2025年3月26日水曜日

マツダのストロングハイブリッドシステム

マツダのストロングバイブリッドシステムがどんな感じなのかを、「どうせTHSⅡをいじったものだろう」といい加減に予測したら見事に外しました。日経クロステックのインタビュー記事に概要が出ました。エンジンと変速機との間にモーターのあるパラレルハイブリッドとのこと。機器構成上はマイルドハイブリッドのモーター・発電機と蓄電池の容量を大きくしたような感じでしょうか。要は電力回生できて蓄電した電力でモーターアシストできればよいわけですから、あとは制御次第でしょうか。マツダ独自の方式でやるなら、シンプルなシステムでないと制御ソフトウェアの開発が追いつきそうにありません。

シンプルに制御するなら、モーターのトルクの大きい低速域ではモーター駆動(ただし蓄電池残量が十分にないときにはエンジン駆動)、ある程度速度が上がってきたらエンジンを始動して、モーターよりもエンジンの方が効率的な領域ではエンジン直結駆動といった感じでしょうか。減速時には原則として回生ブレーキを使い、連続下り勾配で蓄電池容量がいっぱいになったらエンジンブレーキに切り替えでしょうか。

エンジンの熱効率は自信があるようで、低負荷の一部領域を除くほぼ全域で熱効率の良い領域だとしています。もし本当にその通りにできるのでしたら電力回生で得られた電力でモーターを回す以外はエンジンで駆動する方が効率的で、わざわざエンジンで発電してからモーターを回すといった効率の悪いことをする必要がありません。ハイブリッド車は、エンジンが苦手な領域をモーターに肩代わりしてもらうことでエンジンの熱効率の良い領域だけを使って燃費を改善するものだからです。ただし、SKYACTIV-Zに特化したハイブリッドシステムにしてしまうと、もしSKYACTIV-Zがこけたら一蓮托生です。

従来の変速機はそのまま使うようで、マツダの6ATはCVTよりもレシオカバレッジが狭いせいで高速道路モード燃費すらCVT車に負けていますが、低速域でのモーター駆動を前提にハイギアードにするのではないかと予想します。電気モーターはゼロ回転から最大トルクを出す一方で高回転に弱いので、電気モーターは低速域に特化した方がよいでしょう。また、モーター回転数を抑えるためにはなるべくハイギアードにした方が有利です。

燃費の数字は公表されていませんが、カローラハイブリッドの実燃費が25km/Lくらいですので、Cセグメントならこれくらい、一回り大きいCX-5なら20〜25km/Lくらい出れば合格でしょう。SKYACTIV-G1.5を積むMazda 3の1.5Lの実燃費がなんと20km/Lくらい。エンジン自体の熱効率向上と電力回生で25km/Lをクリアするのはそんなに難しくなさそうです。Mazda 3の2Lの実燃費は15km/Lくらいですので、そこを起点にすると相当がんばらなければなりませんが。

ハイブリッド無しの廉価版の場合、モーターアシストによってハイギアードにすることができませんので、高速域での燃費を犠牲にしてローギアードにするのでしょうか。たまにしか高速道路を走らない人にとってはそれで十分だったりします。それでも、エンジン単体で1.5Lターボ相当だとすれば、Mazda 3の1.5L車相当の燃費とMazda 3の2L車相当のパワーを獲得できそうです。

2025年3月23日日曜日

もしSKYACTIV-ZをBセグメント車に積むなら

SKYACTIV-Zは2.5Lエンジンで、CX-5では2027年にハイブリッド車として登場することになっています。おそらくスモールプラットフォームの標準エンジンになるでしょうから、Mazda 3やCX-30といったCセグメント車にはハイブリッド車として搭載されるでしょうし、もしかしたら廉価版としてエンジンだけのタイプも出てくるかもしれません。マツダは、SKYACTIV-Zは、SKYACTIV-GはおろかSKYACTIV-Xよりも熱効率の良い領域(いわゆる目玉の領域)が広いとしており、アイドリング以外のほぼ全域で熱効率が良いとしていますので、もし本当にそうであれば、モーターアシスト無しでエンジン単独で駆動するのも問題なさそうです。

