2019年11月10日日曜日

Mazda 3の2Lガソリンエンジン車に試乗しました

日本の公道の速度域なら1.5Lで十分だと思っていますが、1.5L車だと付けられない長距離向け装備があることから、2Lで乗った場合にどんな感じなのか知りたくて試乗させてもらいました。当初は2L車に懐疑的でした。デミオの1.5Lガソリンエンジン車のようにパワーとトルクに余裕がある分ハイギアードにしてしまうとアクセルを踏み込んだときにトルクの苦しい速度域が出てしまって却って走りにくいのではないかと懸念していました。車と道路と運転とは三位一体で、ヨーロッパの速度域にマッチする車が必ずしも日本の速度域にマッチするとは限りません。車はバランスが大切ですので、むしろパワーの劣る車の方が扱いやすいことだってあります。Mazda 3の1.5L車ならアクセルを踏んでエンジンを回す必要があるものの、前に試乗した際には街乗りでは意外と問題なく乗れることがわかっていました。高速巡航ではパワーは必要ありませんし、フルパワーで加速する時間は短時間です。長距離向けの装備はたまにしか使いませんが、車に乗れば必ずアクセルを踏みますので、値段や装備のことは気にせず、運転して気持ちの良いのはどちらかという観点で試乗してみました。

出足は静かで穏やかです。意図した通りの出足であり、出すぎることも足りないこともありません。街乗りで加速してみても常に穏やかであり続けます。遅くはありませんが速くもありません。1.5Lエンジンが重量に対して非力なだけで、2Lだからといってパワーがあるわけではありません。ブレーキも効きすぎることはなく、デミオディーゼルのよく効くブレーキの感覚でブレーキを踏むと思いのほか制動距離が延びますが、踏めが踏んだだけ効くブレーキですので、慣れれば扱いやすいと思います。曲がるのも素直で、意図した通りに曲がります。狭い道も走ってみましたが、コントロールしやすいため、車体の大きさの割には苦になりません。全般的に運転する上でのストレスが無い代わりに刺激もありません。

2L車特有の装備としては、まず道路標識を認識するシステムは夜間でも機能します。なぜか市街地で「120」と表示されることもありますが、明らかにおかしな数字でしたら誤認することもないでしょう。フロントガラスに投影されるタイプですので、ヘッドアップディスプレイよりも高い位置に表示されて見やすいです。メーターパネル上でも制限速度が表示されますが、スピードメーターの左上に小さく表示されるのみです。標識の識別精度がもっと高くなったら、スピードメーター中央部の一等地に表示されてもおかしくありませんが、今はまだその水準でははさそうです。アダプティブLEDヘッドライトは、ハイビームコントロールと異なりハイビーム切り替えがきちんと機能しますので、ストレスがありません。夜間の運転ではハイビームにしないと標識が見えませんし、特にハイビームが点灯しないでオービス看板を見落としたら大変なことになります。パドルシフトは1.5L車にはつかず、カタログを探しても見当たりませんが、ショップオプションで2万円くらいで付けられるとのことです。前側方接近車両検知はあればあるなりに便利で、慣れてしまえば進路変更時の後側方接近車両検知と同様に重要なバックアップとなるはずです。クルージング&トラフィックサポートを使う機会はありませんでした。2019年9月からカタログにひっそり追加されたリバース連動ドアミラー機能も試せずじまい。

せっかくですので、2L車を試乗した直後に1.5L車ももう一度試乗してみました。アクセルを踏むと勇ましいエンジン音が聞こえてきますが、2L車に試乗した直後ということもあり、ろくに前に進んでおらず、スピードメーターを見るとまだこんな速度だったのかとびっくりします。飛ばした気分になるものの実際のスピードは出ていないという免許にやさしい車です。この車でパトカーに捕まるのは難しそうですし、オービスの光る速度まで達するのが想像できません。これはMazda 3に限ったことではなくアクセラ1.5Lでも同様です。慣れてしまえば最初からアクセルを踏みますので、日本の公道で走る分にはこれで間に合ってしまいます。エンジンは回りますが不快ではありません。上り坂では当然パワーが足りませんが、スポーツモードにすれば同じようにアクセルペダルを踏んでもエンジンが回る分だけパワーが出ます。そもそも上り坂を走る時間なんてそんなに長くありません。街乗りでパワー不足を感じる場合も同様にスポーツモードにすれば加速しますので、乗り慣れない人は最初からスポーツモードにしてしまった方が乗りやすいかもしれません。一定速度で巡航する際にはパワーの無さは気になりませんし、曲がるのや止まるのはパワーと関係ありませんし、ボディの剛性やシャシーの性能はパワーの無い車でも一緒です。これはこれでありだなと思います。むしろ、ファストバックの癖のあるエクステリアには勇ましいエンジン音の1.5Lの方がマッチするのではないでしょうか。たまに遊びで乗る分には楽しい車だと思いますし、近所の買物でゆっくり走っても楽しい気分になります。

ディーゼルエンジン車にはまだ試乗していませんが、デミオディーゼルに乗ってきた経験から推測すると、ガソリンエンジン車に比べて癖がある一方で、長距離巡航には強そうですので、ボディー剛性やシャシー性能を堪能するのは良さそうなものの、その良さにうまくはまってしまうととてつもなく走行距離が延びるのではないかと心配になります。

2L車は派手な外見とは裏腹に中身は素直で穏やかで、見た目の中身とのギャップから、「性格の良いギャル」という印象です(その例えを用いるなら1.5Lは「普通のギャル」でしょうか)。2L車はファストバックよりもむしろセダンの方が似合いそうです。1.5Lならファストバックの方が似合いそうですが、そもそもセダンの設定がありません。MTで乗るなら2Lよりも1.5Lの方が面白そうで、2L車にMTの設定が無いのもわからないでもありません。当然2Lの方がパワーがありますが、車の運動は公道での速度と加速度によって制約されますので、パワーがあればその分速いというわけではありません。

毎日のように乗って、長距離乗って、長く乗り続けるのでしたら素直で穏やかで疲れない車の方が向いているのではないでしょうか。ファストバックの特徴的な外見も、初めて写真で見たときには何だこれはと思いましたが、目が慣れてくるにつれてだんだん良く見えてくるのが不思議です。これも長く付き合うには有利ではないでしょうか。たまにレンタカーで乗るなら1.5L、所有するなら2Lが良いのではないかと思いました。

それにしてもこの車は日本で売るのが難しい車に思えます。エクステリアは目立ちますし、インテリアも値段の割にはしっかりしていますので、そういう部分はわかりやすいのですが、肝心の走りはというと「個性が無いのが個性」みたいな走りですので、日頃から長距離を走り込んでいて「良い車とは長距離を走っても疲れない車である」ということを肌感覚で理解している人なら良さがわかるのでしょうが、あいにく日本のドライバーの大半は長距離を走りませんので、見た目だけの車と思われているようです。少々癖のある1.5L車の方がまだわかりやすいですが、カタログスペック上明らかに非力というのがネックになって、乗ってみれば意外とどうにかなるし実は結構楽しいという所までなかなか到達しません。マツダ車全般に言えることですが、乗ればわかるけれども乗らなければわからないため、文字だけでは伝わりません。こればかりは実際に乗ってみてください、できればレンタカーでも借りて長距離走り込んでくださいとしか言えません。