2019年9月8日日曜日

骨盤を立ててみました

着座姿勢を直そうとして左足を突っ張って腰を浮かしてみたところ、骨盤が立った姿勢になりました。通常の椅子の設計では腰骨の辺りを支えるのですが、腰を浮かして体をシート背面に押し付けると骨盤の上が支えられます。たしかにマツダの開発者の言う通り、ここを支えると骨盤が立ちます。AT車では左足は他に何もしていませんので、左足を突っ張れる程度にシートを前に出し、左足で体をシートに押し付けるようにすれば容易に再現できます。もちろんこの姿勢を長時間維持するのは無理ですが。

骨盤が立つとどうなるかというと、まず路面からの入力を体でいなせるようになって姿勢が安定します。そうなると路面の状況が手に取るようにわかるようになり、たしかに歩いているような感覚になり、路面からの突き上げが苦にならずむしろ運転が楽しくなります。

ここで気をつけなければならないのは、体が路面からの入力をいなしやすくなっている一方で、路面からの突き上げ自体は決して無くなっていないことです。デミオディーゼルとりわけ前期型はあまり乗り心地がよくありません。足は固めで路面からの入力で車体が揺さぶられます。後輪に荷重がかかるとDYプラットフォーム本来のシャシー性能を発揮できるようでもっとしっとりとした乗り心地になりますが、後席や荷室が空いている状態で乗ると車体後部がポンポン跳ねます。サスペンションが仕事をするためにはある程度の荷重が必要なようで、軽い車はどうしても車格相応の乗り心地になってしまいます。初期どっかんターボとの組み合わせではまさにじゃじゃ馬でした。

それにも関わらず長距離の移動は全く苦になりません。高速道路を走るだけなら1日に600km~700kmくらい走っても疲れませんし、時折一般道も走るなら500kmくらい、田舎の国道だけなら400kmは平気で走れます。もっともそれはドライバーにとっての話であって助手席に乗る人にとってはこんな小さな車の助手席では落ち着かないかもしれませんが。

そのようなことを踏まえつつMazda 3に対する試乗記事をいろいろ見ていると、路面からの突き上げを指摘するものを多く見かけます。実際に試乗してみるとたしかにその通りに感じます。行きつけのディーラーの試乗コースの中に路面の荒れた箇所があって、いろいろな車種で乗り比べてみるとシャシーの違いがわかります。アクセラ2.2Lディーゼル(18インチ)ではさすがアテンザ用のリアサスペンションを使っているだけあって荒れた路面を感じさせず氷の上を滑るような乗り心地でしたが、アクセラ1.5Lガソリン(16インチ)やデミオではそこそこ突き上げを感じます。Mazda 3の1.5Lガソリン(18インチ)に試乗した際にも車格不相応なごつごつとした突き上げがあり、シャシー設計を工夫してもさすがに突き上げは無くならないのかと思いました。

他の条件を一定とするならごつごつした乗り心地よりも滑るような乗り心地の方が望ましいでしょう。しかしそれ以上に大切なのは「何を評価軸にするか」です。シャシーの総合力は最終的には「長距離乗っても疲れない」という実際に長距離を走ってみれば誰にでもわかる感覚に収斂します。それを達成できるならそれ以外の部分で多少のことは大目に見てもよいのではないかと思います。いずれMazda 3で長距離乗れる機会があればぜひ確かめてみたいものです。短時間試乗した限りでは「でかいデミオ」とか「上品なデミオ」といった言葉が思い浮かびますが、「でかいデミオ」も意外と捨てたものではありません。