2015年10月22日木曜日

レンタカーでデミオXD(15インチ、AWD)に乗ってみました

【動機】
遠方で車を使う用事がありましたのでレンタカーを利用したのですが、2015年4月からタイムズカーレンタルで1.5Lディーゼルのクラス(C2Dクラス)が設定されましたので、せっかくですので利用してみました。C2Dクラスは1.5LガソリンエンジンのC2Gクラスよりも割高ですし、普段デミオディーゼルに乗っているのですからレンタカーくらいは別の車に乗ってみてもよいのですが、レンタカー仕様ならどうせ15インチホイールのXDだろうということで、15インチホイールを履いたときの乗り心地のデータを収集する良い機会だと思いました。

スタッドレスタイヤをつけるに際して、割安で種類も豊富な15インチにするか、高くても安定性のよい16インチにするかの意思決定が必要ですので(ディーラーで聞いてみたら16インチホイールをつけている人はスタッドレスタイヤも16インチにする傾向があるとのこと)、夏タイヤとはいえ15インチホイール装着時の状態を知っておいた方がよいだろうと思った次第です。

【仕様】
当日に来たのは予想通りデミオXDの15インチホイールを履いた車でした。想定外だったのはAWD車だったことですが、寒冷地ならありうることです。レンタカー用の一番安いグレードですのでマツダコネクトは無く、普通のカーナビがついていたため、操作に手間取りました。いつもの癖で左手でコマンダーノブを触ろうとしてしまいます。車載のUSB端子でスマホの充電をしたかったのですが、マツダコネクトがついていないとUSB端子もついていません。前にレンタカーでデミオのガソリンエンジン車を借りたときにはマツダコネクトつきだったのですが。しかし、乗り慣れない人にとってはマツダコネクト無しの方が扱いやすいでしょう。パドルシフトがついていませんので、下り坂でエンジンブレーキをかけようとしてステアリングホイールを押そうとして、そこには何も無いことに気づいてから結局シフトレバーを倒してマニュアルモードにしたりしました。

2015年7月納車から3ヶ月で9000km走行しており、レンタカーでも人気があることが見て取れます。年間36000kmペースです。タイヤは夏タイヤのヨコハマブルーアースAを履いていました。一見したところ、トーヨーProxes R39と比べてショルダーが丸くてトレッドの幅が狭く、溝が少なく、低燃費のコンフォートタイヤであることが見て取れました。

【低速時の挙動】
15インチタイヤでの走りについては、結論から申し上げると、とても良かったです。まず出だしは軽快でガソリンエンジン車と変わらない印象です。ホイールが小さくてバネ下重量が小さいためでしょうか。16インチ車だと最初にアクセルを軽く踏んで徐々に踏み込んでからおもむろに発進する感じですが、15インチ車だとアクセルを踏み込むと自然に加速して、16インチ車のような神経質な操作が必要ありません。停止時も素直に停止しますので、前のめりになってカックンとなることもありません。速度0km/h付近の挙動は15インチ車の方が滑らかです。ただし今回借りたレンタカーではi-DMが1st Stageになっており、いい加減に運転しても青点灯して5.0点になりますので、4th Stageの車ほど厳しく白点灯しません。その分は割り引いて考える必要があります。

【ステアリング】
16インチ車に比べてステアリングは軽めです。16インチ車の革巻きの太いステアリングホイールではなく塩化ビニル巻きの細いホイールですが、くるくる回すには好都合です。ただし手汗がつきやすいので、手袋があった方が回しやすいかもしれません。15インチホイールのXDであってもディーゼルエンジンを搭載している以上フロントヘビーなはずですが、交差点で曲がるときにはガソリンエンジン車と同様に軽快に曲がれました。しかしこれはAWD車ならではの前後の重量バランスの良さによるところもあるでしょうから、FF車で同じように軽快に曲がれるかどうかは実際に運転してみないとわかりません。

【狭い道】
林道のような曲がりくねった狭い道を走ったところ、16インチ車よりもすいすいと走れます。さほどトルクが求められる場面ではありませんので、ガソリンエンジン車と同じような感じです。16インチ車も速度が低ければ曲がるのは苦にならないのですが、15インチ車の方がホイールが軽い分軽快に動きます。

【流れの良い幹線国道】
流れの良い幹線国道を走ってみると、前の車についていっているつもりでも、時折引き離されそうになりました。16インチ車だと低い速度で我慢が必要ですので前の車が遅いと運転しにくいのですが、15インチ車だと遅い車に合わせて走るのがさほど苦になりませんので、15インチ車の方が精神衛生上よいかもしれません。

一般道を走る限りはガソリンエンジン車と同じような感じです。ガソリンエンジン車よりも前が100kg重いはずなのにどうしてガソリンエンジン車のように軽快に走るのか不思議です。エンジン音はディーゼルエンジン車の方が大きいですが、それはDJデミオのガソリンエンジン車の静粛性が際立っているために音の大きさが違って感じられるだけのことであり、ディーゼルエンジンの方が音や振動が大きいといっても一昔前のガソリンエンジン車や3気筒の日産ノート並ですので、実用上は問題ないのではないでしょうか。軽自動車よりは静かでしょうし。

【乗り心地】
よく言われる乗り心地についてはさほど違いを感じませんでした。路面の細かい凹凸はさほど感じないのですが、大きな段差を越えればやはり突き上げがあります。15インチホイールよりもむしろAWD車は後輪への荷重が大きいことが乗り心地に寄与しているのではないでしょうか。フロントヘビーなディーゼルエンジン車を購入するなら多少値段が高くなってもAWD車の方が扱いやすいのではないかと感じます。

