2016年10月14日金曜日

デミオの年次改良(2016年秋)

2016年10月14日にデミオの商品改良が発表されました。アクセラから導入されたものが大半ですが、変更箇所は多岐に亘っています。このクラスの国産車では破格の装備ですが、それでいて値段は据え置きです。他の車種と共通化することでコストを抑えているものもありますが、追従型クルーズコントロールのようにコスト増要因もありますので、一体どこでコストを抑えたのでしょうか。

10月13日にはインプレッサのフルモデルチェンジが発表されました。ただでさえアクセラはインプレッサに競り負けているのに、これでさらにインプレッサに引き離されそうです。一方、水平対向エンジンを採用するスバルにはBセグメント車を作れませんので、Bセグメント車ならではの取り回しの良さをアピールしてダウンサイジングを狙う作戦なのかもしれません。

【パワートレーン】

  • G-ベクタリングコントロール
  • サスペンションセッティングの変更
  • 電動パワーステアリングセッティングの変更
  • ナチュラル・サウンド・周波数コントロール

アクセラから採用されたものです。どれも実際に乗ってみないとわからないものばかりです。

【運転席周り】

  • アクティブドライビングディスプレイの高精細化、高輝度化、カラー化
  • メーターの視認性向上
  • ステアリングホイールの形状変更

アクティブドライビングディスプレイは今まで輝度が低かったために速度計の視認性があまり良くなくて、結局タコメーター右下の速度計を見ていましたので、あまり恩恵がありませんでした。今回の改良でどの程度視認性が向上したかは、実際に運転してみないとわかりません。

ステアリングホイールの形状変更はエアバッグ小型化の産物で、ボタンを設置するスペースに余裕ができたためにそれに合わせた配置にしたようです。

【安全装備】

  • アダプティブ・LED・ヘッドライト
  • スマート・ブレーキ・サポート
  • マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール
  • スマート・シティ・ブレーキ・システム・リア
  • AWD車向けにリアフォグランプとヘッドランプウォッシャー

遂に念願の追従型クルーズコントロールがつきました。これで高速道路での運転がだいぶ楽になります。追従型クルーズコントロールはディーゼルエンジン車とガソリンエンジン車の上位車種(13S Touring以上)にメーカーオプションで搭載できますので、高速道路の走行車線をクルコン任せでのんびり走るなら、ガソリンエンジン車でも動力性能に不足はなく、となると13S Touringや13S Touring L-Packageは意外とお買い得かもしれません。街乗りではガソリンエンジン車の方が使い勝手がよいですし、コーナリングもフロントの軽いガソリンエンジン車の方が有利です。

アダプティブLEDヘッドライトはハイビームの必要ない地域では恩恵が無いかもしれませんが、ハイビームをつけないと前が見えないような田舎では必要な機能です。今までのハイビームコントロールだとハイビームになるべきときになかなかハイビームにならなくて前がよく見えずに不安なことがよくありましたので、結局ハイビームコントロールを無効にして手動でハイビームとロービームの切り替えをすることになってしまいました。この手の自動化装備は意図した通りに動作しないと結局使われなくなってしまい、かけたコストが無駄になってしまいます。

安全装備を求める人にとってはこのクラスの国産車では破格の装備で、ポロに追いついてきました。しかし実用に堪えるかどうかはまた別の問題です。

【エクステリアデザイン】

  • フロントグリルガーニッシュの塗色変更(ディーゼル車の赤ライン廃止)
  • LED化したフォグランプ周りにメッキの加飾
  • アルミホイールの塗装の変更

フォグランプ周りにメッキの加飾をしたのは、フォグランプがLED化して小さくなったために、何らかのアクセントをつけないとバランスが悪くなってしまうためでしょう。また、グレー塗装を増やしたためにアルミホイールの塗装もそれに合わせたものになったようです。

【塗色】
  • マシーングレー追加、メテオグレーマイカ廃止
  • エターナルブルー追加、ブルーリフレックスマイカ廃止
  • ソニックシルバーメタリック追加、アルミニウムメタリック廃止
  • ディープクリムゾンマイカ追加、スモーキーローズマイカ廃止
マツダのカタログ写真での見え方は実車での見え方と異なりますので、実車を見ない限り何とも言えません。

マシーングレーとエターナルブルーはアクセラから導入された色ですが、今回のデミオの商品改良で初めて導入されたのはディープクリムゾンマイカです。実車ではぎらぎらするソウルレッドに対してもっと落ち着いた色合いの赤があってもよいと思っていましたが、メディアで公開された写真では赤というよりもむしろ阪急電車のように見えます。写真で見る限りはミドルセダンのような落ち着いた色使いで、日産のブルーバードとかでありそうな塗色です。後日ディープクリムゾンマイカの実車を見る機会がありましたが、実車で見ても阪急電車でした。

スモーキーローズマイカは色単体ではきれいなのですが、かなり個性の強い色ですので、車の塗色としては定着しなかったようです。

ブルーリフレックスマイカが廃止になったのは単純に不人気だったからでしょう。青系の塗色は明るい順にダイナミックブルー、エターナルブルー、ディープクリスタルブルーマイカの3色ですが、エターナルブルーはダイナミックブルーほど鮮やかではなく、ディープクリスタルブルーマイカほど暗くもなく、中庸を狙っているように見えます。普段使いの車として目立ちすぎないようにということでしょうか。

【インテリア】

  • 白レザーがオフホワイトからピュアホワイトに
  • 黒革内装の新設
  • ファブリックシートから赤の差し色の廃止(黒革内装に準じた色使いに)
  • ダッシュボードやシフトノブ等の赤ステッチの廃止
赤の差し色が徹底的に排除されている印象ですが、どのような意図によるものなのか、デザイナーのコメントに興味があります。素人目には元気そうな感じから落ち着いた感じにシフトしているように見えますが、G-ベクタリングコントロールの導入で乗り味が変わったからでしょうか。あるいは追従型クルーズコントロールの導入で高速道路の走行車線をのんびり走るニーズが増えると踏んでのことでしょうか。

写真で見る限りは、他のコスト増加を相殺するために内装周りのコストを下げたように見えますが、実際のところどうなのかは、実車を見てみないと何とも言えません。内装の質感の高さを求める向きには特別仕様車を提供することでコスト重視の顧客と内装重視の顧客との棲み分けを図っているのかもしれません。

【後席周り】
  • 後席にアシストグリップ
  • リアヒーターダクト
  • リアドア開閉音の改善
  • リアゲートの遮音性の強化
実質2人乗りと割り切った車でしたが、想定以上に後席の利用が多かったのか、あるいはG-ベクタリングコントロールの導入で後席の乗り心地が改善して後席の利用が多くなると踏んだのか、後席の居住性が改善されています。今まで後ろ半分があまりにチャチで、まるでアクセラの前半分にDEデミオの後ろ半分を継ぎ足した印象でしたが、今回の改良でバランスが良くなっている印象です。しかし後席に人を乗せる前提で考えると後席の狭さが気になるのではないでしょうか。もともと2人乗りと割り切って後ろ半分のコストを切り詰めてその分前半分にお金をかけることで、前半分に乗る限りは車格の割に良い内装と良い走りを実現できていましたが、後ろ半分にもお金をかけられる余裕ができたのでしょうか。

【総評】
G-ベクタリングコントロールの採用で落ち着いた走りになったせいか、全般的に元気そうな感じが鳴りを潜めて落ち着いた雰囲気にシフトしています。また後席の居住性も改善しています。しかしミドルセダンをそのまま小さくしたような車にしてしまうと、小ささや後席の狭さが浮き彫りにならないか少し心配です。