ヤリスハイブリッドと普通のヤリスはともに1.5Lガソリンエンジンを積んでいますが、動力性能はどちらも同じくらいで、走りだけなら普通のガソリンエンジン車でもよいのではないかと思えてきます。ガソリンエンジン車にはモーターアシストも電力回生もありませんので、燃費性能ばかりはどうにもなりませんが。2.5LのSKYACTIV-Zはおそらく1.5Lターボエンジン相当の性能なのではないかと予想していますが、1.5LターボエンジンはBMWの1シリーズやMINIといったBMWのFF車では広く採用されていますので、Cセグメント車の重量であればエンジン単独で走るのでも動力性能に不足はないでしょう。ただし、エンジン単独で走るためには変速機が必要で、今のFF車向けの6ATではCVTよりもレシオカバレッジが狭いため、高速道路モード燃費がCVT車に負けるという情けないことになっています。燃費性能の水準が底上げされることで高速道路モードの燃費が気にならなくなればよいのですが。

そもそもマツダがBセグメント車を新たに開発するかどうか不確かですが、パワートレインが同じであれば車両重量が軽ければ軽いほど燃費で有利です。Bセグメント車であってもエンジンルームにスペースを取ることさえできればハイブリッド無しでエンジンだけ積むのはありなのではないでしょうか。現在Mazda 2のエンジンは1.5L自然吸気エンジンですので、ハイブリッドなしでも動力性能は十分にありそうです。燃費を良くするためには排気量を増やすのが一番簡単で、かつて人見氏はインタビューにおいて、「デミオに最も適したエンジンは2.5L」と発言されていました。排気量に余裕を持たせた分を燃費向上に振り向ければ、Cセグメントのガソリンエンジン車よりも燃費が良くなりそうです。Bセグメント車は価格を抑えるためにコストを抑える必要がありますが、ありもののエンジンをポン付けするだけが最もコストが安そうです。

もっとも、Bセグメント車ではストップアンドゴーが多いことが想定されますので、電力回生で燃費性能を稼ぐ方が燃費が良くなりそうですのです。しかし、Bセグメント車にCX-5と同じ2.5Lエンジン(実質1.5Lエンジン相当であっても)+ハイブリッドではオーバースペックな印象を受けますし、Bセグメント車にCX-5並のコストをかけられるとも思えません。廉価版はSKYACTIV-Zのエンジンのみのグレード、上級グレードは省スペースのロータリーエンジン+シリーズハイブリッドだったりするのでしょうか。欧州で売るためには高速道路での動力性能や燃費性能も必要ですので、果たしてシリーズハイブリッドで大丈夫なのかとか、ロータリーエンジン自体の熱効率はどうなのかといった問題がありますので、ロータリーエンジン+シリーズハイブリッドはすぐには出せないのではないかと予想します。

マツダはSKYACTIV-Zの技術をラージプラットフォームのエンジンやロータリーエンジンにも応用するとしていますので、燃費性能の向上したロータリーエンジンが楽しみです。ロータリーエンジンは燃焼室の形状がいびつですので火花着火では燃焼効率に限界がありますが、もしロータリーエンジンで圧縮着火を実現できれば、ロータリーエンジンの弱点の一つを解消できそうです。

2025年3月19日水曜日

SKYACTIV-Zはどのようなエンジンなのか

2025年3月18日にマツダは「マツダ、電動化のマルチソリューションを具現化する「ライトアセット戦略」を公表」というプレスリリースを発表しました。その中ではSKYACTIV-Zにも触れられています。

まず、SKYACTIV-Zは2027年にCX-5のハイブリッド車用のエンジンとして搭載されるとあります。エンジンのシルエットは、たしかに直列4気筒エンジンの右側に出っ張りがあり、形からしてハイブリッドシステムであると予想できます。

前から出ているSKYACTIV-Zの売り文句は「λ1燃焼」と「超希薄燃焼」というもので、前者は理想空燃比燃焼のことですが、理想空燃比燃焼と超希薄燃焼というのは国語的に両立しがたいです。しかし「過給しない」と読み替えれば、ごく普通の超希薄燃焼であり、それは燃料噴射量を絞れば可能です(それでしっかり燃焼させるのは簡単ではありませんが)。ただしそれではパワーが出ませんので排気量を拡大することが予想されます。プレゼン資料の中には「排気量拡大」という言葉も記載されています。SKYACTIV-Xのようにわざわざスーパーチャージャーをつけて可変排気量にするくらいでしたら、最初から排気量を拡大する方が圧倒的にコストが安いです。ボアとストロークが少し大きくなるだけですのでタダみたいなものです。排気量拡大による燃費向上は、既にラージプラットフォーム向けの3.3Lディーゼルエンジンで実現しています。また、排気量を拡大すれば壁面からの熱損失を低減することができます。SKYACTIV-Zでは遮熱に取り組んだとされていますが、他にどのような手段で遮熱に成功したかはまだ公表されていませんのでわかりません。素人考えでは、エンジンの物理的な断熱は既にSKYACTIV-Xで実現していますので、これ以上改善するとしたらエンジン冷却水の制御を最適化することでエンジン冷却に伴う熱損失を低減できるものだろうかと思いますが。

