2016年2月21日日曜日

UKでのMazda 3の1.5Dのレビュー記事

欧州で一足早くMazda 3の1.5Dモデルが発売されたUKで、レビュー記事がいくつか出ています。

【レビュー記事】
http://www.chroniclelive.co.uk/news/motoring/car-reviews/car-review-2016-mazda-3-10837571
http://www.whatcar.com/car-news/mazda/3/2016-mazda-3-15d-review/1367271
http://www.autoexpress.co.uk/mazda/3/94143/new-mazda-3-diesel-review

カンパニーカーに適用される税金がCO2排出量100g/kmを境に大きく異なることから、カンパニーカー向けにCO2排出量が少ないのが売りとあります(2.2Dだと107g/kmなのでクリアできない)。一方、高速域でアクセルを踏んでから意図した加速度に到達するのに時間がかかるのは出力相応とか、街乗りならMTでもあまりシフトダウンしないで走れるので楽とか、エンジン以外はアクセラそのものとか、いろいろ書いてありますので、ぜひ原文を読んでみてください。UKではエクステリアデザインに対する評価が高いようです。他車との比較では、(後処理装置が無いために)排気量当たりの出力は低いが、日本車特有の車体の軽さで補っているみたいな記述もあります。

CO2規制に特化した車という扱いのようですが、規制というのは常に人為的に変更されるものですので、現在はCO2排出量ベースの規制が適用されていても、NOx排出量まで規制されてしまったらディーゼルエンジンの立場が逆転してしまいます。マツダのディーゼルエンジンは現在の規制には適合しているようですが、実走行時のNOx排出量と規制値との乖離が他社のディーゼルエンジン車よりも大きいという数字も出ており、NOx排出量規制が厳しくなった場合の対応は大変そうです。2.2Dならともかく、技術面でもコストの面でも難しい小型クリーンディーゼルエンジンならなおさらです。そのような将来のリスクもあって、1.5Dの開発費用を回収するために、現在は税制上のメリットのある欧州向けに積極的に売りに行くことにしたのではないかと邪推します。1.5Dのエンジン自体は1年以上前からあって、しかもその時点でも欧州では税制上のメリットのあるCO2排出量であったにもかかわらず、アクセラには欧州向けを含めて1.5Dを載せないと判断していたわけですから、1年間で何らかの情勢の変化があったと捉えるのが自然です(Skyactiv-1.5Dは当初は最大トルク220Nmで設計されたものの、CX-3向けに過給圧が上げられ、変速機のトルク容量の上限である270Nmまで最大トルクが引き上げられたとかもあるかもしれませんが)。

日本にはカンパニーカーの制度がありませんし、日本でこのクラスの社用車といえばプロボックス/サクシードが定番で、わざわざアクセラを買うのは想像がつきません。自営業者が経費が買うにしても、日本で税制上のメリットがあるのは税制上の優遇措置のある電気自動車やプラグインハイブリッド車だったり、あるいは減価償却狙いの値崩れしにくい中古の輸入車だったりしますので、税制上の理由で小型ディーゼルエンジン車を買うという選択肢はありません(クリーンディーゼル補助金なんて微々たるものですし)。個人が自腹で買うとなれば純粋に値段と走りですが、2.0Gよりも高くて重くて走りが鈍重ですので、あまり魅力を感じません。結局、欧州の税制に特化したグレードとなりそうです。

【価格】
モデルごとの価格の一覧がわかりやすくまとまっています。
http://www.carbuyer.co.uk/reviews/mazda/mazda3/hatchback/variants

これを見ると、2.0Gよりも高く2.2Dよりは安いのは順当でしょう。2.0Gより高くても税制上のメリットがありますし、新車価格が高くてもその分減価償却費も大きくなりますので、法人名義でしたらさほど問題ありません。しかしよく見ると、1.5Dと2.2Dの価格差がさほどありません。UKの価格で850GBPの差ですが、UKの物価を考慮すれば日本では10数万円の差でしかありません。しかも、2.2DのMTの方が1.5DのATよりも安いです。自腹で買う場合、価格差と走りの差を考えれば2.2Dになびきそうな気がします。

日本仕様の2.2Dは究極のアクセラという位置づけで世界で唯一175ps(他の国では150ps)かつ装備全部盛りだったりしますが、日本で1.5Dを売るつもりが無いのでしたら、日本でも150ps版でもう少し安い2.2Dを出してほしいものです。

【仕様】
Mazda UKのサイトに、さほど詳細でないものの仕様が公開されています。
http://www.mazda.co.uk/cars/mazda3-hatchback/specs-and-prices/

1.5DのMT車の重量はドライバーの重量を除いた分で1345kg、AT車だと同様に1370kgと、105psの1.5Lエンジンで動かすには重いです(2.2DだとAT車で1450kgですので、150ps仕様であってもこちらの方がはるかに余裕があります)。しかしそれでも日本車は欧州車よりも軽いので、パワーウェイトレシオについては欧州の同じクラスのディーゼルエンジン車と大差ないようです。また、1.5Dはおろか2.2Dでも標準では16インチホイールを履いているとか(さすがにオプションで18インチにするでしょうけど)、国ごとに売り方が異なっていて興味深いです。

本当は変速比と最終減速比を知りたかったのですが、直接は開示されておらず、MT車でも最大トルクが270Nmであることから、CX-3と同様に中容量の変速比を採用しているとか、最高速度が115mph(185km/h)とデミオディーゼルと同じであることから、動力性能についてはデミオと同じくらいで、車体が重い分、ターボが効かない低回転域や最大出力に近い高速域ではデミオよりもさらに不利ではないかと推測できる程度です(UKでは高速道路の制限速度が低めですので、高速域での影響はあまり無いはずですが)。低速域での出足が鈍そうな感じですが、もしかしてデミオとCX-3の年次改良で導入されたDE精密過給制御というのはアクセラ1.5D向けに開発されたものなのでしょうか。

MT車の場合は低めのギアで引っ張ればよいとして、ATの進段の制御がどうなっているか気になります。レビュー記事だとシフトダウンは早いがシフトアップが遅いとあり、低めのギアでパワーを絞り出す制御なのではないかと推測します。

燃費については、1.5Dが欧州複合燃費で74.3MPG(26.3km/L)、2.2Dが68.9MPG(24.4km/L)とさほど差がありません。ちなみに郊外と都市部の燃費もそれぞれ開示されていて、1.5Dの場合80.7MPG(28.6km/L)と65.7MPG(23.3km/L)です。都市部の燃費だと日本の実態に近いです。欧州にせよ米国にせよ、実態に則した燃費が開示されていますので参考になります。