装備にお金をかけるくらいでしたらその予算をAWDに振り向ける方が運転して気持ちよさそうです。実際、XDのAWD車とXD TouringのFFとでほぼ同じ値段です。さらにアクセラ15SのFFもほぼ同じ値段です。アクセラ15Sは高速道路ではエンジン回転数が上がってしまってうるさいですが、低速域では滑らかですし、フロントが軽いためによく曲がりますし、車としての出来もアクセラの方が上です。

【燃費】
街乗りでの燃費は20km/Lほどでした。重量が大きく駆動装置でのロスもあるAWD車はFF車よりも若干燃費が劣るはずなのですが、それにしてはなかなか良好な燃費です。ホイールが軽くなって動きに無駄が無くなった影響でしょうか。

【高速道路】
しかし、一般道での軽快さや乗り心地についてはガソリンエンジン車でも実現していることですので、それだけでは敢えて重くて高価なディーゼルエンジン車を買う理由になりません。高速道路での動力性能の余裕がディーゼルエンジンの持ち味ですが、高速道路で乗り心地が悪くなってはせっかくのディーゼルエンジンの持ち味を活かせません。

今回は流れの良い高速道路を100kmほど走る機会があったため、存分に走ってみました。サスペンションが柔らかめでよくロールしますが、一応意図した通りの方向で走りますので、直進安定性の悪さは感じませんでした。もっとも、運転者はある程度挙動が読めるために「柔らかいね」で済みますが、同乗者にとってはふわふわして怖いかもしれません。足回りをもっと固くしようとしてサスペンションの減衰率を高くすると、逃げ場を失った力が一番柔らかいタイヤに集中し、タイヤの変形が大きくなりますので、却って逆効果ではないかと思えました。高速安定性を重視するなら素直に16インチにした方が簡単だと思います。

また、16インチ車が得意とする高速コーナーを通過する際、15インチ車だと、意図した通りには曲がるものの路面からステアリングに伝わる情報が不足気味に感じられました。程度の差はあるもののアクアのようなステアリングフィールです。もしかしたら、ホイールサイズの違いというよりもむしろタイヤの違いによるものなのかもしれません。

15インチ車なら速度を出す気にならなくてのんびり走れるかなと思いきや、16インチ車と変わらない速度で巡航できてしまったのが意外でした。滑らかで加速感が無いのにいつの間にか速度が伸びている感じです。この高速域での加速の伸びはガソリンエンジン車には無い、ディーゼルエンジン車ならではもののです。ただし、日本の公道の速度域でしたらガソリンエンジン車でも実用上は十分です。

高速道路では、ひらひらと軽快な15インチ車にするかどっしりとした重厚な16インチ車にするかは好みの問題だと思います(ただし同乗者は車の挙動を予測しにくいことから、安定感のある16インチを好む傾向があります)。15インチ車が国産車的な乗り心地なのに対し、16インチ車は欧州仕様と同じ足回りで、ドイツ車のように速度が乗ってくるにつれて乗り心地が良くなります。しかし乗り心地が良くなる速度域が高めですので、アウトバーンの真ん中車線では快適なのかもしれませんが、日本の公道の速度域ではその真価を発揮しにくいです。

たまにネット上で、15インチホイールのXDの高速道路での挙動から「デミオは高速域で安定しない」と結論づけている記事を見かけますが、たしかにレンタカーで借りると15インチホイールのXDになってしまうとはいえ、評価の対象が違うのではないかという印象を受けます。高速道路での挙動を知りたければ16インチホイールのXD Touringにも試乗してほしいものです。

今回借りたレンタカーは夏タイヤを履いていましたので、スタッドレスタイヤ+15インチでどのような挙動になるかはわかりませんでした。15インチ車での高速走行が夏タイヤでも不安定ならましてはスタッドレスタイヤだともっと不安定でしょうから15インチホイールとスタッドレスタイヤの組み合わせを排除できるのですが、幸か不幸か15インチホイール+夏タイヤの組み合わせでさほど不具合を感じなかったため、スタッドレスタイヤを履いた際の高速走行が許容範囲内かどうか予測しかねます。冬タイヤを履いている季節にもう1回デミオXDを借りればわかるのかもしれません。

【総評】
少なくとも夏タイヤを履いた状態では、15インチの方が一般道から高速道路までバランスが良いと感じました。16インチだと高速走行に特化した仕様で、低速走行時に我慢が必要です。田舎住まいで長距離通勤用にデミオディーゼルを購入するなら16インチのXD Touringよりも15インチのXDの方が向いていそうな気がするものの、一般道メインでしたらFFのガソリンエンジン車でもそこそこよく走りますし、デミオはガソリンエンジン車でもハイギアードで日本の高速道路の速度域なら意外と走れてしまいますので、敢えて高価なディーゼルエンジン車にすべきか迷いそうです。特にAWD車だとさらに高価になりますし。

今回は15インチ+ヨコハマブルーアースA+AWDの組み合わせと16インチ+トーヨーProxes R39+FFの組み合わせとの比較までしかできず、それぞれの要素を切り分けることができませんでしたので、どこまでがホイールサイズの違いによるところなのか、どこまでがタイヤの違いによるものなのか、どこまでがAWDの機能によるものなのか、どこまでが後輪への荷重の違いによるものなのかは判然としません。また、15インチ+FFとの組み合わせや16インチ+AWDの組み合わせを試せていませんし、スタッドレスタイヤを履いた場合の比較もできていません。

ただ一つ言えるのは、今回レンタカーで乗ってみた15インチ+ヨコハマブルーアースA+AWDの組み合わせは、ガソリン車なみに軽快で、フロントヘビーな感じがせず、一般道ではとても走りやすかったということです。一般道メインで上り坂や高速道路も走るという使い方をする場合にはバランスの良い選択肢ではないでしょうか。