CX-5向けのエンジン排気量は2.5Lとあります。これは現行CX-5のガソリンエンジンの排気量と同じです。Mazda 3も北米版と欧州版では2.5Lです。排気量を拡大して2.5Lにしたのでしたら、実質1.5Lエンジンなのか2Lエンジンなのか知りませんが、たしかに単体ではCX-5にはパワーが不足します。そこでハイブリッド車としてモーターアシストすれば出力の不足を補えそうです。電動化を前提に小型化すれば、排気量拡大と小型化とが相殺して、結局普通のサイズになります。高速道路では電気モーターはあまり役に立ちませんが(電気モーターは回転数が上がると逆起電力により回転数が伸び悩む)、そういうときには普通の火花着火の自然吸気2.5Lエンジンとして使えばよいわけです。速度域の高い欧州では高速域での燃費が重要で、そうなると電動化だけでは対応しきれませんので、エンジン自体の熱効率向上も求められるでしょう。排気量を変えずに可変排気量エンジンと同じことを実現するのでしょうか。一方、低負荷では圧縮着火による希薄燃焼を活用して燃料噴射量を極端に絞るのでしょうか。トルクが不足する分は電気モーターで補えばよいわけです。マツダのSCPPIでは圧縮着火と火花着火とを連続的にコントロールできますので、負荷や回転数ごとに燃料噴射と火花着火のマッピングを精緻化しているのかなといい加減に推測しますが、詳しいことはわかりません。SKYACTIV-Xの頃に比べればAI技術も発達しているでしょうし、Xでのデータも蓄積していますから、Xの頃にできなかったことができるようになったのかもしれません。

圧縮比がどうなるのか気になるところです。圧縮着火なら圧縮比が高い方が有利ですが、火花着火ではノッキング防止のために圧縮比に上限があります。SKYACTIV-Xの圧縮比は15、SKYACTIV-Gの圧縮比は13〜14です(欧州レギュラーガソリン仕様で圧縮比14、日本レギュラーガソリン仕様で圧縮比13、ただしMazda 2の1.5Lエンジンは渦燃焼により日本レギュラーガソリン仕様でも圧縮比14を実現)。圧縮比14と15との間のギャップを埋めることができれば火花着火と圧縮着火とを両立できるわけです。SKYACTIV-Xの圧縮比15に寄せることができれば燃費が良くなりそうです。

SKYACTIV-Zと組み合わされるマツダ独自のハイブリッドシステムがどのようなものであるかもまだ公表されていません。素直に考えればスクラッチから開発する余裕はないでしょうから、トヨタが開放しているTHSⅡの技術をベースにマツダのエンジンに合わせて最適化したものではないかと推測します。THSⅡはトヨタのエンジンに最適化されていて、同じシステムを使うと結局トヨタのエンジンと同じ仕様に収斂してしまうためです。そのままではマツダ独自に高効率エンジンを活かすことができません。といっても、ハードウェアは同じで、エンジンと一体で制御ソフトウェアを開発しているのではないでしょうか。THSⅡベースのシステムなら変速機としての機能もあります。従来の変速機を積む必要がなくなりますし、6ATではレシオカバレッジがCVTよりも狭くて、高速域での燃費を改善できませんので、ATを刷新する代わりにハイブリッドを積むのはありではないでしょうか。ハイブリッドシステムとの組み合わせで全体としてどのようなシステムになるのか楽しみです。

2025年3月18日火曜日

もしかして現在のマツダ車の操縦安定設計思想のもとではエアサスペンションが向いているのだろうか

マツダの第7世代車の操縦安定設計思想は、車体の左右動を抑え込むことで体が左右に揺さぶられることを防ぐことと、車体が人間の直感に反した不自然な動きをすること防ぐことが重視されています。従来は路面からの入力で発生する力を後ろに逃がしていましたが、そうすると車体がフワフワします。車体をフワフワさせなければ路面からの入力は上下動という形で直接車体に入ってきます。人間の体は上下動には適応できるので揺れが一発で収束する方がよいとか、骨盤を立てて座れば気にならないとかいうものの、それでも気になる人にとっては気になるでしょう。

