2018年12月21日金曜日

もしかしてSPCCIは燃焼室が大きい方が有利だったりしないだろうか

エンジンについては何も知りませんので見当外れである可能性が高いのですが、圧縮着火で排気量2Lというのはあまり筋が良くなかったりしないだろうかという素朴な疑問です。

一般論としてガソリンエンジンは火花着火のため燃焼室が大きくなると火炎が行き渡らないという弱点があります。そのため気筒当たりの排気量の上限は600ml程度で、排気量を増やすためには気筒数を増やす必要があります。直4なら2.5L、V6で3.7L、V8で5Lくらいが上限ではないでしょうか。理想空燃比で燃料噴射を増やそうとしたら過給機で燃焼室内の空気の量を増やすしかありません。

一方圧縮着火のディーゼルエンジンは大型のエンジンを作るのが容易な反面、排気量が小さくなると熱損失が大きくなり環境性能と動力性能とを両立させるのが難しくなります。そういうわけで一般にはガソリンエンジンは乗用車向け、ディーゼルエンジンは大型車や鉄道や船舶向けという役割分担がなされています。

完全な圧縮着火のHCCIでしたらディーゼルエンジンと同様に気筒当たりの排気量が大きい方が有利なのではないかと思えます。火花着火を併用するSPCCIであっても、燃焼室内のすべての燃料を火花着火で燃やす必要はなく、火球の膨張で圧縮着火するなら燃焼室容積の上限は通常の火花着火エンジンよりも大きかったりしないでしょうか。直4の2Lでしたら通常の火花着火でも燃焼室内の燃料を燃やすことができますので、圧縮着火の長所を活かしきっていないのではないでしょうか。

また、燃焼室の容積が小さいと希薄燃焼のためにスーパーチャージャーで空気を多めに取り込む必要がありますが、燃焼室の容積が大きければ自然吸気でも空気を多めに取り込めます。理想空燃比の倍の空気を取り込みたければ直4で4Lとか、あるいは小さいサイズの車向けには直4で3Lとかの方がシンプルではないでしょうか。低負荷域では吸気と燃料噴射を絞れば済みますし、理想空燃比で火花着火に切り替えるなら吸気のみを絞って燃焼室中央付近でのみ燃焼させれば済むことで、いずれにせよ過給よりも簡単なはずです。気筒が大きくなれば機械抵抗損失では不利ですが、わざわざスーパーチャージャーをつけてエンジン出力の一部を過給に振り向けるのだって損失ですので、あとはどちらの方がましかという問題です。

理想空燃比での火花着火との切り替えを迅速に行いたければ、もはや妄想ですが日産の可変圧縮比エンジンのようなギミックで圧縮時の燃焼室容積を瞬時に切り替えたりする方が、少なくともスーパーチャージャーよりは筋が良さそうに見えます。

もともと欧州では排気量による課税ではなく出力による課税ですので、排気量を大きくしても税制面で不利になることはありません。排気量課税の日本でもハイブリッド車や電気自動車の普及に対応すべく今後走行距離課税に切り替えることが議論されています。日本では排気量2Lで5ナンバーの壁がありますが、既にデミオ以外はすべて3ナンバーです。そろそろ排気量を小さくすることにこだわる必要が無くなるのではないでしょうか。

(追記)調べてみたら、「技術的にはもっと排気量を大きくしたい」というインタビュー記事がありました。
排気量を増やすと、リーンバーン(希薄燃焼)領域を簡単に広げられるわけですよ。排気量を増やすだけならタダみたいなもの。タダで燃費を良くできるわけで、もうちょっと大きくしたいという思いはありますよね。
もし2.0Lの壁があるのでしたら、サイズの小さいデミオ用に2.0Lでスーパーチャージャー無しの1.3L相当で1.5L並の出力特性のエンジンがあってもよいのかもしれません。 普通の1.5Lエンジンよりもトルクが太くなりそうですし、1.5Lディーゼルエンジンで欧州や米国の環境規制に適合するよりは容易ではないでしょうか。

あるいはアテンザでしたら2.0Lの壁を意識する必要はないでしょうから、直4の4LでV6の3.7L相当の性能を持たせればエンジンの製造コストも安くなって一石二鳥ではないでしょうか。V6の3.7Lエンジンはおろか直6の3Lエンジンよりもコストが安いでしょうし、排気管の取り回しでも6気筒よりも4気筒の方が有利です。