2015年5月23日土曜日

アクセラハイブリッド車に試乗しました

デミオの点検の合間にアクセラハイブリッド車に試乗しました。試乗したのはレザーシートの最上級モデルHYBRID-S L Packageでした。HYBRID-Sからヘッドアップディスプレイがつき、L Packageで電動式レザーシートになります。メーカーオプションのBOSEサウンド・システムや電気スライドガラスサンルーフ等もついており、全部盛り仕様です。本体価格がアクセラディーゼルと同じですが、アクセラディーゼルは本体価格のままで全部盛りですので、オプションの分だけアクセラディーゼルよりも割高になります。

まずエクステリアは当然アクセラのセダンで、結構迫力があります。アクセラのハイブリッド車がセダンのみの設定なのはトランクルームにバッテリーを設置するためですが、アクセラにおいては荷室が大きく静粛性の高いセダンは実用性重視の車に設定し、ハッチバックはスポーティーな車に設定するとのことで、アクセラ2Lにセダンの設定が無いのはスポーティーな位置づけだからとのことでした(アクセラのディーゼルがスポーティーな位置づけというならまだしも、2Lはむしろ街乗りから高速道路までそつなくこなせるイメージがあり、むしろ積極的にエンジンを回しに行って限られたパワーを絞り出す1.5Lの方がスポーティーな感じなのですが)。インテリアもアクセラの上位モデルと同じですので質感はなかなか良いです。少なくともプリウスとは比較になりません。シフトノブ周りを除けば最近のマツダ車に共通の内装ですので、操作しやすいです。

プリウスでおなじみのシフトレバーを動かして発進すると、バッテリー残量が少なめなのかエアコンがついているためなのか、エンジンが回りました。道路に出てアクセルを踏み込むと、実にリニアに反応します。プリウスのように踏んでも全然加速しなくて、その上、ゲージメーターで燃費の悪さをこれ見よがしに表示されていらつくということがありません。アクセルペダルはオルガン式ではなくプリウスと同様の吊り下げ式なのですが、特に気になりませんでした。

不思議なのはアクセルを踏み込むにつれてエンジン回転数が上がることです。本来ハイブリッド車は低速域ではモーターアシストがありますので、プリウスやアクアではパワーが不足しない限りエンジン回転と加速とが同期しません。アクセラではリニアな反応を演出するため、敢えてそのような制御にして、余ったパワーを充電に回しているのではないかと想像しています。

ブレーキを踏むと、これもリニアに減速します。プリウスだと少し踏むだけで強い回生ブレーキがかかって操作しづらいことこの上ないのですが、アクセラではこの辺りの制御もガソリン車の感覚に合わせているようです。

ステアリングフィールも他のマツダ車と同じで、プリウスやアクアの手応えの無いステアリングフィールと違って、ストレスなく曲がれます。後ろにバッテリーがついていますので、アクアみたいに前後の重量バランスが良くなって曲がりやすいかと期待したのですが、コーナリング性能を試す機会はありませんでした。

リアサスペンションはプリウスのトーションビームに対してアクセラはハイブリッドでもマルチリンクですが、マルチリンクサスペンションが威力を発揮する左右非対称な突起を通ったりワインディングを走ったりする機会がありませんでしたので、どの程度違うかはわかりませんでした。

試乗したのは市街地の道路でしたが、さすがハイブリッド車だけあって低速域での静かさと滑らかさは秀逸です。普段ディーゼル車に乗っていると街乗りでの滑らかさはうらやましいです。高速道路は走行しませんでしたが、2Lのエンジンを積んでいますし、プリウスもそこそこパワーのある車ですので、この調子なら高速道路でも楽に走れるのではないかと推測します。

ハイブリッド車でもi-DMがついています。ハイブリッド車の場合、車が勝手に最適な制御をしてしまいますのでi-DMをつけることに一体何の意味があるのか不思議ですが、急加速・急減速・急ハンドルを抑制する分には役に立つのかもしれません。あるいは、プリウスと違って自在に操作できるという自信の表れでしょうか。