鉄道車両では旅客車についてはだいぶ昔から空気ばね台車(エアサスペンション)が常識です。一方、自動車でエアサスペンションを採用しているのは、一部の高級車と、精密機械や美術品といったデリケートなものを運ぶトラックや、高速バスに限られています。空気バネ台車の電車とコイルばね台車の電車(昔の国鉄103系や113系)とを乗り比べると、空気バネ台車の方が路面からのゴツゴツした入力が緩和されています。かつて小田急で長らく採用していたアルストムリンク式(平行リンク式)の台車は、軌道が悪いと路面からの入力がゴツゴツするという理由で他社では廃れましたが、小田急では空気ばね台車との組み合わせで相性が良いという理由で、小田急だけは長らく採用していました。小田急は軌道が良いこともあって、上下動が小さく、氷の上を滑るような乗り心地でした。

鉄道車両の台車の軸箱支持方式には様々なものがありますが、そこで共通しているのは軸箱の前後動を抑えつつ上下動だけさせるというものです。この辺りも現在のマツダ車の操縦安定設計思想に類似していいます。安価なものは摺板で支持するペデスタル式ですが、高価なものだと円筒案内式だったり、最近の主流はトーションビーム式に類似の軸梁式やリンク式です。鉄道車両の車輪は車軸式ですので、左右動の考慮は不要です。

でしたら、マツダ車にエアサスペンションを採用すれば、劣後されてしまったハーシュネスの解消の役に立つのではないでしょうか。さすがに安いスモールプラットフォームに高価なエアサスペンションを採用したらコストが合わないでしょうが、ラージプラットフォームの車には600万円とか700万円とかするものもあるのですから、その値段にふさわしい乗り味の車があってもよいのではないでしょうか。

2025年2月23日日曜日

そもそも今のマツダの操安設計思想はSUVに向いていないのではないか

マツダといえば初めて作ったSUVのCX-5が大ヒットして一躍SUVメーカーとなったわけですが、その後世の中の流行に合わせて様々なサイズのSUVを出しても共通するのは、マツダらしい走る喜びを感じられる走りです。操縦安定性能重視かつ人間工学を反映させた操安設計理論に基づき、素直に曲がったり、車体が人間の直感に反する挙動をしなかったり、乗車時に体が揺さぶられたりしなかったりといった美点がある一方で、フワフワした動きを排除するために足を硬くしたり、乗り心地を犠牲にしたりしていますので、気にいる人は気にいるでしょうが、従来の車の乗り味を好む人には不評なようです。

体が揺さぶられるのを排除しようとしたら、そもそも着座位置を下げるべきなのではないでしょうか。重心が高ければ揺れるのは当然です。二階建てグリーン車だって二階席は揺れますし一階席は揺れません。重心の高い車で揺れるのを抑え込もうとしたら重心の低い車以上に足を硬くせざるを得ませんが、そうすれば重心の低い車よりも足が硬くなります。しかも、着座位置の低いスポーツカーで足が硬いのは許容できますが、着座位置の高いSUVで足が硬くて乗り心地を犠牲にすれば不満の声も出るでしょう。同じプラットフォームのMazda 3とCX-30とを乗り比べてみると、たしかにCX-30の方が売れ筋のパッケージングですし、明らかに後席の同乗者にやさしいですが、その一方でMazda 3の方が第7世代の操安設計思想がより反映されていますし、着座位置が低いため、そこまで乗り心地に不満があるわけでもありません(300万円の車と700万円の車とで要求水準が違うからというのもありますが)。CX-30もなかなかよくできていると思いますが、これで重心がもっと低かったらとも思います。

重心だけでなく重量についても、大きくて重い車であればその分足を硬くする必要があります。SUVは同じ車格の他の車に比べて大きくて重い傾向があります。しかもSUVは車格以上に太くて大きいタイヤを履く傾向がありますので、バネ下重量が大きくなります。

