2016年7月14日木曜日

ついに日本でもアクセラ1.5D発売

しばらく前から噂は出ていましたが、2016年7月14日についにマツダから正式に発表されました(「マツダ アクセラ」を大幅改良)。アクセラの重量だと1.5Lディーゼルエンジンではパワーが足らず、ストップアンドゴーの多い日本の道路では不利なのではないかと考えていました。その割に2Lガソリンエンジンよりもフロントが重くなりますし、ディーゼルエンジンは自然吸気ガソリンエンジンよりも高価ですので、2Lガソリンエンジン車よりも高くて重くて走らない曲がらない車でしたら市場に出す意味がありません。その課題をいかに解決して市場に出せるようにしたのか見ものです。パワーウェイトレシオ12.95kg/psの車が果たしてインプレッサ2Lと競合できるのでしょうか。

【仕様】
《エンジン》
CX-3と同様です。エンジン型式もデミオやCX-3と同じです。

《変速機》
デミオやCX-3と同じ中容量の変速機で、当然変速比も同じです。

《タイヤ・ホイール》
15XDでは16インチのみ、15XD Proactiveは16インチが標準でオプションで18インチ、15XD L Packageでは標準で18インチです。デミオディーゼルは16インチよりも15インチの方がホイールが軽い分だけ出足が軽いので、アクセラも出足の良さや低速域での乗り心地を重視するなら16インチの方が有利です。

《変速比・最終減速比》
UKやドイツのサイトでは開示されていなかった最終減速比が開示されました。4.056です。同じエンジン・同じ変速機を搭載しているデミオディーゼルとCX-3の最終減速比はそれぞれ3.389と3.591で、車輪外径の差を考慮するとデミオとCX-3とでほぼ同じ、アクセラ1.5DはデミオやCX-3よりも2割ほどローギアです。ATの制御にもよりますが、同じ速度ならエンジン回転数は25%増しで、デミオやCX-3が2000回転のときにアクセラ1.5では2500回転、1500回転のときに1800回転です。

マツダのAT車はだいたい2000回転まで上がったらシフトアップして1500回転に下がりますが、アクセラ1.5Dの場合、2500回転まで上がったらシフトアップして1800回転に下るのではないでしょうか。少し踏み込むとすぐに3000回転くらいになりそうです。

最高速度についてはデミオやCX-3が時速185kmくらいで、このときの6速でのエンジン回転数が3250回転くらいですので、アクセラ1.5Dだと約4000回転です。パワーのピークが4000回転ですので、最高速度は同じくらいではないでしょうか。しかし3000回転くらいならまだしも4000回転ですとエンジン音が相当大きくなりますので、あまり実用的ではありません。

最大トルクの発生する2500回転で6速のときの速度が時速120km弱ですので、日本の高速道路で常識的な速度で走る分には余裕を持って走れそうです。デミオのAT車ですと2500回転6速で時速145kmくらいですので、アウトバーンならともかく日本の高速道路では少々元気が良すぎるように思えます。

エンジン回転数が上がるとエンジンノイズが大きくなるものですが、ディーゼルエンジンは低回転域でカラカラ音がしますので、遮音さえしっかりしていればむしろもう少しエンジン回転数が高い方が気持よく走れるかもしれません。もともとアクセラのボディーの方がデミオのボディーよりもお金がかかっていますので、デミオ以降での遮音の技術が反映されていれば遮音の面は有利かもしれません。特にセダンは静粛性と車体剛性の面でハッチバックよりも有利ですし。

デミオと同じくらいハイギアードなCX-3はデミオよりも重量が1割大きいため、高速道路では軒並みおとなしめです。それに対してアクセラ1.5Dではローギアードにしてパワーを絞り出していますので、一般道ではデミオやCX-3よりも元気よく走りそうです。高速道路でもエンジン回転数を上げることでデミオと同じくらいには走りそうです。パワーに余裕のある2.2Dの方がエンジン回転数は低めですが、エンジン回転数が高いのが不快に感じられなければこれもありかもしれません。

デミオディーゼルは高速道路では元気よく走るのですが、一般道で巡航していると退屈な印象があります。アクセラ1.5Dの方が体感速度は高そうですので、速度を抑えて走るには好都合かもしれません。こればかりは実際に走ってみないとわかりませんので、ぜひ試乗してみたいです。

《重量》
AT車で1360kgです。これはデミオよりも2割重く、CX-3よりも7%重いことを意味します。その代わり重量増は主にマルチリンクサスペンションを搭載する後輪側ですので前輪への荷重が63%と、FF車としては標準的な数字で、アクセラ2.0Gとほぼ同じです。アクセラ2.0Gよりも前輪の荷重が50kg大きいですが、もともとの重量が大きいため、前後の荷重バランスにはあまり影響していません。

【今回導入された技術】
《DE精密過給制御》
街乗りでアクセルを踏み込んだ際の出足の鈍さに対処するためのものでしょう。ドライバーの意図した通りに加速すれば、出足の鈍さがあまり感じられなくなります。