要は走りと内装と外装に関してはマツダ車の水準です。プリウスと同じシステムでこんなに違うものかと驚きました。

数字をプリウスと比較してみると、プリウスの重量が1350kgなのに対し、アクセラハイブリッドの重量は1390kgです。プリウスは軽量化のためにリアサスペンションをトーションビームにしたりアルミを多用したり剛性を落としたり内装をチャチにしたりして、軽量化のためにあらゆる努力をしているにも関わらず重量差が40kgしかありません。トーションビームとマルチリンクとで重量差が100kgくらいあり、リアサスペンション以外で60kg軽量化されています。しかも一見したところプリウスのような軽量化も見えませんので、どこで60kg軽くしたのか不思議です。アクセラの2Lガソリンエンジン車との重量差が80kgですので、アクセラのシャーシやボディー自体がプリウス以上の軽量化を達成できているということでしょうか。燃費についても同じTHS2を採用し、しかもプリウスよりも40kg重いにも関わらずJC08燃費はアクセラハイブリッドの方が僅かに上回ります(もちろん実燃費はプリウスの方が良いようですが)。プリウスはタイヤの転がり抵抗を小さくしたり、空力性能重視の車体にしたり、モード燃費の数字を出しやすい仕様にしたりして、燃費のために様々な工夫をしているにも関わらず、そのような燃費に特化した仕様ではないアクセラの方が、少なくともカタログ燃費では上回っているというのは実に不思議です。燃費に差が出るとしたらエンジンの燃焼効率くらいしか思いつきません(アクセラハイブリッドのエンジンの圧縮比が14に対し、プリウスのエンジンの圧縮比は13)。

あとは値段および他車との兼ね合いですが、一番安いグレードは戦略的にプリウスの価格に合わせてありますので、同じ値段で同じ燃費で走りが全然違うアクセラにしない理由を見出だせません。どうしてこんなに過小評価されているのか不思議です。もしあるとすれば、プリウスに好んで乗る層がマツダ車に偏見のある世代だからでしょうか。

一番高いグレードではアクセラディーゼルよりも高くて、メーカーオプション付で300万円くらい、乗り出しで350万円くらいしそうです。だったらディーゼルの方がお買い得に見えますが、ディーゼルエンジン車は低速域であまり滑らかでありませんので、街乗り主体でたまに高速に乗るくらいでしたらハイブリッド車の方が扱いやすいかもしれません。走りはおとなしめで、2.2Lディーゼルエンジン車のようなパワーやトルクはありませんが、街乗りから高速道路までオールラウンドに使えますので実用性は高いです。また、プリウスでは安っぽくて物足りない場合、トヨタ車だとSAIやCT200hになってしまいますが、これらは400万円以上しますので、その間を埋めるグレードとして有用なのではないでしょうか。

ではアクセラ2Lガソリンエンジン車との比較ではどうかというと、プリウスでの走りから推測する限り、高速道路での走りはほぼ同等と予想されますし、街乗りでも1.5Lよりもパワーに余裕があり、エンジン回転数があまり上がらない分静かでしょう。2Lガソリンエンジン車の最上位グレードとハイブリッド車の一番安いグレードでほぼ同じ値段です。同じグレード同士での比較では価格差は20万円です。カタログ燃費の差が10km/L、実燃費の差がだいたい5km/Lくらいだとすると、3万km走れば元が取れることになります。ハイブリッド車が強みを発揮する街乗りでは走行距離は伸びませんが、それでも5年乗るとして年間6000km乗れば元が取れますので、たまに高速道路で遠出すれば難しい数字ではありません。元気に走りたければガソリンエンジン車、穏やかに走りたければハイブリッド車でしょうか。運転する分には元気に走る方がよいかもしれませんが、同乗者にとっては静かで穏やかな方が乗りやすいでしょう。

アクセラハイブリッド車が唯一プリウスに劣るのは荷室の大きさです。プリウスは大人4人乗って荷物をたっぷり積めるパッケージングが秀逸ですが、アクセラは走りに振っている分、荷室のスペースが犠牲になっています。アクセラのセダンは本来荷室が広いのですが、バッテリーがかなり場所を取っています。大人4人で乗ると荷室が不足しますので、実用的には3人くらいまででしょうか。

アクセラに搭載されているハイブリッドシステムは実用性重視の走りですので、アクセラに載せるよりもプレマシーに載せる方が売れるかもしれません。プレマシーなら大人4人乗って荷物をたっぷり積めますし、扱いやすくて乗り心地が良いのは売りです。ただし、バッテリーを後ろに搭載する際に3列目の座席を設置するスペースを確保するのが難しそうです。CX-3は1.5Lディーゼルだけしかありませんが、街乗り主体でしたらハイブリッドの方が本来は合うのではないかと思います。CX-3にアクアのハイブリッドシステムを載せれば、アクアでは内装が安っぽすぎるとかアクアでは後ろが狭すぎるという層にアピールできるかもしれません。それにレクサスではCT200hよりも小さい車はありませんし。

まるでマツダの回し者みたいな書き方になってしまいましたが、制御やセッティングはマツダ流とはいえ、ベースになっているTHS2の出来が良いというのもあると思います。トヨタの底力を感じます。