2021年2月17日水曜日

Mazda 3を振り返る

 Mazda 3が納車されてから1年強乗ってきて、CX-30やMX-30といった第7世代の他のCセグメント車も登場したこともあり、Mazda 3がどのような位置づけの車であるのか徐々に見えてきました。

ど真ん中にあるのはファミリーカーのCX-30で、Mazda 3のファストバックは尖った方の極、MX-30はゆるい方の極、Mazda 3のセダンはフォーマルな方の極でしょうか。MX-30のEVは高価で街乗り専用ということもあり、これも一つの極です。尖った方は比較的軽くて重心と車高が低くて乗り心地や室内空間をやや犠牲にして操縦安定性重視、ゆるい方は比較的重くて重心と車高が高くて広くて見晴らしが良くて乗り心地重視のように見えます。全般的に、サスペンションに荷重がかかっている方がしっとりとした乗り味になるような気がします。尖った車は見た目も尖っていますし、ゆるい車は見た目もゆるいので、そういう意味ではコンセプトは一貫しています。

別の言い方をすれば、Mazda 3は決してスポーツカーではないのですがスポーツカー「的な」発想で作られていて、運転しながら車と対話するような車、CX-30は運転しながら同乗者と対話する車、MX-30は運転しながら自分と向き合う車でしょうか。

第7世代車の操縦安定設計は「人が歩くように」というコンセプトのようで、それ自体はあながち間違っていないと感じますが、素足で歩くか革靴で歩くか運動靴で歩くかくらいの違いはあると思います。室内をゆっくり歩く分には素足で歩いても苦になりませんが、荒れた路面を素足で走るのは大変です。

パワートレインについては、Mazda 3ファストバックのような尖った車に最も合うのは本来ならばSkyactiv-Xなのかもしれませんが、まだ技術も値段もこなれていませんので、当面は1.5Lガソリンエンジンが最も「らしい」パワートレインかもしれません(特にMTなら)。Mazda 3セダンなら最も静かな2LガソリンエンジンのATでしょうか。改良後の1.8Lディーゼルエンジン車にはまだ乗れていませんので、コメントできません。

とはいえ自分で購入したときの動機は「必要以上に大きくて重くて高い車に乗りたくない」というミニマリスティックな発想で、当初は楽しく運転できて免許にやさしい1.5Lにしたかったのですが、1.5Lは意図的に長距離向けの装備をつけられないように売られていて露骨に2Lに誘導されていて、2Lとの価格差が安全装備の差でほぼ説明できてしまうのと、車内で周りに気兼ねせずに音楽を聴くのが好きですのでそれならば比較的静かな車の方がよいというのと、なるべく奇をてらわずに素直なパワートレインを選びたいというのがあり、結局2Lにしました。

2Lにするならファストバックでなくてセダンにすればよかったのではないかという気もしないでもないですが、必要以上に全長の長い車は取り回しが悪いのと、セダンのエクステリアは保守的で第一印象はファストバックよりも良かったのですが、デザインとしてはファストバックほど突き抜けていませんし、後席よりも前席を重視したいといったことから、結局ファストバックにしました。

実際に乗ってみると、当初は冬タイヤを履いていたことやサスペンションが馴染んでいなかったためか、「随分ガタガタする車だな」という印象を受けました。周りに気兼ねせずに運転に集中できる環境では開発者が意図した通りに気持ちよく運転できる反面、混雑する道路ではもっと楽に乗りたいと思いました。ドライバーの多くは混雑する道路を走りますので、トヨタの車が売れる理由もわからないでもありません。それでも、車内でのんびり音楽を聴いていればいいやと割り切れば、渋滞する道路も貴重な時間です。その後サスペンションが馴染んでくるにつれて、「ガタガタ」から「ゴツゴツ」くらいになって、乗り心地はさほど気にならなくなりました。

後席が暗くて狭いのはまったくどうでもよいのですが、天井が低くてドライビングポジションが制約されたり視界が狭かったりするのは、大衆車たるハッチバックとは異なる考え方なのかなと思います。SUVの時代になってハッチバックという車は我慢して乗る車になったようです。

高速道路での追い越し加速や上り坂のようにトルクが必要な場面ではキックダウンが必要ですので、そういうときだけはさすがにディーゼルエンジンのトルクには及ばないと感じるものの、一応パワーはありますので、燃費を度外視してアクセルを踏めばちゃんと加速します。不満があるとしたら燃費だけです。むろん、燃費が悪いといってもそもそも走行距離が短ければ燃料代へのインパクトはさほどありません。燃料代の絶対額でいえばデミオディーゼルの方が圧倒的に大きいです。

新型コロナウイルスの影響で遠出ができずに街乗りばかりしている中、Skyactiv-Xが登場して、CX-30が出てきて、さらにMX-30が出てきてみると、今この状況で選ぶとしたら「MX-30のガソリンエンジン車もいいかな」と思いますが、値段はともかくとして、重くて燃費が良くないのはいかがなものかと思います。せめて第7世代のままCX-3くらいのサイズになれば積極的に選びたくなるところですが。MX-30のレンジエクステンダーEVが出てくれば走りや乗り心地は良さそうですが、500万円の予算があれば環境性能も含めて他にもっと良い車がありそうです。

とはいえ、それはせっかくのMazda 3が本領を発揮できない状況だからともいえます「やはりMazda 3にして良かった」と思えるくらいのびのびと遠出できるようになってほしいものです。