今の操安設計理論は基本的に重心の低い車向けであり、第7世代以降のSUV(主にラージプラットフォーム)は操安設計とパッケージングとの間に本質的な齟齬があるのではないでしょうか。本質的に無理がある中で開発しようとするからあちこちに設計の歪みが出て、やろうとしていることとできていることとの間に差異が生じ、品質問題まで発生しているのではないでしょうか。もしラージプラットフォームの最初の車がCX-60ではなくMazda 6だったらもっと素直に設計できたのではないでしょうか。35年以上ロードスターを作り続けて走る喜びを体現していますし、RX-7などの専用設計のスポーツカーの歴史はさらに長いのですから、FRの車を設計する能力がないはずがありません。

別に車高の高い車を作ってはいけないということではなくて、ホンダは重心や車体剛性で不利なミニバンでもまっすぐ走る車を作れています。ミニバン作りの歴史が長いからこそ車内空間の広いパッケージングと操縦安定性能とを高い次元で両立できているのでしょう。一方、マツダの現在の操安背系思想はSUVとの整合を取れるものなのでしょうか。

CX-5が登場したときは画期的でしたし、今でもマツダの屋台骨を支える基幹車種ですが、今の猫も杓子もSUVを作る時代にどうしてマツダがSUVの流行に追随しなければならないのでしょう。今はSUV以外は売れないとか北米はピックアップトラック社会だからといったマーケットイン的な発想以外で、「マツダはなぜSUVを作るのか」を理路整然と説明できるでしょうか。現在の操安設計思想を体現するのに最もふさわしいパッケージは何なのかをよく考えて、それを説明できるでしょうか。

2025年2月10日月曜日

レンタカーでCX-30マイルドハイブリッド車に乗ってみました

タイムズカーレンタルのC2クラスを予約した際、どうせアクアだろうと思いきや、CX-30に当たりました。このクラスでマツダ車といえばMazda 3の1.5Lですので少し得をした気分になりました。折しもCX-30は初めてですし、マイルドハイブリッド車も初めてでしたので、それらを試す機会になりました。

【パワートレイン】
乗る前はマイルドハイブリッドがついただけでそんなに違うのだろうか、ハイブリッドと呼ぶほどのものかと思いましたが、エンジン回転数が少なくてもトルクの不足を感じることなく加速できるようになりましたので楽に運転できるようになり、少々ディーゼルエンジン寄りの感覚になりました。モーターアシストによる不自然な動きを感じることはありませんでしたし、どこでモーターアシストがきいているのかもわかりませんでした。燃費はストロングハイブリッドに到底及びませんが、走りはハイブリッド的なのかもしれません。ツアラーとしては良いのではないでしょうか。CX-30よりも少し軽いMazda 3の2Lエンジン車ならもっと軽快に走れるだろうかと期待します。Skyactiv-Gにマイルドハイブリッドをつけるだけでも運転感覚が変わるのでしたらSkyactiv-Xとは何だったのかと思いました。高速域での追い越し加速では2Lエンジン車そのものですので、燃費はともかくパワーに不足を感じることはありません。

高速道路の速度域ではほぼエンジンだけで走りますので、そういう用途でしたら比較的コストの安いマイルドハイブリッドもありかもしれません。欧州の自動車メーカーがマイルドハイブリッドに力を入れるのもそのような理由からでしょう。しかしマツダの6ATは高速域で燃費が悪いので、もう少しどうにかならないものかと思います。たしかに電気モーターは高回転ではトルクが出ませんのでエンジンだけで頑張らざるを得ないでしょうが、低速域でモーターアシストがある前提でもう少しハイギアードにしたりできないものでしょうか。現在でも2Lエンジン車の最終減速比はディーゼルエンジン車と同じ4.367ですが(Mazda 3よりも少し大きいですが、CX-30の方が車輪径が大きいので、最終減速比は高めになります)。

【ブレーキ】
もともとMazda 3のブレーキは踏力でコントロールするタイプで慣れると扱いやすいのですが、マイルドハイブリッドではブレーキ・バイ・ワイヤを採用しているため、踏力でコントロールする感覚は薄れました。回生ブレーキとの協調制御はよく作り込まれていると感じましたが、まだ慣れていないのか停止直前に滑らかに停止させるのが難しくて、ブレーキペダルを離しても意図しない制動力と衝動が発生しました。

【ハンドリング】
車高が高いためあまり機敏な印象はありませんでしたがGVC+のおかげか意図した通りに曲がることはできましたのでツアラーとしては十分だと思います。ハンドリングを楽しむなら車高の低いMazda 3でしょうね。CX-30でも曲がれるのですが、気持ちよく曲がれるわけではありません。

