2020年1月20日月曜日

Mazda 3の操安性能

海沿いのワインディングをまとまった距離で走ってみました。コーナリングに気を遣うデミオディーゼルからの乗り換えということもあって、Mazda 3ではあまりに楽に曲がれてしまうことに感心しました。FF車のくせにストレスフリーで余計な遠心力を感じることなくするすると曲がれてしまいます(ただし走り屋基準ではなくツアラー基準ですので速いかどうかは知りません)。しかも操縦安定性に不利な冬タイヤを履いた状態です。2Lエンジン車ですらこれだけ気持ちよく曲がれるのですから、さらにノーズの軽い1.5Lエンジン車はもっと楽しそうです。また、普通のFF車ですらこんなに楽に曲がれてしまうのですから、GVC+と協調制御しているAWDだとどんな曲がり方をするのか楽しみです。

こればかりは体感するのが一番なのですが、ここではいくつかの要因を挙げてみます。
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1.  シャシー性能

もともとデミオのリアサスペンションは後輪の接地がよく粘ることで定評があり、Mazda 3
の荷重に合わせて設計荷重を変更すれば同じように曲がれます。しかしそれだけでしたらデミオよりもよく曲がることが説明しきれません。

Mazda 3のボディーとシャシーは衝撃を遅れなく伝える設計とのことですが、そうすると路面からの入力によってふわふわと揺れが続くことがなくなりますので、もしかしたらGVCと同様に姿勢を安定させる効果があるのかもしれません。

2. 重心の低さ

SUV全盛の時代に敢えてハッチバックということでSUVに無い車高の低さを追求しているように見受けられます。デミオはおろかアクセラよりも重心が低いのは曲がりやすさに効いているはずです。実車を見たときの第一印象は「低い」「お腹擦りそうだからダート走れない」でした。特に屋根が後ろに向かって下がっていますので、後ろから見るとさらに低く見えます。

3. ブレーキ

デミオディーゼルは、コーナー手前で減速して前輪に荷重をかければ、タイヤのグリップ力でねっとりと曲がれます。しかしそれにもかかわらず曲がる際に気を遣うのは、ブレーキに癖があるためです。コーナリングはコーナー入口の速度を狙い通りの速度に減速するところで勝負がついてしまうのですが、デミオディーゼルはエンジンブレーキ弱め、フットブレーキ強めでブレーキを踏むだけでかなり効いてしまいますのでコントロールしにくいです。

コーナー出口での加速についても同様で、ディーゼルエンジンはアクセルを踏んでから意図した加速度に達するまで若干のタイムラグがあるため、コーナーに入ってすぐに徐々にアクセルを踏み込んでいかないと間に合いません。しかしこれはブラインドコーナーではなかなか難しいです。

ガソリンエンジン車はブレーキの挙動が素直ですし、自然吸気エンジンなら加速も素直です。となるとMazda 3のディーゼルエンジン車はどうなのでしょうね。

4. GVC+

たしかにGVC+があれば高めの速度でコーナーに進入しても意外と曲がれてしまいます。しかしそれだけならGVCを装備している他の車でも同様ですが、GVC付のアクセラやデミオに乗ったときもこんなに曲がりやすいと感じることはありませんでした。
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このように列挙してみると、姿勢を安定させることに注力しているように見受けられます
。個々の要素は他の車種にも該当するものですが、コツコツと積み重ねていくことでこの操安性能が出ているのではないかと推測します。操安性能重視の設計であることは乗り心地やスペースユーティリティーにも表れていて、乗り心地は残念ながらでかいデミオですが、乗り心地よりも操安性能を優先させる方がドライバーにとっては疲れにくいです。ファミリーカー向けにはもっと乗り心地に寄せた方が良いのでは無いかと思えますが、パーソナルカーと割り切るならそれもありかもしれません。

Mazda 3は良くも悪くも路面に追随しますので、平滑な路面では快適ですが、橋の継ぎ目のような凹凸があればガっときますし、荒れた路面に追随すれば車体後部が揺さぶられます。実際に体験してみるとデミオの乗り心地もこうだったなと思い出します。

ちなみにMazda 3のステアリングギアはアクセラよりもスローとのことですが、運転している限りはそのせいで曲がらないと感じることはありませんでした。むしろ、曲がるべき方向にステアリングが吸い寄せられるように感じる場面もありました。さすがにそんな気の利いた自動操舵機能が実装されていたらすごいことですが、これはおそらく無意識のうちにステアリングを切り増しているのでしょう。ステアリングを切り増す際には意識しない一方でステアリングを戻す際には意識しますので、ステアリングをスローにするのはたしかに理にかなっています。これに限らず、操縦安定性の評価軸を物理的な性能に置くのではなく、人間の感覚に置いているのがマツダの特色だと思います。