2016年1月14日木曜日

i-DMのメリット

i-DMのメリットを思いつく限りで並べてみると、以下の通りです。

  1. 無駄な動作が減ることで、結果的に燃費が良くなりかつ速くもなる
  2. Gの変化が滑らかになることで、ドライバーや同乗者にかかるGも滑らかになり、長時間運転しても疲れにくくなる
  3. 急な運転動作を回避するために、車間距離を取って周囲の状況に注意して先読み推量するようになるので、安全運転になる
  4. 白点灯が多いのはその速度で走るための実力が伴っていないということなので、実力に見合った速度に落とすようになり、安全運転になる
  5. 上達すれば車にかかるGを自在にコントロールできるようになり、運転が楽しくなる
  6. そのために、車に乗る機会が増え走行距離が伸び、運転経験が蓄積する
ここで重要なのは、実力の裏付けなく小手先のテクニックで点数を上げたりステージを上げたりするだけでは上記のメリットが実現しないことです。点数やステージは結果に過ぎませんので、何のために滑らかな運転をするのかを意識しないと本末転倒です。

最初からバスドライバー並のドラテクの持ち主でしたらi-DMのおかげで上達する要素はあまり無いかもしれませんが、自分を含めて下手な人がi-DMに叱咤激励されながら上達していくと違いを実感できます。自分の場合、あいにく5.の境地には達していませんが、1.2.3.4.6.は実感します。メーカーにとっては6.は新車販売の増加要因になりそうです。5年で20万kmとか乗ったらさすがに買い換えるでしょうから。3.と4.は交通安全にとても重要な要素です。すべての車にi-DMがつけば安全かつ円滑な交通に寄与するのではないかと思うものの、あいにくマツダのシェアではあまり影響力がありません。トヨタにi-DMの技術を供与したら日本の道路状況が激変するのではないかと期待します。また、多くのドライバーが自分の運転の仕方を自覚するようになり、車の走る・曲がる・止まるという基本性能を気にするようになることで、日本の自動車市場も変わってくるのではないかと期待します。

よくSkyactivのマツダ車に乗ると車に乗る機会が増えると言われますが、車自体の出来もさることながら、車の性能を引き出すためにはドライバーの技量も必要です。せっかく出来の良い車であっても下手な運転をしたら車が可哀想です。我が身を振り返ってみると、下手なドライバーの特徴はまず自分が下手だという自覚が無いことです。次に、「どういう運転をしたいか」という方向性が欠如していることです。

i-DMはまず下手な運転に対して「ヘタクソ」と言い切ることで、下手なドライバーに対して下手であるという自覚を促し、それから何がどう下手なのかをランプの色で示し、さらに、「急アクセル・急ブレーキ・急ハンドルを控えて、Gの変化が滑らかな運転をする」という明確な指針を示します。あとは、どうすれば急アクセル・急ブレーキ・急ハンドルをしなくて済むのかを考えながら運転し、理想の運転に近づくべく努力を続ければ、徐々に上達していきます。走り慣れた道を空いているときに走れば青点灯させることは容易ですが、先読み推量の難しい混雑する道や初見の道であっても青点灯させるためにはそれなりの練習が不可欠です。

i-DM以前の自分の運転とi-DM以後の自分の運転とを比較すると、もしi-DM付の車に乗らなかったらきっと上達するのはかなり難しかったのではないかと想像します。i-DMの無い時代に上達した人は一体どうやって上達したのでしょうか。サーキットや峠で速く走りたいという動機があればまだしも、車を足として使っている人が公道で普通に走るだけで、どうやって理想の運転を思い描けばよいのでしょう。

滑らかな運転というのは一見これといった特徴を見出しにくいため、何がどう上手なのかよくわかりにくいですが、いざ自分が同じようにやってみようとしてもなかなか思い通りにならないことに気づいて、そこに彼我の差を見出すわけです。本当に上手な人ほど難しいことをさも簡単そうにやってのけてしまうものです。

また、普段i-DM付の車を運転しない人にi-DM付の車を運転してもらうと、運転経験豊富であっても結構白点灯させるものです(上手な人でしたら勘所さえわかればすぐに適応しますが)。自己流でそこそこうまいと思っていても、Gの変化を可視化してみると意外とそうでもなかったりします。

そういう意味ではi-DMというのは画期的なシステムだと思うのですが、短期的には白点灯するたびに気分を害しますので、それを乗り越えた先にあるものを知ってもらうことが普及の鍵になるのではないかと思います。