【ホイールとタイヤ】
SUVですので215/55R18とMazda 3と同じく18インチながら幅も外径も大きくエアボリュームが多めです。だからといってMazda 3よりも著しく乗り心地が良いかというとそうではなく、基本的な設計思想は同じと感じました。エアボリュームよりもバネ下重量が大きくなったことによるフライホイール効果を感じました。最近の流行だから仕方ないのですが、舗装された公道を走るのにこんなに大きなタイヤが必要なのでしょうか。タイヤは新車装着タイヤから履き替えているようで、レンタカーですのでブリジストンのPlayzというBluEarthと同じクラスのエコタイヤでした。もう1ランク上のコンフォートタイヤを履いたら(Regnoは高いでしょうからAdvan dbとか)静かで乗り心地が良くなるかもしれません。

【運転席】
最低地上高が高くなったわけではありませんので、窓の位置が高くなり腰高な印象を受けます。また、ボンネットとダッシュボードの位置が高いと感じました。さすがに天井が高いのは楽ですが。MX-30のEVに試乗した際には着座位置が高くて落ち着きませんでしたが、CX-30の場合はシートリフターで目一杯座面を下げればそこまで着座位置が高いという印象はなく、比較的乗りやすいと思います。

【後席】
せっかくですので後席にも座ってみました。後席の居住性はMazda 3よりもかなり良いです。天井が高いですし側窓の天地寸法も確保されています。前席の運転席と助手席との間隔を開けているようで前方の見通しも良いです。Mazda 3には無い後席のエアコン吹き出し口もあります。ファミリーカーとしてはMazda 3よりもCX-30ですね。

【燃費】
郊外路中心で走って18km/L程度。CX-30の方が車体が重いので、マイルドハイブリッドの効果は1km/Lくらいは出ていそうです。高速道路では15km/L程度で、高速道路ではほぼエンジンだけで走りますので、これはエンジンの実力通り。満タン法による平均燃費は17.5km/Lでした。高速道路走行時の数字が足を引っ張っています。

諸元表を見ると、WLTC平均燃費が16.2km/L、郊外モードが16.7km/L、高速道路モードが18.0km/Lとありますが、高速道路でこんな燃費が出たことがありません。一体どれだけゆっくり走ったらこんな燃費が出るのでしょうか。クルーズコントロールで巡航したってこんな燃費で出ません。一方、郊外路なら16.7km/Lどころか18km/Lくらいは出ます。

速度計の左の瞬間燃費計は40km/Lより上の領域で、充電時に充電電力が表示されます。アクセルを離す程度では充電されず、ブレーキを踏んで減速したときのみ充電されていました。公道で普通にブレーキを踏む分には充電ゲージが振り切れることがほとんどありませんでした。蓄電池やオルタネーターの容量からしてそもそも減速時の運動エネルギーの一部しか回収されていないのかもしれません。

2025年2月2日日曜日

アテンザ後継でMazda 3のセダンに2.5Lエンジンを積めないものだろうか

Mazda 6が廃盤になってしまい、ラージプラットフォームでも復活の見込みがありません。中国のEZ6の欧州版がMazda 6eとして登場するようですが、これは中身は中国製電気自動車でありエンジンで動く車ではありません。一方、Mazda 3は車格は一つ下ですが、内外装の質感は高いですし、コストの割には操縦安定性能もなかなかよく頑張っていると思います。GJアテンザよりは小さいですが、初代GG型や2代目のGH型とほぼ同じサイズ、同じ重量です。安全性能確保のために車が年々大きく重くなっているためです。電装品も増えましたので、価格も同じくらいでしょう。これらは2Lエンジンを積んでいて、日本仕様のMazda 3セダンだって2Lエンジンを積んでいるのだからよいではないかという考えもあるでしょうが、同じ排気量でもMZRエンジンとSkyactivエンジンとでは特性が異なり、Skyactivエンジンは熱効率重視でパワーが犠牲になっていますので、もう少し排気量がほしいところです。北米仕様や欧州仕様のMazda 3では2.5Lエンジンを積んでいますので、日本向けのセダンでもこれを積めばアテンザの受け皿にならないものでしょうか。既にあるものを出すだけでしたら開発費はかかりませんし(型式認定の手間はかかるでしょうけど)。