2016年3月12日土曜日

デミオのハイビームコントロール

デミオにはメーカーセットオプションで「ハイビームコントロール」というのをつけることができます。ライトをAUTOの位置にして、レバーを奥に倒してハイビームの位置にしておくと、オートライトに加えて、状況に応じてハイビームとロービームとを自動で切り替えるもので、うまく機能していればとても便利なものです。

問題は、これがあまりうまく機能していないことで、ハイビームが欲しい場面であってもなかなかハイビームに切り替わりません。自動でハイビームに切り替わらないのは以下の状況です。

  1. 対向車がいる
  2. 先行車がいる
  3. 明るい市街地
  4. 時速30km未満
どれもハイビームには適さない状況ですので一般論としては正しいのですが、1.と2.は光源を検知して制御する方式ですので、画像処理の精度が高くないと人間の直感に反した動作をします。それで、ハイビームが必要な状況でハイビームにならない場面が出てくるわけです。逆にハイビームが適切でない状況でハイビームになることはありません。おそらく、光を検知した際に、実際の光源によらず対向車や先行車によるものと判断しているのではないでしょうか。

法律上は夜間は原則ハイビーム点灯で、すれ違いの際にはロービームのみにするよう規定されていますので、ロービームが義務付けられているときのみ自動でロービームに切り替えるのが法律上正しい動作のはずなのですが、マツダのハイビームコントロールは「疑わしきはハイビームにしない」という動作ですので、法律に即していません。

法律以前にそもそも街路灯の無い田舎の道ではハイビームを点灯しなければまともに前も見えず、危険ですし目も疲れます。高速道路や国道には反射板がついていて、ハイビーム点灯時には反射板が明るくなって進路を示してくれますし、標識にも光が当たるのですが、ハイビームコントロールがこの反射光を対向車の光と誤認してロービームにしてしまうと、せっかくの反射板が機能せず、前が見えなくなってしまいます。

では手動でハイビームを有効にしようと思うと、UIの不備に直面します。ハイビームコントロールを有効にしている際にはAUTOの位置でレバーを奥に倒しているのですが、手動でハイビームを有効にするためには、レバー先端のダイヤルをねじらなければなりません。しかし、このダイヤルをねじるという動作は運転中に正確に行うことが難しい動作で、しかも夜間には手元が暗いのでダイヤルの印字もよく見えません、ダイヤルにLED照明を仕込んでおいて夜間には光るようにするというギミックがあれば少しは操作しやすくなるでしょうが、それでも運転中に視線が移動するのは危険です。手動でのハイビームから自動に戻す際にも同様にダイヤルをねじる必要があり、誤動作を誘発します。UIに気を使っているはずのマツダらしからぬ詰めの甘さです。これが通常のハイビーム/ロービームの切替でしたらレバーを奥に倒すだけで済みますので運転中でも確実に動作させることができます。

一方、オートライトを有効にしたまま、ハイビームコントロールを当てにせずに手動でハイビーム/ロービームの切替をしようとすると、ハイビームが必要な場面でレバーを奥に倒すものの、その時点でハイビームコントロールが有効になってしまい、ハイビームが必要にもかかわらずハイビームが点灯しないという状況が発生します。結局上記のようにダイヤルをねじる必要が生じるのですが、「ハイビームの必要性を認識する」「レバーを奥に倒す」「ハイビームにならない」「やむなくダイヤルをねじって手動でハイビームを点灯させる」という一連の動作が必要になり、ハイビームが点灯するまで時間がかかりますし、その間に運転への集中が削がれます。

その結果どうなるかというと、普段はオートライトを有効にしつつ、ハイビームが必要な道路を走行するたびにダイヤルをねじってオートライトを無効にして、それから手動でハイビーム/ロービームの切替をして、到着時にオートライトに戻すという動作が必要になり、結局オートライトもハイビームコントロールも満足に機能しない状況になるわけです。

次善の策としてオートライトを活かしつつハイビーム/ロービームの切替のみ手動で行うためには、ハイビームコントロールを無効にすればよくて、マツダコネクトで「設定」>「車両装備」>「照明」と辿って行くと「ハイビームコントロール」の項目がありますので、そこのチェックを外すとハイビームコントロールが無効になります。この設定をするためにはエンジンが回っている状態にする必要があります。

おろらくハイビームコントロールのあるべき姿は、原則ハイビーム点灯にし、明らかにロービームにすべきときのみ自動でロービームに切り替えるというものでしょう。この場合、ハイビームが適切でない状況で手動でロービームに切り替えるためには、レバーを手前に倒してロービームの位置にするだけですし、自動に戻すときもレバーを奥に倒すだけです。これなら通常のハイビーム/ロービームの切替と同じですので直感的に操作できます。

2015年12月の年次改良で改善することを期待していたのですが、まだ実現していないところを見ると、画像処理による光源の判定ロジックがまだ成熟しておらず、「明らかにロービームにすべき状況」をうまく判断できていないのかもしれません。素人でも気がつく程度のことなら当然開発時に社内でも議論になっているはずで、にも関わらず技術的な壁を突破できないがゆえにやむを得ず現在の仕様になっていると考えるのが自然です。