2014年11月6日木曜日

意図した通りに動作するということ

主観的な静粛性にせよパワー感にせよ、物理的な性能を所与とすれば、あとはいかに「意図した通りに動作するか」という部分が効いてくるように思えます。車の運転の際には
  1. 状況を認知して判断する
  2. 操作への意思を持つ
  3. 操作する
  4. 車が動作する
  5. 五感へのフィードバック
という流れがありますが、五感へのフィードバックに際しては、
  • 車がもたらす加速度を体で感じ取る(触覚)
  • 車の移動を認識する(視覚)
  • 車が発する音を聴く(聴覚)
となり、加速度を感じて移動を視認する部分がパワー感、音を聴く部分が静粛性につながります。どちらも想定通りであれば心地よく感じられ、想定と異なる挙動であれば不快に感じられます。パワーと静粛性という一見すると異なる性質が、実は意図した通りの挙動がフィードバックされるかという共通の枠組で捉えることができるわけです。

例えば、カーブを曲がる際には、
  1. カーブを視認して、どの程度曲がるべきか判断する
  2. どの程度ハンドルを切るとどの程度曲がるかを予測する
  3. 曲がりたい分だけハンドルを切る
  4. ハンドルに重みを感じつつハンドルの切れる量を認識する
  5. ハンドルを切った分だけ前輪が動く
  6. 遠心力が発生して外側のサスペンションに荷重がかかる
  7. 外側の車輪からのロードノイズが強くなる
  8. ドライバーが遠心力を感じる
  9. 車体が向きを変える
  10. 曲がる際の景色の流れを視覚する
という一連の流れがほぼ一瞬のうちに行われますが、それぞれの挙動が想定通りのタイミングで想定通りの程度で知覚されたときに滑らかな動きとして心地よく感じれますが、この一瞬の動きの中でほんの僅かでもタイミングがずれると想定外の挙動になり、心地よく感じられません。

しかし、車というのは様々な部品から構成されるものですので、様々な場面でそれぞれの部品がどのように影響しあうのかを検証しながら意図した通りの動作を実現し、想定した通りの五感へのフィードバックをもたらす必要があります。想定以下であってはいけませんが、想定以上であってもいけません。

どの程度ハンドルを切ればどの程度曲がるのかがわかりやすく、曲がりたいときに曲がりたいだけ曲がることができれば、安心してハンドルを切れます。すると、安定志向のセッティングだったりフロントが重かったりして物理的な旋回性能があまり良くない車であっても、想定通りに安心してハンドルを切れることができ、さほど運転技量が無くても速く走ることができますので、「曲がりやすさ」を感じてもらうことができます。それが安定性と曲がりやすさの両立につながります。

判断のもとになる情報入力も重要で、見通しの良い曲線を高速で通過するのはさほど難しくありませんが、ブラインドコーナーでどの程度のカーブなのか見通せない場合や、さらに1.5車線道路や1車線道路で対向車が来るかどうかを気にしなければならない状況では安心してハンドルを切ることができませんので、速度を落として前方に注意しながらどの程度の速度でどの程度曲がるべきを刻々と判断しなければならなくなり、それがカーブでの通行のしくにさとして感じられます。

そのような場面では、物理的な旋回性能や想定通りに曲がるハンドリングだけでなく、車幅が狭くて道幅に対して余裕があることや、踏んだら踏んだ分だけ効く信頼性の高いブレーキによって対向車に接近できる距離を縮めることも、曲がりやすさに影響します。