2023年10月25日のジャパンモビリティーショーにてICONIC SPが発表され、併せてプレスリリースも出ました。
見た目は2022年11月22日の経営計画の発表の際に登場したビジョンスタディと同じです。ただし、前回は白だったのに対して今回は赤であり、RX-7に近くなっています。フロントグリルの周りの縁取りが赤いと、犬が舌を出しているようにも見えます。他社がカクカクしたコンセプトカーばかり発表している中で、キャラクターラインを廃した曲面基調のエクステリアデザインは異彩を放っています。
パワートレインは2ローターのロータリーエンジンによるシリーズハイブリッドで、出力はMX-30 Rotary-EVの2倍の370psとのこと。モーターを後部につければFRであってもドライブシャフトが不要ですが、内装の写真を見る限りではドライブシャフト用のスペースがあるようにも見えます。後輪駆動用のモーターを後部につけたらドライブシャフトなしでFRを実現できますし、エンジンと発電機の横に前輪駆動用のモーターをつけたら比較的容易にAWDにできそうですが、パワートレインの詳細についてはまだわかりません。2シーターかつ幌無しですので座席後部のスペースはトランクルームの分を差し引いても余裕があります。
エンジンは縦置きとの説が有力です。電気モーター駆動車でしたら必ずしもエンジンを縦置きにする必然性がありませんので、横置きにして極力後ろに寄せるやり方もありえますが、縦置きの方がフロントサスペンションのためのスペースを確保しやすいですし、ガソリンエンジン車と設計を共通化しやすいです。
車体サイズはロードスターよりも一回り大きく、全長は265mm、全幅は115mm大きいです。Bセグメントサイズのロードスターに対してCセグメントサイズです。重量は1450kgもありますが、CセグメントとしてはMazda 3のディーゼルとSkyactiv-Xの中間の重量。ロードスターと違って屋根付きなのは車体剛性を確保しつつ最大限に軽量化するためと推測します。MX-30 Rotary-EVよりもかなり軽いですが、車体の軽量化もさることながら、シリーズハイブリッドなので蓄電池搭載量が少ないのではないでしょうか。もしMX-30でシリーズハイブリッド車を作るとしたら、Cセグメントで1500kgくらいでしょうか。同じモーター出力でPHEVよりも重量が2割軽いので、軽快に走りそうです。
ロードスターよりも重いのは蓄電池の重量がかさむことや、ガソリンエンジン車と異なりまだ極限までの軽量化をできていないのかもしれません。普通のシリーズハイブリッドなら蓄電池搭載量をもっと少なく軽くできそうですが、370psの出力を出すためにはエンジンで発電した電力だけでは足りず、ある程度蓄電池からの放電も必要になるでしょうから、その分蓄電池の重量がかさんでいるのかもしれません。
低い車体のどこに蓄電池を置いたのか気になるところです。もしかして、後輪側にモーターを搭載したうえでドライブシャフトのある場所に蓄電池を積んでいるのでしょうか。もしそうだとするとガソリンエンジン車と車体設計を共通化しやすいです。ロータリーエンジンで直接駆動する場合は、後軸付近のモーターのあるであろう場所に変速機を配置すると、エンジンと変速機の間はトルクが小さいためにドライブシャフトが細くて済み、センタートンネルを大きくする必要がありません。重量バランスもシリーズハイブリッドとほぼ同じになります。シリーズハイブリッドの370psは過大に見えますが、ロータリーエンジンで直接駆動する場合には2.5Lレシプロエンジン相当の性能ですので、スポーツカーとしては平均的な水準です。とはいえ、蓄電池を積まない分軽量化できますので、これはこれで軽快な走りが実現しそうです。発電機とモーターと蓄電池の重量を差し引いて変速機の重量を足すと1200kgくらいでしょうか。
どのみちこの重量ではロードスターのようなライトウェイトスポーツカーにはなりえませんので、RX-7後継と位置づけて高出力にしています。走りはテスラのような大容量蓄電池を積んだEVスポーツカーに近いのではないかと推測しますが、EVよりも軽くしていますので燃費を度外視すればロードスターとテスラの中間のような走りでしょうか。
燃費についてはMX-30 Rotary-EVよりも軽量化した分と高出力化した分とが相殺されていそうですが、WLTC燃費は未公表ですのでわかりません。燃費に自信がないのか、水素やカーボンニュートラル燃料を使えるということをアピールしています。カーボンニュートラルでしたらCO2排出量規制に引っかかりません。しかし、それを実現するためにカーボンニュートラル燃料の調達をどうするのかや、液体水素のタンクどどこにどうやって積むのかについては言及がありませんので、現時点の限られた情報のもとでは、燃費が悪いことの言い訳に使っているように見えます。