2025年2月23日日曜日

そもそも今のマツダの操安設計思想はSUVに向いていないのではないか

マツダといえば初めて作ったSUVのCX-5が大ヒットして一躍SUVメーカーとなったわけですが、その後世の中の流行に合わせて様々なサイズのSUVを出しても共通するのは、マツダらしい走る喜びを感じられる走りです。操縦安定性能重視かつ人間工学を反映させた操安設計理論に基づき、素直に曲がったり、車体が人間の直感に反する挙動をしなかったり、乗車時に体が揺さぶられたりしなかったりといった美点がある一方で、フワフワした動きを排除するために足を硬くしたり、乗り心地を犠牲にしたりしていますので、気にいる人は気にいるでしょうが、従来の車の乗り味を好む人には不評なようです。

体が揺さぶられるのを排除しようとしたら、そもそも着座位置を下げるべきなのではないでしょうか。重心が高ければ揺れるのは当然です。二階建てグリーン車だって二階席は揺れますし一階席は揺れません。重心の高い車で揺れるのを抑え込もうとしたら重心の低い車以上に足を硬くせざるを得ませんが、そうすれば重心の低い車よりも足が硬くなります。しかも、着座位置の低いスポーツカーで足が硬いのは許容できますが、着座位置の高いSUVで足が硬くて乗り心地を犠牲にすれば不満の声も出るでしょう。同じプラットフォームのMazda 3とCX-30とを乗り比べてみると、たしかにCX-30の方が売れ筋のパッケージングですし、明らかに後席の同乗者にやさしいですが、その一方でMazda 3の方が第7世代の操安設計思想がより反映されていますし、着座位置が低いため、そこまで乗り心地に不満があるわけでもありません(300万円の車と700万円の車とで要求水準が違うからというのもありますが)。CX-30もなかなかよくできていると思いますが、これで重心がもっと低かったらとも思います。

重心だけでなく重量についても、大きくて重い車であればその分足を硬くする必要があります。SUVは同じ車格の他の車に比べて大きくて重い傾向があります。

今の操安設計理論は基本的に重心の低い車向けであり、第7世代以降のSUV(主にラージプラットフォーム)は操安設計とパッケージングとの間に本質的な齟齬があるのではないでしょうか。本質的に無理がある中で開発しようとするからあちこちに設計の歪みが出て、やろうとしていることとできていることとの間に差異が生じ、品質問題まで発生しているのではないでしょうか。もしラージプラットフォームの最初の車がCX-60ではなくMazda 6だったらもっと素直に設計できたのではないでしょうか。35年以上ロードスターを作り続けて走る喜びを体現していますし、RX-7などの専用設計のスポーツカーの歴史はさらに長いのですから、FRの車を設計する能力がないはずがありません。

別に車高の高い車を作ってはいけないということではなくて、ホンダは重心や車体剛性で不利なミニバンでもまっすぐ走る車を作れています。ミニバン作りの歴史が長いからこそ車内空間の広いパッケージングと操縦安定性能とを高い次元で両立できているのでしょう。一方、マツダの現在の操安背系思想はSUVとの整合を取れるものなのでしょうか。

CX-5が登場したときは画期的でしたし、今でもマツダの屋台骨を支える基幹車種ですが、今の猫も杓子もSUVを作る時代にどうしてマツダがSUVの流行に追随しなければならないのでしょう。今はSUV以外は売れないとか北米はピックアップトラック社会だからといったマーケットイン的な発想以外で、「マツダはなぜSUVを作るのか」を理路整然と説明できるでしょうか。現在の操安設計思想を体現するのに最もふさわしいパッケージは何なのかをよく考えて、それを説明できるでしょうか。

2025年2月10日月曜日

レンタカーでCX-30マイルドハイブリッド車に乗ってみました

タイムズカーレンタルのC2クラスを予約した際、どうせアクアだろうと思いきや、CX-30に当たりました。このクラスでマツダ車といえばMazda 3の1.5Lですので少し得をした気分になりました。折しもCX-30は初めてですし、マイルドハイブリッド車も初めてでしたので、それらを試す機会になりました。

【パワートレイン】
乗る前はマイルドハイブリッドがついただけでそんなに違うのだろうか、ハイブリッドと呼ぶほどのものかと思いましたが、エンジン回転数が少なくてもトルクの不足を感じることなく加速できるようになりましたので楽に運転できるようになり、少々ディーゼルエンジン寄りの感覚になりました。モーターアシストによる不自然な動きを感じることはありませんでしたし、どこでモーターアシストがきいているのかもわかりませんでした。燃費はストロングハイブリッドに到底及びませんが、走りはハイブリッド的なのかもしれません。ツアラーとしては良いのではないでしょうか。CX-30よりも少し軽いMazda 3の2Lエンジン車ならもっと軽快に走れるだろうかと期待します。Skyactiv-Gにマイルドハイブリッドをつけるだけでも運転感覚が変わるのでしたらSkyactiv-Xとは何だったのかと思いました。高速域での追い越し加速では2Lエンジン車そのものですので、燃費はともかくパワーに不足を感じることはありません。

