそんなこともありません。

安さが売りの軽自動車でも売れ筋は最も安いアルトやミラではなく、装備の充実したトールハイトワゴンだったりします。「コンパクトカーにはバリューを追及する顧客が多い」という場合、そのバリューが何を指すものなのか、何との比較で割安なのかはよく考えた方がよいかもしれません。初代CX-5が大ヒットしたのは、ハリアーよりも良い車がハリアーよりも圧倒的に安く売られていたためであり、値段そのものが安かったためではありません。フィットが売れているのもコンパクトカーなのに車内が広く感じられて1台で済ませられるからでしょう。日本の消費者が果たして安かろう悪かろうに飛びつくでしょうか。

既存の部品の組み合わせですぐに作れそうな廉価グレードとして思いつくのは、デミオXD Touringよりも安いデミオ15S Touringくらいでしょうか。仮にCX-3に1.5Lガソリンエンジン車を投入するとしたらそちらと被るものの、デミオとCX-3の両方で1.5Lディーゼルエンジン車を販売しても価格帯が異なることから棲み分けがなされていますので、同様の棲み分けは実現するかもしれません。

コンパクトカーのボリュームゾーンは街乗り用ですので、売れているのは街乗りに適したハイブリッド車です。日本向けのコンパクトカーで数を稼ぎたかったらハイブリッド車を作るのが正攻法です。日産ノートはエコスーパーチャージャーでもハイブリッド車の後塵を拝していましたが、街乗りに適したe-Powerを発売した途端に急に売れるようになりました。しかしマツダには街乗りに適したハイブリッド車のラインナップがありません。デミオEVレンジエクステンダーベースのハイブリッド車を開発中のようですが、ロータリーエンジンを使う限りそう簡単には燃費の数字を稼げません。レンジエクステンダーは9Lのガソリンで180km走行ですから燃費は20km/Lしかありません。電気自動車の航続距離としてはなかなかのものですが、回生ブレーキ付にもかかわらずガソリンエンジン車の燃費よりも劣るのではハイブリッド車の燃費としては論外で、さすがにこの数字のままでは市場に投入できないでしょう。だからこそ目下開発中なのでしょうが、どのような形で市場に出るのか楽しみです。