2016年1月8日金曜日

欧州市場におけるSkyactiv-Gエンジン

欧州でのデミオの販売価格を見たついでにアクセラの販売価格も見てみたのですが、日本での売り方と随分違うことが見て取れました。最も顕著なのは出力別に価格をつけていることです。

日本では自動車税のかねあいもあり1.5Lエンジンとか2Lエンジンといった売り方をしていますが、ダウンサイジングターボ全盛の欧州では排気量は全く重視されておらず、120psに設定されたエンジンならSkyactiv-G 120、100psに設定されたエンジンならSkyactiv-G 100といった分類になっています。2Lエンジンを減格した120psエンジンと1.5Lエンジンが本気を出す120psエンジンとでは低回転域でのトルク・出力特性が全然違うのに、そんな大雑把な売り方で大丈夫なのだろうか心配になりますが、とにかく、そのような市場になっているようです。

同じエンジンでも制御ソフトウェアの設定を変えて減格することで複数の出力のエンジンを提供できますので、少ない種類のエンジンで多様な商品を提供することができ、生産効率が良いです。排気量が重視されないおかげでマツダのように頑なに自然吸気式ガソリンエンジンを作り続けているメーカーであっても、出力さえ減格すれば低排気量の車と同じように売ることができます。

2LエンジンはRON95のガソリンのもとで本気を出せば165psまで出せるのですが、通常仕様では120psに減格されています。1.5Lエンジンは100psが主流で、RON91の圧縮比13でも115ps出せる割には控えめです(ちなみにゴルフの廉価版の1.2Lターボは86psと105ps、中位グレードの1.4Lターボで122psと140ps)。デミオ用の1.5Lエンジンはさらに90psと75psで売られています(ちなみにポロの1.2Lターボも廉価版では90ps、1L3気筒ターボで95ps)。ストップアンドゴーが少なければ低回転域でのトルクが太ければ十分で、公道では俊敏さは必要ないため、そのような減格が可能なのでしょう。本来の最大出力を出すグレードは贅沢品のスポーツグレードという位置づけです。欧州でディーゼルエンジン車のシェアが高いのも、道路との相性だけでなく税制上の理由があるのかもしれません。それに対して排気量や重量で税額が決まる日本では出力が大きくても税額に影響が無いため、エンジンが出せる最大出力に設定しているようです。

もし日本でも欧州と同様の売り方ができれば、同じエンジンを使って「1.5Lエンジンを100psに減格して1.3Lエンジンのクラスで売る」とか「2Lエンジンを120psに減格して1.6Lクラスで売る」みたいなことができるのかもしれません(日本には自動車税の壁があるせいで0.5L刻みの区分を越えるのは難しいですが)。高価なターボやディーゼルエンジンを使わなくても容易に低回転域のトルクを太くすることができますし、自然吸気エンジンですのでレスポンスも良好です。日本でもハイブリッド車の普及に伴い、必ずしも排気量が車格を表すわけではありませんし、また、ハイブリッド車に搭載されるガソリンエンジンは排気量の割に出力が小さめですので、もはや排気量だけを見ても実際の出力はわかりません。もっとも、「1.5Lで約100psで低回転域でトルクの太いエンジンが欲しい」なんて言おうものなら、「だったらディーゼルを買ってください。お買い得ですよ」と言われそうですが。