高速道路の速度域ではほぼエンジンだけで走りますので、そういう用途でしたら比較的コストの安いマイルドハイブリッドもありかもしれません。欧州の自動車メーカーがマイルドハイブリッドに力を入れるのもそのような理由からでしょう。しかしマツダの6ATは高速域で燃費が悪いので、もう少しどうにかならないものかと思います。たしかに電気モーターは高回転ではトルクが出ませんのでエンジンだけで頑張らざるを得ないでしょうが、低速域でモーターアシストがある前提でもう少しハイギアードにしたりできないものでしょうか。現在でも2Lエンジン車の最終減速比はディーゼルエンジン車と同じ4.367ですが(Mazda 3よりも少し大きいですが、CX-30の方が車輪径が大きいので、最終減速比は高めになります)。

【ブレーキ】
もともとMazda 3のブレーキは踏力でコントロールするタイプで慣れると扱いやすいのですが、マイルドハイブリッドではブレーキ・バイ・ワイヤを採用しているため、踏力でコントロールする感覚は薄れました。回生ブレーキとの協調制御はよく作り込まれていると感じましたが、まだ慣れていないのか停止直前に滑らかに停止させるのが難しくて、ブレーキペダルを離しても意図しない制動力と衝動が発生しました。

【ハンドリング】
車高が高いためあまり機敏な印象はありませんでしたがGVC+のおかげか意図した通りに曲がることはできましたのでツアラーとしては十分だと思います。ハンドリングを楽しむなら車高の低いMazda 3でしょうね。CX-30でも曲がれるのですが、気持ちよく曲がれるわけではありません。

【ホイールとタイヤ】
SUVですので215/55R18とMazda 3と同じく18インチながら幅も外径も大きくエアボリュームが多めです。だからといってMazda 3よりも著しく乗り心地が良いかというとそうではなく、基本的な設計思想は同じと感じました。エアボリュームよりもバネ下重量が大きくなったことによるフライホイール効果を感じました。最近の流行だから仕方ないのですが、舗装された公道を走るのにこんなに大きなタイヤが必要なのでしょうか。タイヤは新車装着タイヤから履き替えているようで、レンタカーですのでブリジストンのPlayzというBluEarthと同じクラスのエコタイヤでした。もう1ランク上のコンフォートタイヤを履いたら(Regnoは高いでしょうからAdvan dbとか)静かで乗り心地が良くなるかもしれません。

【運転席】
最低地上高が高くなったわけではありませんので、窓の位置が高くなり腰高な印象を受けます。また、ボンネットとダッシュボードの位置が高いと感じました。さすがに天井が高いのは楽ですが。MX-30のEVに試乗した際には着座位置が高くて落ち着きませんでしたが、CX-30の場合はシートリフターで目一杯座面を下げればそこまで着座位置が高いという印象はなく、比較的乗りやすいと思います。

【後席】
せっかくですので後席にも座ってみました。後席の居住性はMazda 3よりもかなり良いです。天井が高いですし側窓の天地寸法も確保されています。前席の運転席と助手席との間隔を開けているようで前方の見通しも良いです。Mazda 3には無い後席のエアコン吹き出し口もあります。ファミリーカーとしてはMazda 3よりもCX-30ですね。

【燃費】
郊外路中心で走って18km/L程度。CX-30の方が車体が重いので、マイルドハイブリッドの効果は1km/Lくらいは出ていそうです。高速道路では15km/L程度で、高速道路ではほぼエンジンだけで走りますので、これはエンジンの実力通り。満タン法による平均燃費は17.5km/Lでした。高速道路走行時の数字が足を引っ張っています。

諸元表を見ると、WLTC平均燃費が16.2km/L、郊外モードが16.7km/L、高速道路モードが18.0km/Lとありますが、高速道路でこんな燃費が出たことがありません。一体どれだけゆっくり走ったらこんな燃費が出るのでしょうか。クルーズコントロールで巡航したってこんな燃費で出ません。一方、郊外路なら16.7km/Lどころか18km/Lくらいは出ます。

速度計の左の瞬間燃費計は40km/Lより上の領域で、充電時に充電電力が表示されます。アクセルを離す程度では充電されず、ブレーキを踏んで減速したときのみ充電されていました。公道で普通にブレーキを踏む分には充電ゲージが振り切れることがほとんどありませんでした。蓄電池やオルタネーターの容量からしてそもそも減速時の運動エネルギーの一部しか回収されていないのかもしれません。

2025年2月2日日曜日

アテンザ後継でMazda 3のセダンに2.5Lエンジンを積めないものだろうか

Mazda 6が廃盤になってしまい、ラージプラットフォームでも復活の見込みがありません。中国のEZ6の欧州版がMazda 6eとして登場するようですが、これは中身は中国製電気自動車でありエンジンで動く車ではありません。一方、Mazda 3は車格は一つ下ですが、内外装の質感は高いですし、コストの割には操縦安定性能もなかなかよく頑張っていると思います。GJアテンザよりは小さいですが、初代GG型や2代目のGH型とほぼ同じサイズ、同じ重量です。安全性能確保のために車が年々大きく重くなっているためです。電装品も増えましたので、価格も同じくらいでしょう。これらは2Lエンジンを積んでいて、日本仕様のMazda 3セダンだって2Lエンジンを積んでいるのだからよいではないかという考えもあるでしょうが、同じ排気量でもMZRエンジンとSkyactivエンジンとでは特性が異なり、Skyactivエンジンは熱効率重視でパワーが犠牲になっていますので、もう少し排気量がほしいところです。北米仕様や欧州仕様のMazda 3では2.5Lエンジンを積んでいますので、日本向けのセダンでもこれを積めばアテンザの受け皿にならないものでしょうか。既にあるものを出すだけでしたら開発費はかかりませんし(型式認定の手間はかかるでしょうけど)。