《Gベクタリングコントロール》
2.0Gよりも頭が50kgほど重くなりますので、曲がりやすくするためのものでしょう。また、出足を良くするために16インチホイールを履くと高速安定性が若干低下しますので、それを補う意図もあるかもしれません。

《ナチュラルサウンドスムーザー》
アクセラ1.5Dは高めの回転数を常用するでしょうから、さほど効果は見込めないかもしれませんが、2.0Gと同等以上を標榜するのでしたら必要でしょう。

【燃費】
JC08モード燃費で21.6km/Lとのことです。これはデミオディーゼルAT車の燃費の6分の5に相当します。同じエンジン同じ変速機を積んだデミオディーゼルよりも重量が2割増ですので、同じように走れば単純計算では必要な運動エネルギーも2割増しになり、燃費は6分の1ほど悪化します。そのため、燃費の差はほぼ重量の差で説明できます。実燃費については、走らせ方に依存しますので、実際に運転してみないと何とも言えません。

他車との比較では、アクセラ1.5GのJC08モード燃費が20.6km/L、アクセラ2.0GのJC08モード燃費が19.0km/L、アクセラ2.2DのJC08モード燃費が19.6km/Lです。ディーゼルエンジン車の割には数字の差はさほど大きくありませんが、軽油価格の安さと高速巡航時の実燃費を考慮すると、燃料コストの面ではそれなりに有利そうです。しかし走行速度が高くなるとパワーに余裕のある2.2Dの方が実燃費が良いかもしれません。

【CO2排出量】
欧州仕様では99g/kmなのに対し、日本仕様では120g/kmです。計測方法が異なりますのでそのまま比較できる数字ではありませんが、日本では100g/kmを境に税金が違ってくるわけではありませんので、カンパニーカー向けの節税に振っている欧州仕様と異なり、日本仕様では走りに振っているであろうことが見て取れます。

【価格】
UK向けやドイツ向けでは2.0Gより高く2.2Dより安い価格でしたが、日本向けではなんと今までの2.0Gと同じ価格をつけてきました。「2.0Gよりも高くて重くて走らない曲がらない」を懸念しておりましたが、「高い」については問題なさそうです。たしかに1.5Dは同クラスのディーゼルエンジンの中では後処理装置が不要な分コスト競争力が高いものの、それでもターボやコモンレールインジェクタといった高価な補機がついていますので、自然吸気ガソリンエンジンよりもコストが高いはずです。どうやら、2.0Gが「ガソリンエンジン上位モデル」という位置づけで内装が良かったのに対し、1.5Dは「ディーゼルエンジン廉価モデル」ということで内装のコストを下げて値段を合わせたようです。

価格の面で直接競合するのはインプレッサ2Lですが、他にもカローラハイブリッドやホンダシャトルが同じくらいの価格です。

マツダの他社種との比較では、同じグレードで比較した場合の価格差はデミオディーゼル+50万円、アクセラ1.5G+35万円、CX-3-10万円、アクセラ2.2D-40万円くらいです。CX-3よりも安くて後席が広いので、後席重視ならよい選択かもしれません。一方、同じエンジンを積んでいるデミオディーゼルよりも50万円高いです。たしかに足回りはアクセラの方が良いですし、重量バランスも良いですし、重くて平べったい分だけ高速安定性も良好ですし、足回り以外も車格相応の差はありますが、軽いデミオの方が高速道路ではよく走りますので、実質2人乗りとして使うのでしたらデミオディーゼルの方がお値打ち感がありそうです。同じ予算でデミオディーゼルのAWDの最上級グレードを買ってもお釣りが来ます。さらに40万円プラスすれば2.2Dを買えてしまい、こちらは走りに関しては一切我慢不要ですし、全般的に装備も良いので、15XD L Packageを買うくらいでしたらあと10万円足して22XD Proactiveを買う方が魅力的に感じます。

【総評】
思い切ってローギアードにしたことで、たった105psのエンジンであっても実用的な速度域ではよく走るようになっているのではないでしょうか。CX-3よりも安く、CX-3よりも広く、CX-3よりも軽快に走り、CX-3よりも前後の重量バランスが良く、CX-3よりも足回りがしっかりしているという点では、CX-3よりも一般受けするのではないかと想像します。走りや乗り心地については試乗してみないとわかりませんが、高速道路でのパフォーマンスについては通常のディーラーでの試乗ではわかりませんので、ある程度時間をかけて乗ってみたいものです。レンタカーで乗れればよいのですが。

しかし高コストのディーゼルエンジンの宿命で内装のコストを切り詰めてもそれなりの価格になってしまい、2.2Dと比較した場合、内装の差を考慮した実質的な価格差がさほどありません。しかしそれでも2.2Dはアテンザ並に高級になってしまいましたので、「そこまでは必要ない」と考える方もいらっしゃることでしょう。